- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121601049
感想・レビュー・書評
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「なぜローマは世界帝国となり得たのか?」「なぜローマは滅んだのか?」古代ローマ史を多少なりとも触れた人間でこの二つの永遠の命題を考えない者はいないだろう。古来より数多のローマ史研究者によりさまざまな考察がなされてきたが、近代ローマ史研究の祖と言われるモムゼンより百年前に「古典」とも言えるローマ盛衰原因論を著したのがモンテスキューである。彼はもちろん「法の精神」の著者として有名な人物だが、彼の20年に渡る研鑽の集大成である「法の精神」を読むと三権分立論の展開よりも古今東西の法の分析と論拠に膨大な労力を費やしていることがわかる。彼は法学者というよりはむしろ法社会学史、とりわけローマ法の専門家と言えるように思う。「法の精神」よりも十数年前に著されたこの「ローマ盛衰原因論」はそれゆえに「法の精神」の序章とも位置づけられている。この「ローマ盛衰原因論」でモンテスキューは共和政時代のローマがなぜ地中海世界の覇者となっていったのか、その政体や方針を他民族、特に古代ギリシャやカルタゴの興亡と比較しながらその隆盛の原因を探り出そうと試みている。モンテスキューは共和政時代のローマ、拡大期のローマに深い畏敬を感じていたようだ。(それゆえかそれを転換させたカエサルに対しての見方が辛い気がする/笑)後半部分はもはや「帝政」となり世界帝国となったローマが何故滅んだかに論点を置きながら共和政ローマと帝政ローマの差異を論じていく。全民族を征服したローマは征服から支配へと転じ、それまでの政体を変える必要に迫られた。権力は元老院から皇帝へと移った。平和と富の享受の中で、ローマ的美徳、祖国愛、それから軍事的規律が失われた。軍隊自身に腐敗が始まった時、ローマは他民族の餌食となり滅亡の道を歩んでいく。塩野七生の「ローマ人の物語」を読んで古代ローマをいろいろ知りたいと思われる方はこの「ローマ盛衰原因論」を「法の精神」と合わせて読んでみてもいいかもしれない。
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