感染症 増補版-広がり方と防ぎ方 (中公新書 1877)

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  • 中央公論新社
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レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121918772

作品紹介・あらすじ

人や物の移動が絶えない今日、病原体は国境を越え広汎に伝播する可能性が高まった。しかし危険な感染症すべてが世界中に広まるわけではない。本書では、伝染病との闘いの歴史、病原体の種類や性質、伝播の基礎知識から、私たちがこれから気をつけるべき感染症までを取り上げ、感染症の過去、現在、未来を浮き彫りにする。新型コロナウイルスや、将来起こりうる感染症を「死に至る病」としない実践的知恵を身につけよう。

感想・レビュー・書評

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  • ◯大分コロナウイルスも落ち着いてきたと思われるが、今一度、感染症についての本を読んでみたいと思い手にする。
    ◯感染症対策において、我々のような普通の人たちが普段の行動を心がけることが一番重要であると再認識した。日本人の潔癖とも言える性格が、コロナウイルスの感染拡大防止に寄与していると思うと、ものは見方、考え方で変わるのだと感じる。
    ◯旧版の最終章が性感染症について書かれており、意外な気もしたが、著者は母子手帳についても著作がある点、母子保健の分野との関連性で捉えると納得である。
    ◯昨今、オンラインでのピルの処方が議論されているが、エイズの視点を持ち込んだ場合、また方向性が変わっていたかもしれない。そもそもその視点での議論がされていたのか疑問である。やはりものは見方、考え方で変わる。
    ◯また、旧版の途中で、マスクを全国民に配布することが提言されている。今の状況を著者が見たときどう思うのか興味深い。この本を読むと、改めて、マスクに高い信頼性を寄せることになるが、今般の状況を踏まえると、政策的には配布のタイミングが遅すぎたのかもしれないと思う。

  • とても分かりやすく書かれていると思う。この時代だからこそ、正しい知識を知りたい。日本人や日本国内で感染症が広がりにくい理由についての著者の意見については、安易に受け止めきれない印象もある(通勤電車等の密集状態についての記述などはあまりなかったはず)。それでも食事は箸を使う(そもそも個人個人が自分の器を使う)ことや、手を洗う、風呂に入る等の文化については、接触感染を避けることにはつながるだろう。裏を返せば、ファーストフードやスナック菓子等の手掴み食べ、大皿での取り分け(居酒屋などでの飲み会の食べ方)等はリスクが高まりそうに思う(ファーストフード、居酒屋等を否定する意味ではなく、気をつけるポイントであるだろうという認識)。まずは基本を知り(何がどういう方法で感染を起こすのか)、そして冷静に自分の頭で考えることが必要だろう。

  • 感染症の権威による感染症の解説本の新型コロナアップデート版。SARSの時点でマスクの重要性や集団免疫に言及している点はさすが専門家なのです。「新型コロナアップデート版」と書いていますが、新型コロナ関連の情報は少ないので、「感染症について正しい知識を持つ」という視点で読むといいと思います。新書なのでサクッと読める点もよいのです。
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  • コレラから新型インフルエンザまで、多様な感染症をわかりやすく解説したロングセラーに、新型コロナウイルスの解説を加えた増補版。

  • 新型コロナに合わせた増補版。ウイルスはどうやって感染するか、どうやって防ぐかという、基本的なテーマに沿って、インフルエンザやエイズなど、人類を悩ましている感染症を引き合いに見ていく。無知から来る恐怖心やデマや偏見などへの対策には、まずウイルスを知ることが前提だけに、騒動や愚行が先鋭化した状態下ほど、特効薬より効き目がありそう。あらゆる感染経路や方法を読むうち、普段の生活の中で、無数のリスクに身を晒している気分にもなる。が、それが生きているという事でもあり、適切で適度な予防こそ最適解と感じた。

  • SARSウイルスは、咽頭で少量増殖してから、血液を介して肺や腸管へ行き、大量増殖すると考えられる。香港では、アパートを訪問したSARS患者が浴室内のトイレを使い、ウイルスが含まれていた便が排水管を落下した時に、飛沫が管内に発生した。換気扇を回していた浴室の床の排水口から飛沫が吸い出され、階段部分から上の階や他の棟へも拡散したと考えられる。この団地で、二次感染を含めて300人以上が感染した。

    病原体は、長期的には人間との共生に移行すると考えられている。短期的には、病気がうつりやすい条件があれば強毒化し、うつりにくい条件では弱毒化する(イーワルド)。

    リンパ球にはBとTの2種類がある。Bリンパ球は抗体をつくり、Tリンパ球は、Bリンパ球を助けて抗体をつくらせる。ヘルパーTリンパ球には、2種類ある。ウイルスや細菌に対しては、Th1が応答し、Bリンパ球がIgG抗体をつくるのを助ける。花粉、ダニにはTh2が応答し、Bリンパ球がIgE抗体をつくるのを助ける。

    日本人のA型肝炎ウイルスの抗体保有状況によると、1950年代以降に生まれた人は抗体を持っていない。水道水の塩素消毒が普及して、ウイルスがいなくなったことを意味している。

    ウイルス外側のタンパク質には、16種類のヘマグルチニン(H)と、9種類のノイラミンさん分解酵素(N)がある。通常のインフルエンザでは、ウイルスのタンパク質を開裂させるトリプシン様酵素が存在する気道や腸管のみが感染する。ヘマグルチニンの開裂部位に変化が起きると、細胞内の酵素によっても開裂が起こるようになり、全身で感染する。この高病原性ウイルスH5N1によって、1996年から2019年までに東アジアで450人が死亡している。いまのところ、強い咳を起こさないが、気道粘膜で局所感染を起こし、咳によって伝播する変異を起こすと、新型インフルエンザとなる。

    スペイン風邪は、ウイルスが肺胞で増殖してガス交換ができなくなり、窒息死をまねいた。咳による飛沫によって感染は広がった。

    タミフルは、ウイルスが細胞外に出る時に細胞膜上のノイラミンを分解する酵素の活性を阻害する。ノイラミン分解酵素は、すべての亜型のインフルエンザウイルスが持っている。

  • コロナ禍において、今の時期は特にマスクをしている顔周りが暑苦しくなってしまいマスクを外してしまいがちだが、どんなマスクであれ装着することで感染のリスクを減らすことができる。感染者が増加している今、人が大勢いる場所では暑苦しくてもマスクを外さないようにしたい。

  • 現在の新型コロナウィルスの流行に伴い読んでみたが、子供を持つ親としては性感染症の章により興味をひかれた。子供達への確かな性教育にもっと力を入れて欲しいと改めて思った。

  •  感染症について手広く分かりやすく書かれているだけでなく、疫学の専門的な人材の育成、サーベイランス体制の確立、性習慣における安易な欧米追従(ついしょう)へ警鐘を鳴らすなど、いま(2020年)まさに必要とされている提言が盛り込まれていることに驚いた。2020年に猛威を振るった新型コロナウイルスのことを考えれば、O-157やBSE, SARSを経た2006年に書かれた本書の提言がそのまま問題になってしまったということは、悔やまれることだろう。

     コレラ、天然痘、結核、風疹、スペイン風邪といった歴史的に世界中で猛威を振るった感染症や、スノウの画期的な疫学調査や、塩素溶液による手洗いの重要性を訴えたゼンメルヴァイスといった人間の努力による感染症の防止というのはあらゆる本で取り上げられる内容ではある。

     そのなかでもこの本が面白いのは、感染症を清潔化という文明史的な視点からとらえていることと、それと関連して人間の行動変容に着目しているというところだと思う。イーワルドの進化論的な説明も紹介されていて興味深い。人間社会が危険な感染症を防ぐようなかたちに変化してくると、毒性の弱く感染の広まりやすいものが残ってくるという。病原菌からすると、伝播しにくい社会(接触が少ないなど)では、宿主を殺してしまったのではそこで感染が止まってしまう。したがって、宿主を生かさず殺さず、行動してもらうことで感染を広めようと言うのだ。新型コロナウイルス (SARS-Cov2) はもちろんその代表例である。

     本書の問題意識は、2003年に世界で猛威を振るったSARSにおいて日本人の患者数がゼロだったのはなぜか、ということにあって、これは日本人の生活習慣や発声法の違い、あるいは排水設備などさまざまな理由が考えられる。そこからマスクの効用についても論じられている。マスクは患者が着用することで拡散を防止するということはすでに広く知られているが、飛沫拡散防止という点では2層の紙マスクでも十分に減速効果があるとのことである。

     そしてエイズなど性感染症の予防について警鐘を鳴らしていることも無視できない。日本は外国に比して高いコンドーム使用率を誇る。それは避妊はもちろん性器が傷つくのを防ぎ性感染症を予防することからも望ましいことだった。日本のセックスは清潔なのである。(冗談)

     コンドームの普及していない外国において避妊のために多く用いられるのがピルであるが、これを日本にも取り入れようとする動きがあるという。分かりやすく言えばコンドーム文化の破壊といえよう。これにはもちろん利害が関係している。ピルを普及させたい製薬会社に物申せない感染症専門家という関係は、「ビッグ・ファーマ」などを読むと一層末恐ろしいことである。

     ページ数としては薄いながら、かなり読みごたえがありました。

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著者プロフィール

1940年山梨県生まれ. 東京大学医学部卒業, 同大学院博士課程修了. 国立予防衛生研究所研究員, 国立公衆衛生院衛生微生物学部長, 国立予防衛生研究所感染症疫学部長, 国立感染症研究所感染症情報センター長を経て, 2001-12年大妻女子大学家政学部教授. 国立感染症研究所名誉所員. 大妻女子大学名誉教授.著書 『文明とアレルギー病――杉花粉症と日本人』(講談社, 1992年)『感染症の時代』(講談社現代新書, 2000年)『母子手帳から始める若い女性の健康学』(大修館書店, 2012年)訳書 E・ノルビー『ノーベル賞の真実――いま明かされる選考の裏面史』(東京化学同人, 2018年)P・ヴィンテン=ヨハンセンほか『コレラ、クロロホルム、医の科学――近代疫学の創始者ジョン・スノウ』(メディカル・サイエンス・インターナショナル,2019年)

「2020年 『感染症 増補版 広がり方と防ぎ方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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