ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書 290)

著者 :
  • 中央公論新社
4.17
  • (193)
  • (215)
  • (76)
  • (11)
  • (4)
本棚登録 : 2561
感想 : 227
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121902900

作品紹介・あらすじ

一九六五年、経済的に繁栄する日本からアフリカ中央の一小国ルワンダの中央銀行総裁として着任した著者を待つものは、財政と国際収支の恒常的赤字であった-。本書は物理的条件の不利に屈せず、様々の驚きや発見の連続のなかで、あくまで民情に即した経済改革を遂行した日本人総裁の記録である。今回、九四年のルワンダ動乱をめぐる一文を増補し、著者の業績をその後のアフリカ経済の推移のなかに位置づける。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 書店やネットでの評判を見て購入。いやぁ、評判通り。実に良い本でした。
    異世界転生モノかよ!と思わせる神展開を、まさか50年近く前に日本人が成し遂げていたとは…。本著を見つけ出し、素敵なフレーズをつけてプロデュースしてくださった方に感謝したい気持ちです。
    結構昔に「ホテル・ルワンダ」を渋谷のちっちゃい映画館で並んで見ましたが、これは大虐殺よりずっと前の1960年代の話。本著内での発展の後に大虐殺があると思うと切なさも感じましたが…それでも、この発展に向けた努力はルワンダ大衆の幸せに寄与していたはずです。

    さて、日本のGNPが世界第2位となったのが1968年。その少し前にルワンダの中央銀行総裁として赴任したのが著者で、ここから国の実情を把握し、ルワンダ大衆の福祉に貢献するために次々と手を打って行った訳です。
    どーにも中央銀行の職分を超えてるところもありそうですが、本著内の展開のストーリー性と先を見越した一手の打ち方は、日銀マンここにあり!という感じで、読んでいてとても痛快です。
    ルワンダの産業振興のため、参入障壁を下げて自国民に商売をさせる、というくだりや、外国人商人の間の諍いを上手く使うくだりは、教科書だけの表層的な理解ではない、人間が織り成す経済をどう動かしていくかに関する深い洞察がそこにはあったのかなと思います。

    本著を読んで感じたこととして、ゼネラリストは捨てたモンじゃないなと。
    著者は金融のスペシャリストながら、結果的には「国内のバス交通も整備した方が良いよね」的なコメントをしたり、専門じゃないけど正しいコトをしていった訳ですが、訊かれた時に「いやそれ僕の仕事じゃないんで」と返すのかどうかって、大事ですよね。
    専門分野は人それぞれあっても良いけど、常に一般論としてでも物事を考えていて、常にバッターボックスに立っている「つもり」の気概というのは必要だなと感じました。

    あと、開発援助の在り方についても、考えさせられました。寄附しておしまい、ってのは本当に有効なんでしょうか。
    前に「テクノロジーは貧困を救わない」を読んだ時にも感じたのですが、結局は人を救うのは人な訳で。
    (ひと昔前の?)流行りのマイクロファイナンスだって、あれは前向きな人の意思(と資金)を上手く繋げたからワークしたのだから、そんな趣旨の仕組みや、それを手伝う人なのか、せっかくなら死に金よりも人を幸せにする営みが重要なのではと感じました。(まぁ、どっちにしろお金は要りますが)

    ちなみに、著者の「傲慢頑固無能」等、人をけなす(著者からしたら、ありのままに描写しただけなんでしょうが)文言がなかなかキレてました。さすが海軍軍人、なんでしょうか。

    少し金融絡みに親しみがある方がより楽しめるとは思いますが、個人的には文句なしのエキサイティングな良著でした。
    将来、異世界に転生して経済を立て直す予定のある方はぜひ!(笑

  • 1965年。IMFからの要請で中央銀行総裁としてルワンダに派遣された日銀マン・服部正也の経済改革奮闘記。こんな日本人がいるとは知らなかった。

    アフリカの中央に位置する小国ルワンダは、コーヒーが主要な輸出品だが財政と国際収支の赤字が累積し、国内では外資系企業と外国人が大手を振るベルギーの旧植民地だ。ここで服部は次々と改革していく。通貨改革と平価切下げと輸入の部分自由化。歳入と歳出のバランスを大蔵大臣と協議し、国債を発行する。国債引き受けを外国銀行に頼み込む。外国人に軽く、ルワンダ人に重い税制の歪みを正し、中小企業を育成するため開発銀行を作る。もうとにかく動き回る。とても中央銀行総裁に思えないほど。おまけに鉄道もタクシーも発達していない国だから、せめてバス交通を充実させようと日産ディーゼルと交渉してバスを輸入しバス公社を作ったりと、そんなことまで?と驚く。

    総裁の奮闘とルワンダ人たちの努力でルワンダ経済は上向きとなる。服部は6年に渡って総裁を務め、ルワンダの経済発展に貢献した。こうした改革の裏には服部のルワンダ人に対する公平な目と観察力があったと思う。ルワンダ政府の外国人顧問団や技術支援員たちは「ルワンダ人に経済発展は無理だ、彼らは怠け者だからだ」。と口をそろえていう。果たしてそうか?と、服部はルワンダ人商人や国民に話を聞き、彼らの生活のなかに入っていき、真摯に向き合い、国民性を掴み取ろうと観察する。そこで得た知見(決してルワンダ人は怠け者ではないし、能力がないわけではない)に基いて様々な経済改革と政策を立案していく。この本を読んで感動するのが、服部のこの観察力と話を訊く真摯な姿勢である。かっこいいな、いいな、と思った。突然、アフリカの小国の中央銀行総裁になるドラマ性もさることながら、服部の奮闘の数々は一遍の小説より奇で面白く感動する。

  • 先日初めて喜多川泰さんの講演会に行きました。
    講演の中で必読の一冊と紹介があったので読みました。

    日本は今、太平洋戦争以来の国家危機を迎えているのだと思います。
    2度も国の存続が不可能と思われたところから立ち直り、発展を遂げてきた私たちの国の未来はどうなるのでしょうか。

    喜多川さんはとても良い国の良い時代に生まれてきたと思うこと、伝えることの大切さを語っていました。
    私には何ができるのだろう。


    Although the barrier to preventing from country’s development is people, the main reason for development is people too.

  • 1965年、アフリカはルワンダの中央銀行総裁に着任した服部さんの回顧録。服部さんの剛胆なハートと大局を掴む頭脳にしびれ、金融のおもしろさを実感した。バンカーの仕事のよろこびってこういうことなんだな、と。

    服部さんが、私心無く先入観にとらわれず、原則に従って仕事に邁進して着実に成果を上げていくさまが痛快。中学高校でこの本を読んで、頑張って勉強して大きな仕事をする人が増えたらいい。この本には、なんのために勉強するのかの答えのひとつがあるように思う。

  • 金融チートスキルでおっさんが無双する! みたいな煽り文句に惹かれて購入したのだけれど、本当に面白かった。
    独立後、政情も安定しないルワンダの中央銀行総裁として赴任した方の回想記録。

    公邸も、銀行を運営するためのまともな人材も何もない中、大統領と会った時に、まずミッションを尋ねルワンダ人の福祉のために、という共通の目的を確認した後は、ひたすらにルワンダ人を直接尋ね、彼らに寄り添い、ただ与えるだけではなく、ルワンダ人が自ら独立できるよう銀行運営だけでだけでなく、金融政策から国を建て直すために奔走している様が伝わってきました。

    例えば、ルワンダ人は金を稼いでもビールを買っておしまいだから、というような批判には、それは物が適正な価格で十分に流通していないからだ、と指摘し、流通と公定価格を慎重に見極めて政策を実施した結果、人々の生活水準(服装や食事)が明らかに向上していく。

    金融がどれほどに国に影響を与えるのか、ということを初めて知って非常に勉強になりました。何よりも、国民の福祉を第一に据え、ある意味国家百年の大計を抱けるこの方がこの時期にルワンダの中央銀行総裁として赴任されたことは、何よりも僥倖だったのでしょう。

    それでも、その後のルワンダの動乱で多くの命が奪われ、向上していたルワンダの経済もあっという間に悪化していく……。建て直すには時間がかかり、破壊するのはあっという間だというなんとも人間社会の難しさをも改めて感じた一冊でした。

  • 2021年3月19日(金)“ロングセラー”に学べ!|おはBiz NHKニュース おはよう日本
    https://www.nhk.or.jp/ohayou/biz/20210319/index.html

    日本人総裁がルワンダ経済の立て直しに奮闘する姿が話題!『ルワンダ中央銀行総裁日記』|教養|婦人公論.jp
    https://fujinkoron.jp/articles/-/3532

    ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版|新書|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/2009/11/190290.html

  •  途上国が順調に滑り出すには技術協力の人材のレベルが最も重要なパラメタだということをこれでもかと感じさせてくれる本だった。
     日本の場合は封建制が達成されて長かったために幕府という官僚機構が既にある状態から近代化をスタートできた。アフリカの多くの国では官僚機構を構築して根づかせるところから出発となるわけで、単純に科学技術を持って来ればいいわけではない。ということがルワンダの事例としてよく分かった。
     では官僚機構の達成の有無の地域差が何で生じたかという話は、ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』とかで検討されているところを信じれば所与の地理的条件の違いによるわけで、私の受け取り方としては運に近い。運でここまで差がつくのか…と思うと、 これは支援しなきゃなという思いが強くなる。

  • 子どもが面白いから絶対読んだ方がいいと薦めてくれて読みました。めちゃくちゃ面白かった。

    Noblesse obligeとしか言いようがない。
    こんなにすごい日本人がいたなんて感動しました。

    そしてもっと経済について勉強しないと、とも思いました。

  • 1965年、46歳の日本銀行行員はIMFからの依頼要請に基づき、当時アフリカの最貧国であったルワンダの中央銀行総裁に就任する。そして6年弱の任期中に経済を復活させ、その後の経済発展の基礎を作るーそんな一見信じられないような偉業を成し遂げた著者がその悪戦苦闘を自ら語った随筆が本書である。

    当時のルワンダは旧宗主国であったベルギーを中心とした外国人が商業の実権を握っており、ルワンダ人は基幹産業であったコーヒー豆の生産への従事が主であった。外国人勢力は法制度の抜け道を利用して自らの利益を最大化し、本国に送金することしか考えておらず、経済活動の果実は一切ルワンダには還元されない。

    ”日本が敗戦から立ち直り経済成長を遂げたように、ルワンダも必ず経済成長は可能である”という強い信念の元で、通貨制度の改革や、自ら数少ないルワンダ人商人のもとへ足繁く通い、農業の生産性向上と商業活動の発展のための立法などを行い、6年間かけて経済成長を実現させる。後者のような業務は中央銀行総裁の所掌業務ではなく、かつ当時のアフリカ経済といえば鉱山資源の採掘・輸出業が中心であったところ、農業・商業に着目をして地に足の付いた経済成長を実現した点は、鉱山ビジネスの失墜と共に経済成長も破綻してしまった他アフリカ諸国との大きな違いであり、著者の卓越した判断であったと言える。

    徹底的にルワンダ人との直接の対話・ヒアリングを重視し、自らの既得権益を守ろうとする外国人勢力と果敢に戦いながら政策を実現した著者のリーダーシップには感嘆させられる。

  • 初版は1972年に発行された、1965年から6年間に渡ってルワンダ中央銀行総裁を務められた服部氏の回顧録である。
    未だにアフリカ諸国といえば一緒たんに扱ってしまいがちだが、当然のことながら各国それぞれに人種も土地も、そして文化も異なり、著者は偏見を持つことなく正面からルワンダという国と人に向き合い、自分に課せられた使命を全うした素晴らしい人物である。
    植民地から独立した国が経済的に自立していくことの難しさが伝わってくるとともに、そこには服部氏のような与えられた使命を全うする外部の人物が欠かせないことを実感した。
    一方で服部氏と出会えたルワンダは幸運であり、そうではない国々がきっと多々あるとも思えた。つまり、それだけ服部氏がルワンダと正面から向き合い、理解し、自分の経験とスキルをルワンダの発展に捧げるという使命感をもって勤め上げたことのすばらしさが際立っている。
    同じ日本人として誇りに思うとともに、現代の日本に自分も含めて服部氏のような人物がいなくなってしまったことに寂しさも覚える。

  • 20代に流行っているそうだが、関係当局交渉の話術、電報を打つタイミングの見極め、とても中央銀行所管とは思えない施策の立案などなど、50代が読んでも面白いw
    所どころに仕事姿などの写真が挿入されているが、映画で見るステレオタイプの日本人的メガネを、ルワンダで服部さんがどうやって手入れしていたのか気になる。あえて日本人と一目でわかるコーディネートを狙っていたのかと自分勝手に妄想中。

  •  1965年から1971年の話。日銀からルワンダの中央銀行の総裁に着任。最初の数時間の面談で大統領から絶大な信用を得て、中央銀行による通貨政策だけではなく、大統領の依頼の元、同国の経済の再建計画を立案、実行する。当時国際通貨基金は独立まもないアフリカ各国で経済、財政計画を作成し支援してたが、実際にはうまくいっていなかった。それらを見てきた著者は別のアプローチでルワンダの経済を成長させ、国民生活環境を改善していく。
     それは、外国資本からルワンダ国民に経済の主導権を取り戻す取り組みであった。富を国外に逃さず、国民資本を蓄積していく。農民や商人の小商いから支援していく。今でいう、マイクロファイナンスのはしりのようなものか。
     著者は最後にこう書いた。「途上国の発展を阻む最大の障害は人の問題であるが、その発展の最大の要素もまた人なのである。」途上国だけではなく。全ての組織に当てはまる言葉である。

  • 1965年から6年間、アフリカのルワンダで中央銀行総裁を務めた日本人、服部正也氏の自伝。

    服部氏は日銀の行員として、アジアの途上国援助に携わった経歴があり、その際の実績が高く評価され、国際通貨基金からルワンダ行きの要請を受ける。当時のルワンダは、ベルギーから独立したばかりで目立った産業もなく、経済的には相当困窮していたようだ。

    独立後も元宗主国であるベルギーへの依存度が高く、また政治家には国際経済の知識が殆ど無いという逆境の中、服部氏は経済再建のマスタープランを描き、大統領や大臣を巻き込みながら計画を断行する。6年間の在任中には本業である通貨改革以外にも、農業や交通網の発展へ大きく貢献していて、枠を超えた仕事ぶりに非常に感銘を受けた。

    ただすべてが順調に進んだ訳では無く、隣国からの襲撃や部族間の紛争などによって、計画が遅れたこともリアルに描かれている。それにしても60年代のアフリカで、日本人の勤勉さが一国の経済基盤を立て直したというストーリーは、まるで映画みたいでとても面白かった。

  • 敗戦の記憶がまだ新しかったと思われる1968年にIMFからの要請によって、当時独立して間もないルワンダ中央銀行の総裁として赴任した日本人の著者による記録。著者自身も日銀職員であり、金融政策や実務についてはかなりの知見があることは書中にたくさん書かれている問題とそれに対する対応策に関する考察で読み取れる。

    本書を手に取ったきっかけは、いわゆる発展途上国とのビジネスにおいて常に悩まされる、現地人の責任意識の低さや、スピードの遅さなどについて、何かヒントはないかと思ったことである。

    ルワンダは、独立前には隣国のブルンジと併せてベルギーの植民地であったため、ベルギーとの貿易が多く、かつそれに伴うベルギー企業やそれを支援するベルギーの民間銀行によるルワンダ経済への影響力が極めて大きかった事を著者は赴任した際に目の辺りにする。ルワンダの政治・経済における問題の多くはこれによるものが多く、実質的に同国の運営はベルギーからきているアドバイザー達によって行われていたということである。更に問題だったのは、ルワンダ人の政治家や役人達の経済製作や実務に対する知識が乏しく、更には意欲と責任感を欠いてる中、ベルギー人達の言いなりになっていたという事だった。

    結局、こうしたアフリカ諸国が現在に至っても先進国や国連からの援助に依存しているという構図は変わっておらず、そもそもだからこそ植民地という立場に甘んじた歴史を持っているとも言える。

    著者はそのような状況の中、ルワンダ中央銀行と、それにとどまらずルワンダ経済の改革を行う事となるのである。結果的に改革は成功する事になるが、その最大の理由は著者が私利私欲や出身国の日本の利害を一切排除し、ルワンダのため、ルワンダ国民のための政策を実行した事によるものである。植民地の宗主国体質が抜けないベルギーの企業や銀行では到底出来ない事であり、日本人だからこそ出来たのではないかとも言える。

  • ずっと積読本で手が出てなかったんだけど、読み始めたら面白いの、これ。あの頃に日本人がこんなことしてたんだなってビックリ。まあご本人の自己申告だから別の人の目線からもちょっと聞いてみたい気もしたけど、知らなかった世界が開ける感じが凄い。

  • 1965年、日本銀行員の服部(著者)は、46歳でルワンダの中央銀行総裁に突然任命される。ルワンダは遅れているアフリカ諸国のなかでも特に遅れていて、3年前にベルギーからの独立が正式に認められたばかりだ。主要産品はコーヒー(先日この本を片手に飲んでみたがとても美味しかった)だが、海から離れているため輸出入に1,800kmの陸上輸送が必要であり、この点も発展の足かせになっていた。

    ルワンダの首都キガリに飛行機で降り立つとそこに空港ビルはなく、代わりに電話ボックスのような小屋が2つあった。それが検疫と入国管理の事務所だった。キガリの街は驚くほど静かでどこの家も小さく、ホテルは1軒しかない。中央銀行もめちゃくちゃで、財政赤字が続いて外貨も底をつき、これからコーヒーの収穫期で現金が要るというのに、中央銀行の金庫に自国通貨はほとんどなかった。前総裁は銀行家ではなく、スタッフが進言しても不要と判断されてそのままになっていたらしい。
    前年の理事会の議事録読むと、金融政策の議論はされておらず、理事会と総裁はどちらが上かというくだらない議論ばかりされて、蔵相からいい加減に仕事しろと怒られる有様。副総裁は銀行のことを知らないし、職場を見てもおしゃべりしている人に居眠りしている人、どこかへ行ってしまった人と散々な状態で、帳簿もミスだらけ。いったい、どこから手をつけたものか。

    通貨制度の問題として、二重為替相場制度があった。政府の取引、輸出、必需物資、外国人俸給送金など承認された取引には1ドル=50ルワンダフランの政府相場、その他の取引には1ドル=約100ルワンダフランの自由相場が適用される。これを使って外国人労働者や輸入業者が儲けることができた。給料のうち100ルワンダフランを政府相場で送金すれば2ドルになるが、それを自由相場で戻せば200ルワンダフランになる。輸入業者も本来1ドルの商品価格を2ドルと偽って輸入すれば、100ルワンダフランで政府相場で支払って、余った1ドルを自由相場で戻せばタダで輸入できる。そんなの、めちゃくちゃだよ。

    大統領に通貨制度の改革を進言するのだが、通貨制度の改革は、財政改革とセットでなければ結局うまくいかない。それならば、ということで、服部は経済再建計画の答申作成も任されることとなった。しかも外国や他の大臣などに邪魔されないように、これは1人で極秘でやるようにとのことだった。こうして、中央銀行総裁の仕事にとどまらず、人口300万人の一国の再建を任されてしまう。

    さまざまな困難に直面するが、相互理解を深めながら少しずつ仲間を増やし、国を再生していく。本書は初版が1972年であるにも関わらず、近年「異世界転生モノの現実版」としてSNSでも話題になったそうだが、それも頷ける内容だ。




  • 新書で教養を深めたい、政治や経済について知識が欲しいなと思ったときに、書店で見かけて手に取った。「日記」とあるので著者の私生活や感情の動きも書かれてると、普通の経済の本より読みやすいのでは…と期待して買ってみた。期待通り、面白く読めた。通貨の理屈や国際機関の色々は完全に理解できたわけではないけど、服部さんの熱意と信念でルワンダの経済再建を進めて行く様子は読んでいて爽快だった

  • 現代のサラリーマンとして、年収上げたいとかFireとかでは赴任する意志はないであろう。使命を感じて仕事をするって素晴らしくて憧れた印象です。ただ、やはり事務が全然馴染みがないので仕事の大変さが共感できず。

  • 自分の頭で考え行動するというビジネスの基本動作(仮説検証)を確実にやっている。言うは易しでなかなか出来ないことだが、それを1965年のルワンダという想像だにできない環境下で実施していることに頭が下がる。
    「毎日なにかを学び、学んだことを実施に移す生活、反射的な行動は許されず、たれも相談する相手もなく、一人だけで考え、行動する生活。」これが1965年のルワンダ中央銀行で総裁のポジションに就いた人の思考かと思うと身震いする思いだが、自分の日々の仕事にも、ほんの少しでもこの思考を持ち込んでみたい。

  • 読み終わって、他の方の感想で知ったのですが、この本は金融というお堅い業界のノンフィクションなのに、一部で「異世界転生モノ」として評判になってたんですね。
    ははは。分かる!
    私も読みながら、「これは…完全にRPG!」と思っていたので、みんな考えることは同じなんだな、と笑った。

    1965年、ルワンダの中央銀行総裁に就任した日銀マン・服部さんは、今となっては懐かしい瓶底めがねとコテコテの日の丸マインドを装備して、持ち前の知恵と勇気とちょっとした狡猾さを武器に、あちこちにひそむモンスターを退治しながら着々と仲間を増やしていく。
    時に大小のボスキャラに遭遇するも、見事な弁舌で一網打尽にし、異世界ルワンダの政財界を鮮やかにクエストする姿はまさに勇者。

    本屋でタイトルを見て、ルワンダ中央銀行の総裁を日本人が就任、という珍しいシチュエーションに飛びついた私ですが、読み始めてそれが1965年の話と知って、「そんな古い昔語りを今読む意味あるのかな」と一瞬不安に思った。
    でも、最初の1ページからもう、とんでもなくおもしろくて、そんなことどうでもよくなった。

    語られる話は、すべてがまるで奇跡のようだと思った。
    まず、登場するルワンダの政府要人たちが非常に清廉で純粋なことに驚く。国を建て直したい、ルワンダ国民を幸せにしたい、というシンプルだけど切実な思いを共有している。
    しかも勉強熱心で、若くて意欲的。
    そんな政権、アフリカでは、いや、世界でも奇跡だと思った。
    彼らの方も素早く服部さんの人柄を見抜き、信頼を寄せる。

    そして、ルワンダ国民の勤勉さ。
    当時のルワンダは再建の見込みなし、とまで当時言われていたらしいが、ふとしたところに勤勉な国民性が垣間見えることを鋭く見抜いた服部さんは、それを頼みにして再建計画を立て、なんとその期待どおりに彼らは変化を遂げていく。これもまさに奇跡。

    服部さんの本質を見るまなざしもまた、奇跡のひとつ。
    日本の銀行の「お偉いさん像」とは一味違う。必要とあらば、倉庫の整備やバスの輸入まで手掛けてしまう。どう考えても中央銀行の総裁の仕事としては異例ずくめだと、素人の私でも思う。
    量的緩和とか質的どーたらとかの中央銀行の一般的な業務の効果などは私は全然理解できないけれども、倉庫の整備もバス会社の立て直しも当時のルワンダ国民にとってはインパクト大の、非常に重要かつ経済効果大なものだということは簡単に想像できる。おそらくきっと服部さんじゃなければ、そこまでは手をつけられていなかったのではないかと思う。

    こうして、服部さんが来たことで、さまざまな問題が取り除かれ調整された結果、政治と政策と日々の活動は美しく調和し、それが確実に結果を出し始める。
    ご本人による記述なので、もちろん割り引いて読まないといけない部分はあるだろうけれども、役割を終えて日本に帰るまでの展開は、終始夢のようだった。
    読んでいてとても幸せな気持ちになった。
    国づくりの、ひとつの理想の形だなぁと思った。

    そして・・・増補版じゃなかったら、ここで終わっていて、夢物語のままだったんだけれど・・・

    巻末に、ルワンダでその後起こったことが付記されていて、それを読んで、私の夢見心地は、ぷっしゅー ・・・と音を立ててしぼんでいったのであった。
    これぞノンフィクションの醍醐味?

    民族間の凄惨な殺戮の件をおいておいても、あの清廉だったカイバンダ政権も、最後の方はぐだぐだだったんですね。残念。
    やっぱり人間の営みってそうなっちゃうのかなぁ、と悲しい。
    (大統領ご自身は最後まで清廉だった、夫人の親戚がいけなかった、と服部さんが必死でかばっているあたり、ちょっと泣けた。信じたくないよね、やっぱり)

    本筋とはそれるけれども、ルワンダ商業銀行緊急取締役会での、多国籍メンバー間の調整の描写(会話)は非常に興味深かった。
    こういうのをのぞき見る機会というのは下々の者にはなかなかないから、大変におもしろい。
    世界は割と国の損得だけで動かされているように見えるときがあるけれども、やっぱり各国の代表の調整力というか、カリスマ性というか、人となりというか、政治指向というか、そういうものってすごく重要なんだなぁと思った。
    補足1で、服部さんがルワンダ内乱時の各国の対応についても激しい論調で評価していたが(この時はフランスの動きを非常に高く評価)、そういうのもニュースをぼんやり見ているだけの私にはまったく見えない部分なので、非常に興味深かった。

    この本はルワンダ語に翻訳されているのだろうか。そこがとても気になった。
    日本人よりも、ルワンダの人が読むべきと思う。
    もう今とは経済の在り方も全然違うので、方策などは全然参考にはならないだろうけど、服部さんが貫いていたマインドみたいなものは今も非常に重要で、どんなバックグラウンドの人にも通用するものな気がする。

全227件中 1 - 20件を表示

服部正也の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×