どくろ杯 (中公文庫 A 81)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122003286

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  • 詩人金子光晴の自伝的旅小説。昭和3年から計7年間上海、東南アジア、ヨーロッパへと放浪する回想録の前編。旅の小説といえど、どんどん風景が変わっていくかと思えば、そうではなく旅をはじめると決めてから、東京、名古屋、京都、長崎、大阪での金の工面、妻三千代との関係の危機もあり逗留がながく、なかなか腰が上がらない。上海にいってからも今で言う沈没の状態に近く、けわしい生活の連続。携帯のないこの時代では別れは永遠の別れだったりする。日本での生活にどんづまった著者が人生の賭けとしてはじめた旅は人間の生なましさをみる旅となった。人間のしぶとさがいっしゅん垣間見え、しかし万事がうまくいくとはかぎらなかったりする、自伝ならではの現実味がただよう本だと思う。

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著者プロフィール

金子 光晴(かねこ・みつはる):詩人。1895年、愛知県生まれ。早稲田大学高等予科文科、東京美術学校(現・東京芸術大学)日本画科、慶應義塾大学文学部予科をすべて中退。1919年、初の詩集『赤土の家』を発表した後に渡欧。23年、『こがね蟲』で評価を受ける。28年、妻・森美千代とともにアジア・ヨーロッパへ。32年帰国。37年『鮫』、48年『落下傘』ほか多くの抵抗詩を書く。53年、『人間の悲劇』で読売文学賞受賞。主な作品として詩集『蛾』『女たちへのエレジー』『IL』、小説『風流尸解記』、随筆『どくろ杯』『ねむれ巴里』ほか多数。1975年没。

「2023年 『詩人/人間の悲劇 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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