ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 168
  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121902900

作品紹介・あらすじ

一九六五年、経済的に繁栄する日本からアフリカ中央の一小国ルワンダの中央銀行総裁として着任した著者を待つものは、財政と国際収支の恒常的赤字であった-。本書は物理的条件の不利に屈せず、様々の驚きや発見の連続のなかで、あくまで民情に即した経済改革を遂行した日本人総裁の記録である。今回、九四年のルワンダ動乱をめぐる一文を増補し、著者の業績をその後のアフリカ経済の推移のなかに位置づける。

感想・レビュー・書評

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  • 書店やネットでの評判を見て購入。いやぁ、評判通り。実に良い本でした。
    異世界転生モノかよ!と思わせる神展開を、まさか50年近く前に日本人が成し遂げていたとは…。本著を見つけ出し、素敵なフレーズをつけてプロデュースしてくださった方に感謝したい気持ちです。
    結構昔に「ホテル・ルワンダ」を渋谷のちっちゃい映画館で並んで見ましたが、これは大虐殺よりずっと前の1960年代の話。本著内での発展の後に大虐殺があると思うと切なさも感じましたが…それでも、この発展に向けた努力はルワンダ大衆の幸せに寄与していたはずです。

    さて、日本のGNPが世界第2位となったのが1968年。その少し前にルワンダの中央銀行総裁として赴任したのが著者で、ここから国の実情を把握し、ルワンダ大衆の福祉に貢献するために次々と手を打って行った訳です。
    どーにも中央銀行の職分を超えてるところもありそうですが、本著内の展開のストーリー性と先を見越した一手の打ち方は、日銀マンここにあり!という感じで、読んでいてとても痛快です。
    ルワンダの産業振興のため、参入障壁を下げて自国民に商売をさせる、というくだりや、外国人商人の間の諍いを上手く使うくだりは、教科書だけの表層的な理解ではない、人間が織り成す経済をどう動かしていくかに関する深い洞察がそこにはあったのかなと思います。

    本著を読んで感じたこととして、ゼネラリストは捨てたモンじゃないなと。
    著者は金融のスペシャリストながら、結果的には「国内のバス交通も整備した方が良いよね」的なコメントをしたり、専門じゃないけど正しいコトをしていった訳ですが、訊かれた時に「いやそれ僕の仕事じゃないんで」と返すのかどうかって、大事ですよね。
    専門分野は人それぞれあっても良いけど、常に一般論としてでも物事を考えていて、常にバッターボックスに立っている「つもり」の気概というのは必要だなと感じました。

    あと、開発援助の在り方についても、考えさせられました。寄附しておしまい、ってのは本当に有効なんでしょうか。
    前に「テクノロジーは貧困を救わない」を読んだ時にも感じたのですが、結局は人を救うのは人な訳で。
    (ひと昔前の?)流行りのマイクロファイナンスだって、あれは前向きな人の意思(と資金)を上手く繋げたからワークしたのだから、そんな趣旨の仕組みや、それを手伝う人なのか、せっかくなら死に金よりも人を幸せにする営みが重要なのではと感じました。(まぁ、どっちにしろお金は要りますが)

    ちなみに、著者の「傲慢頑固無能」等、人をけなす(著者からしたら、ありのままに描写しただけなんでしょうが)文言がなかなかキレてました。さすが海軍軍人、なんでしょうか。

    少し金融絡みに親しみがある方がより楽しめるとは思いますが、個人的には文句なしのエキサイティングな良著でした。
    将来、異世界に転生して経済を立て直す予定のある方はぜひ!(笑

  • 1965年。IMFからの要請で中央銀行総裁としてルワンダに派遣された日銀マン・服部正也の経済改革奮闘記。こんな日本人がいるとは知らなかった。

    アフリカの中央に位置する小国ルワンダは、コーヒーが主要な輸出品だが財政と国際収支の赤字が累積し、国内では外資系企業と外国人が大手を振るベルギーの旧植民地だ。ここで服部は次々と改革していく。通貨改革と平価切下げと輸入の部分自由化。歳入と歳出のバランスを大蔵大臣と協議し、国債を発行する。国債引き受けを外国銀行に頼み込む。外国人に軽く、ルワンダ人に重い税制の歪みを正し、中小企業を育成するため開発銀行を作る。もうとにかく動き回る。とても中央銀行総裁に思えないほど。おまけに鉄道もタクシーも発達していない国だから、せめてバス交通を充実させようと日産ディーゼルと交渉してバスを輸入しバス公社を作ったりと、そんなことまで?と驚く。

    総裁の奮闘とルワンダ人たちの努力でルワンダ経済は上向きとなる。服部は6年に渡って総裁を務め、ルワンダの経済発展に貢献した。こうした改革の裏には服部のルワンダ人に対する公平な目と観察力があったと思う。ルワンダ政府の外国人顧問団や技術支援員たちは「ルワンダ人に経済発展は無理だ、彼らは怠け者だからだ」。と口をそろえていう。果たしてそうか?と、服部はルワンダ人商人や国民に話を聞き、彼らの生活のなかに入っていき、真摯に向き合い、国民性を掴み取ろうと観察する。そこで得た知見(決してルワンダ人は怠け者ではないし、能力がないわけではない)に基いて様々な経済改革と政策を立案していく。この本を読んで感動するのが、服部のこの観察力と話を訊く真摯な姿勢である。かっこいいな、いいな、と思った。突然、アフリカの小国の中央銀行総裁になるドラマ性もさることながら、服部の奮闘の数々は一遍の小説より奇で面白く感動する。

  • 1965年、アフリカはルワンダの中央銀行総裁に着任した服部さんの回顧録。服部さんの剛胆なハートと大局を掴む頭脳にしびれ、金融のおもしろさを実感した。バンカーの仕事のよろこびってこういうことなんだな、と。

    服部さんが、私心無く先入観にとらわれず、原則に従って仕事に邁進して着実に成果を上げていくさまが痛快。中学高校でこの本を読んで、頑張って勉強して大きな仕事をする人が増えたらいい。この本には、なんのために勉強するのかの答えのひとつがあるように思う。

  • 金融チートスキルでおっさんが無双する! みたいな煽り文句に惹かれて購入したのだけれど、本当に面白かった。
    独立後、政情も安定しないルワンダの中央銀行総裁として赴任した方の回想記録。

    公邸も、銀行を運営するためのまともな人材も何もない中、大統領と会った時に、まずミッションを尋ねルワンダ人の福祉のために、という共通の目的を確認した後は、ひたすらにルワンダ人を直接尋ね、彼らに寄り添い、ただ与えるだけではなく、ルワンダ人が自ら独立できるよう銀行運営だけでだけでなく、金融政策から国を建て直すために奔走している様が伝わってきました。

    例えば、ルワンダ人は金を稼いでもビールを買っておしまいだから、というような批判には、それは物が適正な価格で十分に流通していないからだ、と指摘し、流通と公定価格を慎重に見極めて政策を実施した結果、人々の生活水準(服装や食事)が明らかに向上していく。

    金融がどれほどに国に影響を与えるのか、ということを初めて知って非常に勉強になりました。何よりも、国民の福祉を第一に据え、ある意味国家百年の大計を抱けるこの方がこの時期にルワンダの中央銀行総裁として赴任されたことは、何よりも僥倖だったのでしょう。

    それでも、その後のルワンダの動乱で多くの命が奪われ、向上していたルワンダの経済もあっという間に悪化していく……。建て直すには時間がかかり、破壊するのはあっという間だというなんとも人間社会の難しさをも改めて感じた一冊でした。

  • 2021年3月19日(金)“ロングセラー”に学べ!|おはBiz NHKニュース おはよう日本
    https://www.nhk.or.jp/ohayou/biz/20210319/index.html

    日本人総裁がルワンダ経済の立て直しに奮闘する姿が話題!『ルワンダ中央銀行総裁日記』|教養|婦人公論.jp
    https://fujinkoron.jp/articles/-/3532

    ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版|新書|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/2009/11/190290.html

  •  途上国が順調に滑り出すには技術協力の人材のレベルが最も重要なパラメタだということをこれでもかと感じさせてくれる本だった。
     日本の場合は封建制が達成されて長かったために幕府という官僚機構が既にある状態から近代化をスタートできた。アフリカの多くの国では官僚機構を構築して根づかせるところから出発となるわけで、単純に科学技術を持って来ればいいわけではない。ということがルワンダの事例としてよく分かった。
     では官僚機構の達成の有無の地域差が何で生じたかという話は、ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』とかで検討されているところを信じれば所与の地理的条件の違いによるわけで、私の受け取り方としては運に近い。運でここまで差がつくのか…と思うと、 これは支援しなきゃなという思いが強くなる。

  • 1965年、46歳の日本銀行行員はIMFからの依頼要請に基づき、当時アフリカの最貧国であったルワンダの中央銀行総裁に就任する。そして6年弱の任期中に経済を復活させ、その後の経済発展の基礎を作るーそんな一見信じられないような偉業を成し遂げた著者がその悪戦苦闘を自ら語った随筆が本書である。

    当時のルワンダは旧宗主国であったベルギーを中心とした外国人が商業の実権を握っており、ルワンダ人は基幹産業であったコーヒー豆の生産への従事が主であった。外国人勢力は法制度の抜け道を利用して自らの利益を最大化し、本国に送金することしか考えておらず、経済活動の果実は一切ルワンダには還元されない。

    ”日本が敗戦から立ち直り経済成長を遂げたように、ルワンダも必ず経済成長は可能である”という強い信念の元で、通貨制度の改革や、自ら数少ないルワンダ人商人のもとへ足繁く通い、農業の生産性向上と商業活動の発展のための立法などを行い、6年間かけて経済成長を実現させる。後者のような業務は中央銀行総裁の所掌業務ではなく、かつ当時のアフリカ経済といえば鉱山資源の採掘・輸出業が中心であったところ、農業・商業に着目をして地に足の付いた経済成長を実現した点は、鉱山ビジネスの失墜と共に経済成長も破綻してしまった他アフリカ諸国との大きな違いであり、著者の卓越した判断であったと言える。

    徹底的にルワンダ人との直接の対話・ヒアリングを重視し、自らの既得権益を守ろうとする外国人勢力と果敢に戦いながら政策を実現した著者のリーダーシップには感嘆させられる。

  •  1965年から1971年の話。日銀からルワンダの中央銀行の総裁に着任。最初の数時間の面談で大統領から絶大な信用を得て、中央銀行による通貨政策だけではなく、大統領の依頼の元、同国の経済の再建計画を立案、実行する。当時国際通貨基金は独立まもないアフリカ各国で経済、財政計画を作成し支援してたが、実際にはうまくいっていなかった。それらを見てきた著者は別のアプローチでルワンダの経済を成長させ、国民生活環境を改善していく。
     それは、外国資本からルワンダ国民に経済の主導権を取り戻す取り組みであった。富を国外に逃さず、国民資本を蓄積していく。農民や商人の小商いから支援していく。今でいう、マイクロファイナンスのはしりのようなものか。
     著者は最後にこう書いた。「途上国の発展を阻む最大の障害は人の問題であるが、その発展の最大の要素もまた人なのである。」途上国だけではなく。全ての組織に当てはまる言葉である。

  • 1965年から6年間、アフリカのルワンダで中央銀行総裁を務めた日本人、服部正也氏の自伝。

    服部氏は日銀の行員として、アジアの途上国援助に携わった経歴があり、その際の実績が高く評価され、国際通貨基金からルワンダ行きの要請を受ける。当時のルワンダは、ベルギーから独立したばかりで目立った産業もなく、経済的には相当困窮していたようだ。

    独立後も元宗主国であるベルギーへの依存度が高く、また政治家には国際経済の知識が殆ど無いという逆境の中、服部氏は経済再建のマスタープランを描き、大統領や大臣を巻き込みながら計画を断行する。6年間の在任中には本業である通貨改革以外にも、農業や交通網の発展へ大きく貢献していて、枠を超えた仕事ぶりに非常に感銘を受けた。

    ただすべてが順調に進んだ訳では無く、隣国からの襲撃や部族間の紛争などによって、計画が遅れたこともリアルに描かれている。それにしても60年代のアフリカで、日本人の勤勉さが一国の経済基盤を立て直したというストーリーは、まるで映画みたいでとても面白かった。

  • 国際通貨基金からの要請に従い、日銀からアフリカの最貧国の一つであるルワンダの中央銀行総裁として赴任した著者が語る経済再建の実話である。
    ノンフィクションゆえのリアル感と、著者の語り口は、経済用語に抵抗がなければ、ぐいぐいと中に引き込まれていく迫力に満ちている。ルワンダの財政健全化と、それに続く経済安定化に向けた取り組み、その努力には敬服させられる。著者から語られる当時の会話の数々が色褪せずに、臨場感をもって纏められていて、その記憶の精緻さには驚かされる。様々な場面で出会っていく人々に対して、手厳しい評価を下していく、そこには自信と信念の強さが見られる。著者は、'戦に勝つのは兵の強さであり、戦に負けるのは将の弱さである'と喝破しており、多くのトップに肝に銘じてほしい文言だと感じた。

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