ボートの三人男 (中公文庫 C 16)

  • 中央公論新社
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122003514

感想・レビュー・書評

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  • 英国紳士3人のテムズ河ぶらり途中下船の旅(犬はさておき)。

    1889年に出版されベストセラーになったイギリスのユーモア小説。小説といってもストーリーらしきものがあるわけでなく、ただただ3人の男と犬1匹が水門(ロック)から水門(ロック)へ、テムズ河を船で下ってゆくというだけの長閑な話。にもかかわらず、船に縁がなく、ましてや紳士でもないぼくが読んでこうも面白いのはどうしたわけか。それはきっと、いかにもイギリス流の笑いにコーティングされてはいるが、万国共通の人間の《本性》が描かれているからにちがいない。いわば、「あるある」ネタ。

    「自然に帰れ」とばかりに船旅に出たはいいが、ボートを漕ぐのに疲れたといっては不平をもらし、隙あらばサボろうとし、都合の悪いことが起これば他人のせいにする。そんな「いい大人」の「大人げない」七転八倒ぶりがおかしくてたまらない。そしてまさかのエンディング。晴れた休日の午後のんびり読むのにふさわしい、楽しい本と出会った。

  • 三人の男と一匹の犬がふらりと小さなボートに乗って旅をする。
    イギリスでは、舟遊びというのは、なんだか特別らしい。

    のんきな旅で、こっちまで休暇気分。
    しかも、こいつらは「けったいな」連中で、珍道中を見ているだけで楽しい。

    春先、いい天気の芝生で、うつらうつら寝っ転がってるイメージ。

    盛衰の激しい文庫の世界でいまだに発行されつづけているみたい(2003年現在)。それだけでも、ファンが多いんだろうなあと思わせる。

    ------------------

    この本はずいぶん昔、旅行中に買った。
    小諸のホテルに滞在中だった。
    数日そこにいてヒマを持て余していた。
    散歩にでかけ千曲川の見える場所でとろとろ読んでいた。
    気分にとってもそぐって楽しかった。
    読むたびにそのときの気分を思い出す。

  • 気鬱に悩む3人の英国男(紳士?)たちが、自分たちには休息と気分転換が必要と、河へボートで漕ぎたした。一匹の犬とともに。テムズ河沿いの町や村の歴史を感じつつ、優雅な舟旅…となるはずが、3人と1匹の微妙で奇妙な個性と友情とのおかげで、ボート上では珍事が続く。彼らは無事2週間の旅を終えられるのか…。英国独特の滑稽、皮肉、ユーモアがたっぷり味わえる昔から大好きな本(本棚に眠るお気に入り本から発掘してきて感想再登録)。登場人物は主人公の「ぼく」と、友人のジョージとハリス、ぼくの飼い犬モンモランシー(フォックステリア)…ということで上記タイトルと副題「犬は勘定に入れません」がついた模様(原題にこの副題がついているのかこの版の記載の限りでは不明)。彼らの自虐的ですらある皮肉な面白さは言葉で表すのは難しいが、例えば最初のページから彼らのダメ男ぶりが発揮されている。無気力な体調不良の原因を調べるため大英博物館にでかけ「自分は致命的な百七の病気にかかっている」と思いこみ、かかりつけの医者の診察を受ける。有効な処方箋には「ビフテキ1ポンド、ビール1パイント(6時間ごとに服用)、散歩10マイル(毎朝)、就寝正十一時(毎晩)。小難しいことはいっさい頭に詰め込むな」。そして実践した結果、体調はすこぶる良好になったり(呆)。これに続く怠け者っぷりも可笑しいのだが、例をあげるときりがない。ボートに乗るまでも荷造りでドタバタし、船上ではささいな喧嘩をし、いちいちひと騒動を巻き起こさずにはいられない男たちの滑稽なユーモアが最初に好きになった一面だが、それだけではない複雑な側面も、この作品には存在する。こうした3人+1匹のドタバタ珍道中の合間に、テムズ河沿いの地理的、歴史的な興味を引き起こすような記述が多く表れ、ときどき大げさな美文が登場したりと、単なる滑稽小説に収まらない魅力があると思う(と同時にもっと英国の歴史を知りたいとも思う)。なんだか、やる気が起きないなぁとか、気が張って疲れた時、ゆっくり紅茶でも(あるいはお酒でも)飲みながら、まったり読んで楽しみたい、そんな本。それにしても何度読んでも笑える…。

  • 「がらくたは投げ捨ててしまえ
     ただ 必要なものだけを積み込んで
     生活の舟を軽やかにしたまえ。
     簡素な家庭 素朴な楽しみ
     一人か二人の心の友
     愛する者と愛してくれる者
     一匹の猫 一匹の犬
     一本か二本の愛用のパイプ
     必要なだけの衣料と食料
     それに必要より少し多めの
     酒があればそれでよいのだ」

  • 知人のブログを見て本書を知る。作者とその知人2人、犬一匹でテムズ川をボートで上っていく。ボートで漂いながらドタバタが繰り広げられ、昔の回想も物語に華を添える。北杜夫風の文体の妙味、可笑しさがあり、車内で読むのにはリスクがある。丸谷才一の訳はこの小説の雰囲気を見事に引き出している。真面目さと対峙したユーモアと言ったところだろうか。

    • taamoriさん
      フォローありがとうございました!
      フォローありがとうございました!
      2018/08/07
  • こんな面白い小説、本当に久々に読みました。

    面白いです。多分ここに書かれていることは誰もが経験しそうなことだからでしょうか。特に叔父さんが額縁を掛ける逸話は秀逸です。うちだったらこれは誰、と容易に想像しながら読み進めましたよ。

    解説にもありましたがこの小説は速読するのはもったいないですね。ゆっくり、それこそ時間を贅沢に使ってちょっとページをめくるのが似合う本です。
    いやあ、面白かった!

  • 『ボートの三人男』読了。なんとも上品な滑稽小説。やはり英国のユーモアは私には上品過ぎるw
    しかし、同時代、切り裂きジャック事件で震撼しているロンドン!のイメージがいっぺんで吹き飛びましたw

  • さすがに古いか、訳。

  • コニー・ウィリスを読む為の予習

  • 犬は勘定に入れません」に書いたURLで紹介されてた本。1889年出版のユーモア小説

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