東南アジア紀行 (下) (中公文庫)

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  • 中央公論新社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122006423

感想・レビュー・書評

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  • 1957年から1958年にかけて、学術調査隊として著者が訪れた東南アジアの国々の紀行記。書かれている国はタイ・カンボジア・ベトナム・ラオスだが、特にタイの滞在が長かったことから、タイについての記述が多い。

    以前から梅棹さんの本を読んでみたいと思っており、特に興味を持ったこの本を手に取る。
    学術調査隊として海外に調査に行く、などとあると、非常に堅苦しいイメージを受けるが、文章がとても読みやすくて驚いた。学術的・専門的な小難しいことはあくまでさらりと書かれており、当地の雰囲気や現地の人々から受けた印象など、著者が感じたことが伸び伸びと描かれており、大変親しみやすい内容である。
    また、現地の歴史についても小難しくない程度に説明されており、その国の歴史を大雑把ながら感じることができる。あまりに淡々と要領よく説明されているので、これが著者の専門なのだろうか? と思っていたが、解説を読むと「猛勉強したらしい」とあって、すごいなぁと感心した。

    1950年代後半の紀行記ということで、確かに今の時代の東南アジアのイメージをこのままだと思っていると大目玉をくらうだろう。正確な地図がどうしても見つからなくて、ようようドイツ製の地図を手に入れて「ドイツはえらいものだ」などと書いてあると、ああ、そっか、この本はもう50年以上前のことが書いてあるのだ、とはっとさせられる。
    しかし、当時のアジアの「生の」生活を見て、感じ、考えた著者の印象は、きっと現代の東南アジアにも通じるものがあるのだろうと思う。

  • タイを出てカンボジア、ベトナム、ラオスを回る下巻のほうが面白かった。
    ともすると退屈なタイに比べ、やはり変化に富むし、ベトナム戦争前のベトナムをはじめ政情的にも経済的にも発展前の国を回る面白さがある。

    特にやはりベトナムのこと・・・「日越同祖論」にも触れながら日本とベトナムの文化的な近さを語っていたり(p.103-107)、ベトナムの国民性の勤勉さ・立派さを語っていたり(p.135)、交通事故をへて覆った先入観(「ベトナム人は排他的」なんてことは全くなかったということ、p.156)のあたりは手を打つように納得した。

    また、クイニョンとクアンガイの間が一番大きな切れ目(道の悪さ、文化的なつながり)という指摘(p.145)や、ホイアンの「静かに暮れていくたそがれの美しさ」という指摘(p.150)にも流石の洞察力を感じるのである。

    ベトナム以外に関しても、メナム(チャオプラヤ川)の灌漑ダムのようなインフラ整備のこと(p.22-24)、役人の汚職のこと(p.26)といった東南アジアに関する記述も興味深いし、
    カンボジアは(タイと異なり)歴史的にも欧州による支配があったというゆえに欧州むけの宿泊施設があるというような指摘も面白い(p.39)し、
    タイを含めて東南アジアの都市づくりは日本の封建主義と異なりマーケット中心主義だという指摘もなるほどと思った(p.53)。

    また、日本人というだけで合掌されたり(p.177)尊敬されたりするとか、ラオスでは生活物資の運搬にも飛行機を使う(道路が整備されるよりまず航空)という点も面白い(p.197)。東南アジアで熱帯といえば熱帯降雨林をすぐ思い浮かべるものだが、今回は熱帯落葉樹林帯に終始したがそれでよい(p.224)というのもなるほどと思った。

    解説者も触れているが、「現地で、実物を見ながら本を読む。わたしはまえから、これはひじょうにいい勉強法だと思っている。本に書いてあることは、よく頭にはいるし、同時に自分の経験する事物の意味を、本でたしかめることができる。」という指摘(p.65)は我が意を得たりという感じ。
    梅棹も様々な本を読んだようだが、私もまた、この梅棹の著作を現地で様々な川や都市に向き合いながら読んでなるほどと思う部分が多かったのである。
    洪水林、と表現されているトンレサップ湖のあたりも是非近々訪ねたいものだし(p.68)、「大いなる河」として「抵抗もすることができない」等と表現されたり(p.71)あるいは「重々しく暗い水をたたえている」と表現されたり(p.98)しているメコン川については同感である。もっともっと貪欲に東南アジアを回りたい。

  • 下巻は主にラオス、ベトナムの探検記について述べられていた。どちらも行ったことのない国なので、地名がでる度にGoogle様を頼ってどんなところなのか色々調べてしまった。
    ラオスのヴィエンチャンに滞在してたときの渡し船の話が個人的に好きだった。
    コロナがあけたら、ラオスかベトナム行ってみたいとこの本を通じて強く思った。

  • 2018/04/03 19:02:06

  • 50年も前に梅棹先生たちが、タイやカンボジア、ベトナム、ラオスなどを探検された記録です。古本屋で探して見つけて買って読みました。どうしてこうも面白いんだろう。どうしていま時分、梅棹忠夫にはまってしまったんだろう。それぞれの国の状況は、大きく変わっていると思うのだけど、でもいま読んでも臨場感があります。ジープで町から町へ移動する途中、いろんなトラブルがあります。故障で車が止まる、橋のない川を渡る、盗賊か何かにおそわれそうになる、ハラハラドキドキの連続です。大陸でのことですから、国境を知らない間に越えてしまうこともあったようです。いい加減というのか、おおらかというのか。しかし、どこに行っても日本人ということでわりと優遇してもらっていたそうです。戦争の傷跡がどう影響していたのでしょう。この探検後に、いろいろな国で内戦が起こっています。変わり果てた町もあることでしょう。それでも、変わらないものがきっとあることでしょう。写真集もいっしょに見てみたかったのですが、岩波写真文庫は復刊してくれるのでしょうか?

  • 下巻では、タイを出発して、カンボジア、ラオス、ヴェトナムの各国を訪れたときの体験が語られています。

    師の今西錦司譲りの平明達意の文章で、現地の人びとが日本人である著者たちに寄せる好意に接した体験や、急ぐことを知らない彼らの生活に触れたときの体験が生き生きと活写されています。

  • (1996.05.25読了)(1992.02.20購入)
    *解説目録より*
    タイ、カンボジア、ラオス、ベトナムを縦断し、民衆の生活と風俗、文化と歴史を透徹した人類学者の眼で捉えた戦後の東南アジア研究の初の成果。

    ☆梅棹忠夫さんの本(既読)
    「文明の生態史観」梅棹忠夫著、中公文庫、1974.09.10
    「サバンナの記録」梅棹忠夫著、朝日選書、1976.01.20
    「狩猟と遊牧の世界」梅棹忠夫著、講談社学術文庫、1976.06.30
    「東南アジア紀行(上)」梅棹忠夫著、中公文庫、1979.06.10
    「日本とは何か」梅棹忠夫著、NHKプックス、1986.05.20
    「情報の文明学」梅棹忠夫著、中公叢書、1988.06.10
    「日本語と事務革命」梅棹忠夫著、くもん出版、1988.06.20
    「情報論ノート」梅棹忠夫著、中公叢書、1989.03.20

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著者プロフィール

1920年、京都府生まれ。民族学、比較文明学。理学博士。京都大学人文科学研究所教授を経て、国立民族学博物館の初代館長に。文化勲章受章。『文明の生態史観』『情報の文明学』『知的生産の技術』など著書多数。

「2023年 『ゴビ砂漠探検記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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