戦略的思考とは何か 改版 (中公新書 700)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121807007

作品紹介・あらすじ

平和を望むなら、戦略論の教養は欠かせない。歴史と地理を入り口に、日本が置かれた戦略的環境を解明。国家戦略を論じたロングセラー。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルから経営に関わるものかと思い、初版が出た時に一度手に取った覚えがあるが、軍事防衛戦略関係だったので、あまり読まずに積読したまま、行方不明に。今回、改版されて改めて手に取って読み進めていくうちに、著者の洞察力と思考力には全く敬服した。歴史から学び、古典から学び、バランス感覚を持ち、こんな論者がいたのかと驚いた。時代的には米ソ冷戦時期の内容であるが、日本の防衛を考える基本的な根幹問題が本書にはある。

  • 外交、軍事力、地理、日本や海外の国民性、歴史、経済等、幅広い視点からの戦略論。ページ数は少ないが、「戦略的思考とは何か」が濃縮されており、読み応え十分。

    中国やロシアの考え方などは、今でも全く当てはまり現代を予見していたかのように感じた。著者の本質を見抜く思考力に驚いた。
    軍事、国家戦略、自分たちに根付いた考え方など、積極的に議論される事が避けられるテーマを考える事の重要性も理解できた。軍事的な戦略論だが、著者の深い思考は、ビジネスや人生など幅広い分野で役立つと感じた。

    特に最終章の「総合的防衛戦略」では、日本を攻め取るには、という視点から経済的や軍事的に日本の弱点を現実的にとらえ、そこから防衛戦略を考える部分や、
    日本の防衛を考える場合には、アメリカをはじめとして周囲の国がどのように行動するかを現実的に想定した戦略が必要である部分など
    幅広く深く思考することが必要だと理解した。

  • 平和を望むなら、戦略論の教養は欠かせない。歴史と地理を入り口に日本が置かれた戦略的環境を解明し、国家戦略を論じたロングセラー

  • 1983年という冷戦機の最中に書かれたもので、状況そのものは古いが、戦略についての研ぎ澄まされた考え方と、読み手を飽きさせない資料や分かりやすい語り口は現代でも全く色褪せていない名著。古い著作なのだからもっと早く出会っていればとさえ思った。★5以上か。

  • 地政学や日本の過去の戦略の概要を知るのに役立った。
    ソ連時代に書かれたものだが、令和の今もなお通づるものも多く、歴史を学ぶことの重要性が感じられる。

  • 古い本だけど、この本が書かれた時より昔のことについては変わるわけもなく、地政学的に日本の立ち位置が変わるわけも無いので今読んでもなるほど、と思う内容だった。

    日本の学校教育で戦争について学ぶことといえば、第二次世界大戦の悲惨さと反戦・平和主義一辺倒だが、純粋にリスク管理としての戦略論が一般教養として重要視されるべきだなと思った。
    自分と他国の立ち位置と実力にしっかりと向き合った上で、平和の為に最低限持つべき軍事力ってどれくらい?ということは考えたことも無かった。

  • ◯秀吉の朝鮮出兵の失敗の原因
    1.日本側の戦闘能力過信
    2.戦略の驚くべき粗雑さ→情報と戦略のまったくの欠如

    ◯太平洋戦争における旧日本軍の致命的だった点
    →与えられた兵力で与えられた任務をいかに遂行できるか

    島国であるが故に、外部の情報に対する無関心さ、大きな意味での戦略的思考の欠如にいたる

  • 「この本っていう書かれたものだろう」と思いながら読み進みて最後のページを見ると、昭和58年(たしか)初版との文字が。なるほど、確かに古い!その時とは世界情勢も大きく変わっているし、この40年弱であったことをいちいち挙げていたらそれこそキリがない。だからこの本も意味がない!と切り捨てるのもまたナンセンス。世界情勢は変わっても本質的な部分はやはり普遍なのかも。そうした普遍的なところを取り出せばこの本はずいぶん有益なのでは。それは日本が関わる過去の様々な戦争を題材にしていることからも明らかだ。
    かなり長編なので論点は様々だが、要するに国家には戦略が大事だ、ということに尽きる。特に情報戦略。これが日本は脆弱。経験値の不足は確かに仕方のない側面はあるけれど、それにしてもこの世界で日本が繁栄を続けるには、日本を取り巻く様々な環境にも注意を払わなければならない。短絡的な思考に陥ることなく、1 あくまで客観的に、2 柔軟に、3 専門家の意見をよく聞き、4 歴史的なヴィジョンを持つこと、5 伝統的な画一主義を改善し、6 情報と日々の懸案処理の分離も忘れずに。

  • 1983年初版で、40年近く前の冷戦下の時代背景であるが、今をもっても読み応え抜群である。
    外交官である著者の個人的認識であり学術書ではないとされているが、語られる戦略論は、軽薄な戦争ごっこではなく、日本の生き残り論であり、帝国主義時代から核時代・冷戦時代までを筋の通った論が展開される。
    繰り返し述べられることに「戦略レベルの失敗を戦術レベルで取り返すことはできない」「国際政治は相手がある事象なので国内的にどうしたい的な内向き論には意味がない」「情勢判断を置き去りにした方針や綱領に意味はない」など、内弁慶に流れやすい日本の企業や個人に対する教訓が多く読みとることができる。
    個人に置き換えれば、戦略とは立ち位置のことであり、間違った立ち位置で間違った方向に努力しても自分や周囲を良くすることにはつながらない。

  • 日本は明治維新時以外はずっと戦略的な面で疎く、現在もそうである。それは歴史的に、地理的環境に恵まれて攻められた経験に乏しいからである。戦略というのは、周りとのパワーバランスで決まるものであり、日本の大戦略としてはアングロサクソンとの協調が絶対の基軸となる。情報軽視をして、誤った戦略で戦えば、どんなに良く戦っても悪い結果につながる。アメリカがかつて程圧倒的な力ではないので、攻められないという幻想を持たずに防衛戦略を民主的に練るべきである。



    日本の外交戦略はアングロサクソンとの協調は絶対の基軸になることがわかった。国際情勢的に日本は戦略的に価値があり、その分敵対国から攻撃の対象になりうる。韓国がバッファーとなっていたので、仮に朝鮮統一などがあれば防衛費の大幅な増額などが必要であるだろう。

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著者プロフィール

岡崎久彦

1930年(昭和5年)、大連に生まれる。1952年、外交官試験合格と同時に東京大学法学部中退、外務省入省。1955年、ケンブリッジ大学経済学部卒業。1982年より外務省調査企画部長、つづいて初代の情報調査局長。サウジアラビア大使、タイ大使を経て、岡崎研究所所長。2014年10月、逝去。著書に『隣の国で考えたこと』(中央公論社、日本エッセイスト・クラブ賞)、『国家と情報』(文藝春秋、サントリー学芸賞)など多数。

「2019年 『戦略的思考とは何か 改版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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