世界の歴史〈10〉フランス革命とナポレオン (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
3.69
  • (2)
  • (5)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 73
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (519ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122001992

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 僕の人生を決めた一冊といってもいいだろう。高校一年生の時にこの本を読まなければ、僕は史学科西洋史専攻を選ぶことも、フランスの歴史学について学ぶこともなかった。この本に対しては、ありがとう、と思うときもあれば、なんてこった、と思うときもある(どちらかといえば後者の方が強い)
    村上春樹も少年時代愛読したというこのシリーズ、ドラマティックに語りながらも、実証的見地を見失っていない、歴史入門者にとっては理想的な本である(ただし史観が古いことは念頭に入れるべきである)。
    前半はフランス革命、後半はナポレオンについてだが、なぜか僕は前半のほうに興味が行く。現代はかつてないスピードで時代が変わるといわれているが、19世紀末と、この18世紀末ほど歴史が激しく動いた時期はない。封建主義という、現実に則さず歪みに歪みながらも数百年と続いたシステムを、フランス革命は、一気に破壊した。そして未知への世界へと足を踏み入れた。全く過去には存在しなかったものを創造するのは、さぞや不安で、恐ろしく、勇気の要ることだったと思う。もちろん行動のバックボーンである、ルソーやモンテスキューの思想の助けを借りて行ったのであるが。
    考えさせられるのは、ロベスピエールの生き方である。彼の理想は正しかった。強い信念も、行動力も、清廉さも、正しかった。ただひとつ、歴史を見誤っていたのだ。フランス革命とは、ブルジョワジーによる革命だった。その一番重要な部分をロベスピエールは、見誤った。そしてサン・キュロット(下層ブルジョワジー)に権力の基盤を置き、そして、ブルジョワジーに倒されるのである。
    あと感心するのは、政治家は演説が上手いということである。ギリシャ・ローマ以来現代までずっと、演説が上手いというのは、西洋の政治家には必要条件だった。ブッシュ大統領ほど演説が下手な人間が大統領になったのも、革命的なことかもしれない。

  • フランス革命の背景には、植民地拡大をめぐるイギリスとフランスの戦争がある。戦争で王室財政が破産の危機にあったことが、革命への導火線となっていた。結論から言えば、フランス革命はブルジョワのための革命であった。1789年に免税特権の廃止や、封建的特権の有償廃止などを実現したあとは、ブルジョワ層と農民層で守りたい利益が食い違ってくる。革命の最左派ロベスピエールによる恐怖政治は、反対者を切ってはまた現れる反対者を切るというもので、やがて自身も断頭台に上ることになった。残る中道派は政治の安定を軍隊に求めた結果、軍人ナポレオンが権力を握ることになった。ナポレオンによる民法典は有名だが、強調されたのは所有の自由であり、やはり革命がブルジョワのためであることを裏付けている。
    フランス産業を作り出したのは私だ、とナポレオンは言ったらしいが、実際にヨーロッパ市場の拡大を求め、英露墺および普と対立する。外交とはサンドイッチにすることだという言葉のとおり、ナポレオンはロシアやプロイセンと同盟を結ぶことでフランス孤立策を破ったのだった。彼は軍事の天才であったが、そもそもフランスの人口が当時のヨーロッパ内では非常に多かったことも忘れてはならない、と筆者は言う。

  •  著者(責任編集者)は、フランス革命をナポレオンのブリュメールのクーデターを持って終結するという立場、頁数の7割を費やしフランス革命を解説している。ナポレオンについては少しあっさりしている印象だが、ナポレオンを「革命の子」と見れば主軸はやはりフランス革命にあり、本著の著者(責任編集者)の意図が顕れた構成となっている。
     18世紀のフランスの人口は約2,600万人で欧州最大だったという。特権階級である僧侶(第1身分)は14万人、同じく貴族(第2身分)は40万人、非特権階級(第3身分)であるブルジョワジーは100万人、同じく農民は2,300万人、非農業勤労者が200万人という構成だ。フランス革命は第3身分のなかでもブルジョワジーが主導したことが特徴であるという。さらに、ブルジョワジーのなかでも特に特権階級に近い者達によるものであり、小ブルジョワジーを頼みの綱にしたロベスピエールは失脚を見ることになった。
     フランス革命を庶民による革命と認識するのは浅はかということだろう。

  • テーマのおかげか、このシリーズでは一番面白い。

  • (1993.11.11読了)(1979.11.18購入)
    *解説目録より*
    「自由・平等・友愛」の新しい理念と古い社会が凄絶に対決したフランス革命、その栄光と悲惨の中からナポレオンが登場しヨーロッパに嵐を呼ぶ。

    ☆世界の歴史・中央公論社(既読)
    「世界の歴史(2) ギリシアとローマ」村川堅太郎著、中公文庫、1974.11.10
    「世界の歴史(3) 中世ヨーロッパ」堀米庸三著、中公文庫、1974.12.10
    「世界の歴史(4) 唐とインド」塚本善隆著、中公文庫、1974.12.10
    「世界の歴史(5) 西域とイスラム」岩村忍著、中公文庫、1975.01.10
    「世界の歴史(6) 宋と元」宮崎市定著、中公文庫、1975.01.10
    「世界の歴史(7) 近代への序曲」松田智雄著、中公文庫、1975.02.10
    「世界の歴史(8) 絶対君主と人民」大野真弓著、中公文庫、1975.02.10
    「世界の歴史(9) 最後の東洋的社会」田村実造著、中公文庫、1975.03.10

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

慶應義塾大学総合政策学部教授。
専門分野:マーケティング、消費者研究。

「2023年 『総合政策学の方法論的展開』 で使われていた紹介文から引用しています。」

桑原武夫の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×