東南アジア紀行 上 (中公文庫 M 98-2)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122006416

感想・レビュー・書評

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  • 外国に行く際にはその国への最初のあいさつの代わりに、その国に関係する本をなるべく1冊は読むことにしている。タイに行く前に読んだのはこれ。今(2013年)から約56年前(1957~58年)の「旅行記」。アナログなエクスぺディション(探検)の逐一がおもしろい。だがしかし。タイに行く前に読んだこの本で一番印象に残っているのは、筆者(梅棹さん)が道中で訪ねることになったアンコール・ワットについて書かれた「第4章 アンコール・ワットの生と死」の部分。
    ”わたしは、はっとする。アンコール・ワットは死の宮殿ではなかった。アンコール・ワットは生きているのである。ここでは信仰がなお生きているのである。(中略)これは一つのおどろきであった。ここは遺跡ではなかったのである。”
    そして自分もそのひとりだったんだけれど、数年前観光客だらけのそこに自分は静寂を欲していたんだけれど、”しかし、なんと観光客の少ない観光地だろうか。(中略)観光客らしい人の姿もない。”という記述。出来ることなら、そこに立ってみたいなあと思うのです。

  • 日本人が東南アジアを研究調査するという経験(前例)がほとんどない中で、はじめは大使館を頼りながら、車などの必要な物品を通関させたり準備させたりし(p.21,25)、未知の地域を旅しながら調査していく様子は面白い。旅行記という観点では他にも多くの面白い紀行文や旅行記があるのだが、この時代ならではの、こうした調査ならではのというのは貴重に思える。
    大使館との諸手続きの様子を入国試験と表現したり、タクシーの運転手とのやりとりをスポーツの勝負になぞらえたりと(p.29)、特に初期の描写には余裕やユーモアもあって愉快。
    観光旅行とは違って、文化的エッセンスに欠ける地方の庶民生活や支援に触れる時間が長いというのも特徴的なのだろう(p.62,70)。それゆえにやや、だらっとした印象も受けた。しかし研究者の目にかかれば、同じようにみえる広大な(何もない)地域にあって、土の色、人々の生活う様式、熱帯農業の二類型(永住する水田と、転々とする畑作と)の違いを見分けられるという観察眼をもって、発見し楽しめている場面も多いのかもしれない(p.77)。

    悠長で非効率にみえる役所の仕事を指摘しようものなら、「ここはタイです」と言われる(p.110)。
    日本の山あり谷ありの風景に慣れた日本人にとって、訪れた滝では心をとらえるには貧弱と感じたともいう(p.203)。
    そのあたりは仕方ないが、タイの寺院の金ピカっぷりを醜いと表現し、古代の建築や美術の美しさばかりを対照的に持ち上げるのはやや寂しいなとも感じたのだった(p.270)。

    チェンマイ付近でのメオ族の描写は印象的だった。もともと中国貴州省の山岳部から、中国内部の動乱をきっかけに雲南、北ベトナム・ラオス、そしてタイにも広がってきたというが、アヘン収入のもととなるケシの畑が広がっていて外部からの進入者には過敏に反応するとか、過去に対日ゲリラに動員された経験から日本人には特に過敏だというのは面白いし、なかなか知ることがない(p.229,233)。
    あるいはまた、北タイというのは、バンコクの方とは民族的にも異なり、むしろラーオ族とでも言うべきだとか、タイとラオスはもともと文化的に政治的にも結びつきが強いというのも納得のいくものである(特に、北タイの人々や風土の穏やかな様子からも)(p.265)。

  • この間(もう5年前だけど)タイに行ったから、この本を読んでまたタイに行きたくなった。もう一度アユタヤ行きたい。
    うめざお先生がこの本でおっしゃっていた通りタイの近代化には本当に目覚ましいものがあると思う。きっと日本のチェーン店である「かつや」や「やよい軒」がショッピングモールの中に入っている今のタイを見たらうめざお先生は50年前にみたタイの風景とは違いすぎて驚くんじゃないかと思う。
    ちなみにタイの人は優しいです。そこは変わってないです。

  • 2018/04/03 19:01:13

  • 初の梅棹忠夫。

  • ベトナム
    チャムパ、チャム族について
    事故のエピソード

    ラオス
    ラオスは電車がない
    ほかにはブータンとアフガニスタンくらいであろう
    ネパールには、わずかな距離だが汽車が走っている

  • 1957年から58年と、61年から62年にかけておこわれた、著者たちの東南アジア研究の行程を綴った紀行文です。

    調査に参加したのは、大阪市立大学と京都大学の6人の研究者で、東南アジアの自然と文化についての調査をおこなう旅行の中で体験した出来事が語られています。上巻では、第1回目のタイでの調査が中心になっています。

    著者は、タイの人びとの生活を「アジア的貧困」という紋切り型の言葉で説明するのではなく、そこに生きている人びとが毎日の生活の中で享受しているはずの豊かさを見ようとしています。

  • おおらかで、きびきびしていて、とても素敵だった。
    詳しい感想は下巻にて。

  • (1996.05.20読了)(1992.06.11購入)
    *解説目録より*
    タイ、カンボジア、ラオス、ベトナムを縦断し、民衆の生活と風俗、文化と歴史を透徹した人類学者の眼で捉えた戦後の東南アジア研究の初の成果。

    ☆梅棹忠夫さんの本(既読)
    「人類学のすすめ」梅棹忠夫編、筑摩書房、1974.04.10
    「文明の生態史観」梅棹忠夫著、中公文庫、1974.09.10
    「サバンナの記録」梅棹忠夫著、朝日選書、1976.01.20
    「狩猟と遊牧の世界」梅棹忠夫著、講談社学術文庫、1976.06.30
    「日本とは何か」梅棹忠夫著、NHKプックス、1986.05.20
    「情報の文明学」梅棹忠夫著、中公叢書、1988.06.10
    「日本語と事務革命」梅棹忠夫著、くもん出版、1988.06.20
    「情報論ノート」梅棹忠夫著、中公叢書、1989.03.20

  • 旅をしている気分になりたかったので、神保町で新刊を買った。
    まずは上巻を読んだ。

    著者が団長になって、タイへの調査を準備する。経費や調査用の自動車の調達、現地での手続き、チュラロンコン大学の先生や地方の役人の協力、少数民族を含む各地の人の生活などが書かれている。

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著者プロフィール

1920年、京都府生まれ。民族学、比較文明学。理学博士。京都大学人文科学研究所教授を経て、国立民族学博物館の初代館長に。文化勲章受章。『文明の生態史観』『情報の文明学』『知的生産の技術』など著書多数。

「2023年 『ゴビ砂漠探検記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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