中世の秋 下巻 (中公文庫 D 4-4)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122003828

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  • 日記や覚書等から、中世末期の人々の心性、宗教観、芸術感覚などを考察し、中世人の考え方に立って、中世やルネッサンスを捉えようとする。正直、かなり推測ではという気もする。

  • ○悪しき世であった。憎しみと暴力の火は高く燃え、不正は強く、悪魔の黒い翼が暗い地上をおおっていた。遠からぬ日に、この世の終わりが人類を待ち構えていた。だが、人類は行いを改めなかった。教会は戦った。説教師、詩人は訴え、警告した。だが、むだであった。
    ○指輪、ヴェール、さまざまな宝石、恋の贈りもの、それぞれが特殊なはたらきをもっていた。
    ○ひとは、このフィクションにそって、羊飼いの世界に逃げ込もうとした、現実のことではないにせよ、せめては夢の中ででも。
    ○民衆の想像力じたいが、もはや聖者たちを、いわばかまわなくなったのである。民衆の想像力は、もはや境界芸術の枠には、はまらなくなったのだ。
    ○ドニ・ㇽ・シャルトル―、つまり、シャルトル―ズ派のドニ、かれは、偉大な先人たちが考えてきたことすべてを、優しくかみ砕き、わかりやすい言葉の流れのうちに、丹念に繰り返している。集め、まとめはするが、新たに創造はしない。
    かれは、全著作を自ら書き、読みなおし、訂正し、章節に分け、挿絵を飾った。その営々たる作業の果てに、ついに生涯の終わりを迎えたとき、かれは、熟慮の末、静かにペンをおいたのである。「わたしは、安全な沈黙の港にはいろうと思う」。
    かれは、休むことを知らない。毎日、詩編全編を朗誦したという。せめて半分はよまなければ、そうかれは言っていた。なにかしているとき、たとえば着物を着たり脱いだりするときにも、かれは、お祈りの文句を口にしていたという。朝のおつとめをすますと、みんなまた寝に行くのだが、かれだけはそのまま起きているのである。
    かれのからだつきは、大きくたくましく、やってやれないこととてなかったという。わたしは、鉄の頭と銅の胃袋をもっている、そうかれはいっている。かれは、いやがりもせず、むしろ好んで、腐った食物、うじのわいたバターとか、かたつむりに食いあらされたさくらんぼとかを食べるのであった。この種の毒虫は、死ぬほどの毒なんかもっていない、安心して食べられる、そうかれはいっている。からすぎるにしんは、腐るまで吊るしておくのだった。かれにいわせれば、食べるには、からいものよりも、臭い匂いのするもののほうが好きだ。
    かれの神学上の省察と著述とは、静かで単調な学者の生活の産物ではなかった。超自然に接してのはげしい感動に敏感に反応する精神の、たえざるふるえのうちに、その思考作業をおしすすめたのである。

  • 5/27 読了。

  • 中世の人びとは、敬虔と卑俗の2つの人生観に引き裂かれながら、受け入れがたい矛盾の中で生きていた。
    彼らは恐怖を表現することはできたが、喜びを表すための言葉を持たなかった。
    彼らの時代に飽き飽きした中世人は、古代に理想の姿を求めた。
    けれど中世の精神は深く根を張っていて、古代を模倣する努力の大部分は、中世に古代風の飾り付けをすることに終始した。
    新しい時代、新しい精神は、時たま感じられることがあっても、まだ遠かった。

    ドニ・ル・シャルトルー
    『キリストのまねび』トマス・ア・ケンピス
    ヴィヨン コキャール アンリ・ボード シャルル・ドルレアン

  • 未読

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著者プロフィール

一八七二年、オランダに生まれる。一九〇五年、フローニンゲン大学教授。一九一五年、ライデン大学外国史・歴史地理学教授。古代インド学で学位を得たが、のちにヨーロッパ中世史に転じ、一九一九年に『中世の秋』を発表し、大きな反響を呼ぶ。ライデン大学学長をも務める。主な著書に『エラスムス』『朝の影のなかに』『ホモ・ルーデンス』など。一九四五年、死去。

「2019年 『ホモ・ルーデンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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