文明の生態史観 (中公文庫 M 98)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122001350

感想・レビュー・書評

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  • 世界史モデルとしての「文明の生態史観」についての論考だが、1957年の発表だが64年前に当たる.20年間のアフガン戦争でアメリカが敗北した現代でも十分に通用する考え方だ.日本と西ヨーロッパを第一地域、それ以外の中国、インド、ロシア、地中海・イスラム世界を第二地域と分けての分析は楽しめた.封建制の基でブルジョアが育成され資本主義体制に移行した第一地域と封建制がない第二地域の比較は良く納得できた.それを更に修正したp181のB図も非常に説得力がある感じた.宗教と伝染病の対比の「比較宗教論への方法論的おぼえがき」は現代の新型コロナウイルスのパンデミックを思うに、将来を予測した論考だったと感心した.

  • (1974.10.10読了)(1974.09.14購入)
    *解説目録より*
    東と西、アジア対ヨーロッパという、慣習的な座標軸の中に捉えられてきた世界史に革命的な新視点を導入した比較文明論の名著。

    著者 梅棹忠夫
    1920年6月13日京都市に生まれる
    1943年京都大学理学部卒業
    京都大学人文科学研究所教授
    1974年国立民族学博物館初代館長に就任した
    1986年3月12日に原因不明の失明をした
    国立民族学博物館名誉教授
    専攻は民族学、比較文明論
    2010年7月3日老衰により死去、90歳

  • 文明の発祥や発展を生態学的に説明しようとする視点はおもしろい。乾燥地帯が斜めに走る大陸中央部やその縁で開拓と水利のために古代文明が起こったが、乾燥地帯は破壊的で建設と破壊をたえず繰り返したために成熟しなかった。大陸東西の両端は中緯度温帯地域で降雨があり森林におおわれていたために文明は発祥しなかったが、ある程度の技術の段階で発展した。そして、大陸の端に位置していたため、中央アジアの暴力が及ぶこともなかった、と考察する。

    ただ、内容は仮説を提示している程度で、それを裏付ける十分な根拠や情報を積み重ねるようなものではない。学問の歴史としては大きな影響を与えたのだろうが、今となっては、その歴史を振り返ることができる古典的な位置づけであることは否めない。

    「文明の生態史観」「東南アジアの旅から」「比較宗教論への方法論的おぼえがき」以外は飛ばし読み。

  • 先日亡くなった探検家・学者。
    昔は一世を風靡したらしいので気になり読んでみた。

    ああ、頭いい人ってこういう人を言うんだなあ、と。
    いろんな見方がある事実をちゃんと自分の目で観察して、切り口を見つけ出す。
    西洋と東洋っていう一般的な世界の見方じゃなくて、ユーラシア大陸の極東(日本)と、西ヨーロッパに類似性を見出し、その間にある地域を、なぜか点対称な世界としてどんどん切り開いていく。
    その切り口からどんどん新しい見方が広がっていく。

    確かに、だいぶおおざっぱだから賛否色々あるだろうけど、確かに部長の言ってた通り、文明の衝突よりだいぶ面白いと思った。

    が、頭脳がついていかなくて、最後の方ようわからんかった。
    最低限、世界史は教養だ。

  • 梅棹忠夫氏の名を世に広めたのがこの「文明の生態史観」です。最初に発表されたのは1950年代ですが、現代社会にも大きな示唆を与えています。

     日本はアジアの一国という認識は今でもありますが、世界中を巡り歩いた見識を基に梅棹氏はアジアというカテゴリーに意味はないと述べています。梅棹氏の説く「文明の平行進化論」は今後の世の中の変化を考える上でも重要な視点かと思います。

     本書を読めば、世界で起きる変化に敏感になり、いろんな疑問がわいてきます。

    「BRICsのうち中国、インド、ロシアはいずれも第二地域の旧帝国だが、第二地域は新たな段階へと移行するのか?それとも歴史は繰り返すのか?」

    「旧帝国のうち地中海・イスラム世界だけはまとまっていないが、他の第二地域と何か違う要素があるのだろうか?それとも時間軸が遅れているだけか?」

    「日本を含む第一地域では教育の普及により為政者意識をもつ知識人が誕生し。ITの発達した現代ではこのアマチュア政治家層が力を持ち始めている。同じことが新興国で起きたときに何が起きるだろうか?」

     本書の面白さのポイントは巧みなアナロジーにあります。「比較宗教論への方法論的おぼえがき」では宗教と病気の対比で説明しています。この小論は思考のアプローチだけしか書かれていませんが、続きを読みたくなること請け合いです。

     梅棹氏の「文明の生態史観」はユーラシア大陸の理論ですが、発表後も多くの研究者によって幅広く展開されていきました。大陸をとりまく海洋の重要性を説いたのが、川勝平太氏です。「文明の生態史観はいま」という本の中で梅棹氏と川勝氏の対談が掲載されていますので、興味のある方はこちらもお勧めします。

  • 名著らしいが研究というよりエッセイ。

    おおらかな時代の本だと思った。

  • 生態系から日本と西欧の類似性を考察し、これらとユーラシア大陸の「中洋」を比較した、日本の文明研究のパイオニア的研究。生態が文化・文明に及ぼす影響に着眼した、その歴史的意義は否定できない。

  • 大分昔に読んだのだけれど今でも印象に残っている。梅棹氏は文明を生態史という新しい切り口から探ることによって西ヨーロッパと日本が現在なぜここまで文化的、経済的に発展することが出来たのかということを論じている。ユーラシア大陸を東北から西南にかけて斜めに広がる砂漠地帯からはロシア帝国、モンゴル、オスマントルコ、エジプトなど暴君的文明が起こり周辺国を吸収して文化を破壊していく。一方で日本、また西ヨーロッパはこの砂漠地帯から地理的に離れているために暴君の力は達せずに半ば温室状態で文化、そして人的な力を蓄えることが出来たのだと論じる。

    仮説だが非常に説得力があり面白い。梅棹氏の洞察力はすごいと思う。

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著者プロフィール

1920年、京都府生まれ。民族学、比較文明学。理学博士。京都大学人文科学研究所教授を経て、国立民族学博物館の初代館長に。文化勲章受章。『文明の生態史観』『情報の文明学』『知的生産の技術』など著書多数。

「2023年 『ゴビ砂漠探検記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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