イタリア・ルネサンスの文化 (上) (中公文庫)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122001015

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  • イタリア・ルネサンスに「個人の発見」という中世にない傾向を見出したブルクハルトのルネサンス観は今では「過去のもの」とされることが多い。曰く、中世とルネサンスはブルクハルトが言うほど「断絶」しておらず、むしろ「連続」していた。中世にも科学的発見はあったし、逆にルネサンス時代にも魔術や占星術が盛んである等、両者の境界は曖昧だというのだ。だが個別的なものを通じて普遍的なものを「直観」することを歴史家の仕事と考えたブルクハルトにとって、ルネサンスの「始まり」を客観的・実証的に確定することにさしたる意味があるわけではなく、こうした批判はブルクハルトの核心をつくものではない。

    また近代社会を切り開いた動因として、ルネサンスの個人主義より宗教改革がもたらした禁欲的職業倫理の方が重要であるというトレルチの主張(『 ルネサンスと宗教改革 (岩波文庫) 』)もあるが、その学説自体の是非はともかく、そもそも歴史の推移を繰り返しとみて発展とは考えないブルクハルトは、前の時代に後の時代の発展の種子を探るといったことにそれほど関心を持っていない。ブルクハルト史学にあるのはあくまで持続と再生だ。彼は芸術作品を鑑賞するようにルネサンスという時代の個性を際立たせて描いたに過ぎず、そこに古代の再生を読み取ったまでのこと。歴史の発展メカニズムを解明する観点から本書の意義を論じることも必ずしも適切ではない。

    個性を賛美した本書を読めば、ブルクハルトが「ヒューマニズム」という薄められた進歩主義や楽天的な近代主義の信奉者であるとの誤解を持つかも知れない。だがブルクハルトはルネサンスの明るい側面だけでなく暗黒面を見すえてもいた。自己利益を肯定する個人主義は不正義や悪徳と表裏をなすことは言うまでもない。『 世界史的考察 (ちくま学芸文庫) 』には進歩というものを信じないブルクハルトのペスミスティックな歴史観が明瞭に示されている。併読を薦めたい。

  • 上下巻。
    あとがきで訳者が絶讃していたけれど(あとがきで貶す訳者もいないものだが)、私にはよく分からない。私の興味が薄い分野について長く書いていたからと言う理由もある。実際、私の興味のある最後の章は楽しく読んだ。まあ、情報の取り扱いは平等なので、ここはやはり不朽の名作とでもいうべきか。一番の問題は、原著者註や訳者註が多すぎることだ。この二種類の脚注で、話の腰を何度も折る。おかげで話はぐだぐだな印象。あとがきの「流れるような」という印象は全くない。
    とにかく疲れる。
    後に「幻想の天国」を読んで、ブルクハルトをもう一度読み直してみようと思った。

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