レイテ戦記 (上巻) (中公文庫)

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  • 中央公論新社
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レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (450ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122001329

感想・レビュー・書評

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  • 中公文庫の新装版が登場している。新版は全4巻となっており、自分はもともと旧版の上巻を持っていたので、そちらを読み進めた。上巻のうち、ちょうど新版の第1巻に相当する章まで読了したので、一旦メモを残し、別の本を並行して読むこととする。
    作者大岡昇平は京大仏文科を卒業した、どちらかというと純文学的、人文科学系的素養のある人物と思っており、そのような作者が、戦記をどのように書くのか興味があった。もっとも、同じ太平洋戦争を題材とした『野火』は読了している。しかし『野火』が、戦場における人間の極限の心理をどちらかというと丁寧に、克明に描写していたような印象が残っているのに対し、本書は、特に陸軍の地上戦闘経過については、執拗にファクト、事実のうえにも事実を重ねているように思う。これは作者自身が書いているように、幾分煩雑であっても、細かな記録上の事実を綴っていくことで、逃げ場のない戦場で戦い死んでいった一つ一つの隊、また一人一人の(記録に名前すらいちいち挙がってもいない)兵士たちへの鎮魂の意味を込めているのだろう。絶え間なく繰り返されるかに思える、日付・時刻・場所・死傷者等の列挙は、呆気ないと感じるいとまもないほどどんどん繰り返されていって、その一行1行で何十人も死んでいった兵士がいるという感覚がだんだん麻痺していく。
     具体的に誰それが悪いとか、責任があるという表現を、時折あったとしても、できるだけ抑えているように思う。ただ、作者は日本軍・米軍関係なく、指導者層には厳しい態度をとる。作者はあくまで、将官ではない、一兵士たちを主人公としてこの作品を書いているのだ。
     本書から感じたことは、読む前は、圧倒的な米軍の勢力になすすべもなかったのではないかという印象のあった戦闘が、日本軍も度々有効な反撃を見せていることである。とはいえ、いずれにしろ戦車隊や高性能兵器を持つ米軍に敵うはずがなく、また、敵わなかったと言う結果を知っている現代の読者からみれば、神風特攻も、陸軍の兵士たちも、同じくまさに悲壮というほかない。

  • 「レイテ戦記(上)」大岡昇平著、中公文庫、1974.09.10
    450p ¥780 C1193 (2019.08.27読了)(2005.10.25購入)(1996.10.10/22刷)
    8月には、大東亜戦争に関する本を何か読むことにしています。今年は、『レイテ戦記』にしました。
    以下は、読みながら書いた読書メモです。
    (8月23日)
    上巻を読み始めました。
    六章、上陸 まで読み終わりました。レイテ島へのアメリカ軍の上陸以前の状況を五章までで述べて、六章からアメリカ軍の上陸の模様がアメリカ軍、日本軍の記録をたどりながら詳細に記述してあります。昭和19年10月17日が上陸開始の日です。時々、日米どちらの軍の記述なのか分からなくなることがあります。
    (8月26日)
    八章抵抗までは、アメリカ軍がどんどん上陸し、日本軍が抵抗しながら徐々に後退する様子が記されています。日本軍の抵抗が激しいときは、船からの援護射撃や大砲などを大量に打ち込んでから前進する、という形でアメリカ軍は進撃してゆきます。日本軍の中には、白旗をあげて、降伏すると見せかけ、アメリカ軍が気を緩めて近づいてきたところを攻撃するという、卑怯な手を使うこともあったようです。多勢に無勢だから許されるという考えもあった…。
    九章海戦は、レイテ沖海戦の模様が記してあります。アメリカ軍には、フィリピンはほっといて台湾を先に攻めようという考えもあったようですが、マッカーサーがフィリピンを退却するときにアイシャルリターンといって退却した手前、フィリピンをほっておけないという意見をいれてフィリピンへの攻撃になったようです。その上陸部隊を邪魔しようと日本の艦隊がレイテ湾に行こうとしたのがレイテ沖海戦です。
    (8月27日)
    アメリカ軍が、上陸してタクロバンを占領後の10月23日にマッカーサーは、フィリピン政府の設置を宣言しました。(173頁)亡命政権大統領は、セルヒオ・オスメニヤです。
    十章神風では、特攻隊について記しています。神風特攻の始まりは、比島沖海戦中の10月25日ということです。現場指揮官の発案という説もあるが、本部の発案だろうということです。(301頁)
    11月1日に日本の支援軍がオルモックに上陸しています。アメリカ軍は、レイテ島の東側から順に西側に攻めてきていますので、日本軍は、西側のオルモックから上陸して支援しようとしています。
    アメリカ軍は、一定期間前線で過ごすと、後続部隊と交代して休養が取れるようです。日本軍も余裕があればやっていたのでしょうが、この時点では余裕どころではありません。
    上巻を読み終わりました。

    【目次】
    一 第十六師団―昭和十九年四月五日
    二 ゲリラ
    三 マッカーサー
    四 海軍
    五 陸軍
    六 上陸―十月十七日‐二十日
    七 第三十五軍
    八 抵抗―十月二十一日‐二十五日
    九 海戦―十月二十四日‐二十六日
    十 神風
    十一 カリガラまで―十月二十六日‐十一月二日
    十二 第一師団
    十三 リモン峠―十一月三日‐十日

    ☆関連図書(既読)
    「太平洋戦争 日本の敗因(5)レイテに沈んだ大東亜共栄圏」NHK取材班、角川文庫、1995.08.10
    「レイテ沖海戦」半藤一利著、PHP文庫、2001.09.17
    「野火」大岡昇平著、新潮文庫、1954.04.30
    「俘虜記」大岡昇平著、講談社文庫、1971.07.01
    「ながい旅」大岡昇平著、新潮文庫、1986.07.25
    「大岡昇平『野火』」島田雅彦著、NHK出版、2017.08.01
    (2019年10月15日・記)
    内容紹介(amazon)
    大岡昇平による戦記文学作品。太平洋戦争の“天王山”と呼ばれ、日本軍8万4千人もの犠牲を生み出した(対して米軍の死傷者は1万5千人)レイテ島における死闘を、厖大な資料や多くのインタビューを取り、それらを紐解いて再構築したものである。

  • 非常に細かく書かれていて、途中で何度もどういう状況なのか見失いました。
    「日米の作戦を比べてみれば、案外互いに相手を見抜きあっていることがわかる」
    「現代戦を戦うために必要な高度の平凡さ」
    「巨大化され組織化された作戦を遂行するには、各自が日常的な思考の延長の範囲で行動できるのが、錯誤の生じる事を少なくする」
    「鳳とか突入とか、異常な行動で組み立てられていた捷一号作戦にはそれがなかった」
    という言葉が印象に残った。

  • 1974年刊。

     アジア太平洋戦争の末期、フィリピン及びその周辺での海陸の戦いを詳述する本書。全3巻中の1巻。
     前史のマリアナ、サイパン上陸戦、台湾沖航空戦に軽く触れた後、陸軍の状況、栗田・小沢・西村・志摩各艦隊の帰趨、栗田レイテ反転、特攻作戦開始へと筆は進められていく(~S19/11)。

     所々、納得いかない叙述はあるが(栗田反転の責任、特攻作戦での上層部の有り方)、沖縄や本土空襲でなく、またマリアナやミッドウェー、インドネシア等、戦争のターニングポイントでもなく、インパールの如き日本軍の愚昧さを現出したわけでもない。

     そういうレイテ・フィリピン戦を、海陸の関係性を含め細かく書いているのは一般書では類例を見ない。

     色々言いたいことはあるが、
    ① ここで叙述される大西瀧治郎の遺書には鼻白む。平和や人命を後進に説くことに羞恥心は感じませんかと。
    ② また、台湾沖航空戦の大誤報は著名だが、この情報を海軍が隠蔽した(今更言えないという自己保身)上、その誤報を戦果だと信じて種々の作戦を立案せしめた海軍上層部にはなんともはや。

  • これはいわゆる小説ではなかった。いわゆる資料である。読むのに疲れる。よく調べたし、作品としては優秀なのだろうけど、私の期待していたものとは違った。

  • レイテを襲った台風の悲劇。だからこそ、太平洋戦争の激戦地、レイテをふり返るべき。

  • 4122001323 450p 2001・7・10 26刷

  • P112「参謀の作戦計画は、こっちがナポレオンのような天才的奇襲を仕掛ける間、敵は何もしないでじっとしているだろう、という予想のもとに成り立っていた。」と書かれている。お偉方は机上の作戦をまったく疑うことなく前線に指令していれば良いのだから、前線の兵は悲惨としか言いようがない。

  • 某月某日、どこそこの師団があそこへ行ってあれこれをした。そもそもこの師団というのはこれこれこういうわけで……退屈にも程がある。勘弁してよ。

  • 名著。戦死率98%といわれた太平洋戦争屈指の激戦地レイテ島における戦闘を日本側の視点で描く。


    戦争の悲惨さという観点からだけでなく、組織論、戦略論を考える上でも極めて示唆に富んだ内容と言えます。

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著者プロフィール

大岡昇平

明治四十二年(一九〇九)東京牛込に生まれる。成城高校を経て京大文学部仏文科に入学。成城時代、東大生の小林秀雄にフランス語の個人指導を受け、中原中也、河上徹太郎らを知る。昭和七年京大卒業後、スタンダールの翻訳、文芸批評を試みる。昭和十九年三月召集の後、フィリピン、ミンドロ島に派遣され、二十年一月米軍の俘虜となり、十二月復員。昭和二十三年『俘虜記』を「文学界」に発表。以後『武蔵野夫人』『野火』(読売文学賞)『花影』(新潮社文学賞)『将門記』『中原中也』(野間文芸賞)『歴史小説の問題』『事件』(日本推理作家協会賞)『雲の肖像』等を発表、この間、昭和四十七年『レイテ戦記』により毎日芸術賞を受賞した。昭和六十三年(一九八八)死去。

「2019年 『成城だよりⅢ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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