細雪 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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レビュー : 108
  • Amazon.co.jp ・本 (936ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122009912

感想・レビュー・書評

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  • 読了。
    昔ながらの関西弁(主に使われていたものは、船場言葉というらしい)で繰り広げられる、登場人物たちの繊細なやり取りにはっとさせられた。自分が本来持っていたはずの何かを失っていたのではないかと思ってしまう。
    昭和初期においてさえ「古風」と評される、雪子のように過ごすことはこの平成末期にはさすがに難しいのだけれども、日常で見る事のない美を見出して、素直に感動した。良い作品。またこの世界に浸かりたいので思い出した時に繰り返し読みたい。

  • 解説:田辺聖子

  • 蒔岡の家には四人の娘があり
    上のふたりはすでに片付いているのだが
    自由奔放な末の妙子と、物静かな三番目の雪子は行き遅れていた
    妙子はともかく、雪子の結婚が決まらないのは
    相手に恵まれないばかりでなく
    本家の口出しや、妹のスキャンダルに足を引っ張られてのことだ
    この時代、名家令嬢の恋愛問題がゴシップになったのである
    姉たち…とくに二番目の幸子は
    これを非常に不憫と捉えていたのだが
    しかし雪子自身、どこか結婚そのものを厭わしく思うふしがあった

    末の妙子は早くに父親と死に別れたため
    僻んでいるというのでもないが、「家」に対する情の薄いところがあり
    幼馴染と駆け落ちしたと思ったら
    身分違いの写真家といい仲になってみたりして
    二番目の幸子には悩みの種だった
    折りしも時局が三国同盟から対米開戦を臭わせつつある中
    仲のよかった隣のドイツ人一家は帰国してゆき
    それに自身の流産も重なると
    幸子の心はなにか足場を失ったようで
    そうなると、雪子のためにろくな縁談を用意できずにいることも
    ますます申し訳ないような気がしてくるのだった

    三番目の雪子は内弁慶で
    ひとりでよその人を相手にすると、すぐにどぎまぎしてしまう
    小娘ならともかく、三十すぎてのそんな具合は
    ちょっと尋常とは言えないかもしれないが
    それはひょっとすると
    落ちぶれかかってなお気位の高い蒔岡家の人々と
    それを眺める世間の人々のあいだで
    心が引き裂かれた経験を持っているからかもしれなかった
    大人としては何に対しても気を許せず
    子供のように立ちすくむしかないのだ
    そしてそう考えると、末の妙子は世間に対して闇雲だった
    「家」からの自立を焦って、さまざまな事業に手を出すも空回り
    前後不覚に陥って、理想と現実のギャップをごまかそうと
    いくつもの顔で男たちや姉たちを欺くようになっていた

    とまあ、そんなごたごたはありながらも
    みんなけっこう仲良くやっている話
    他愛もない日常の出来事を連ねて、ひとつの大河小説に仕上げている
    それは芥川龍之介が「歯車」のなかにしたためた構想であり
    また「筋のない小説」論争を呑んで出した谷崎なりの解答でもあろう
    近代日本文学の結論と呼んで差し支えないのではないか

  • 2017年11月8日に紹介されました!

  • 生活劇。
    昭和11年秋から昭和16年春までの大阪旧家の4姉妹物語。

  • 貞之助は、なんてよくできた婿なんだ。

  • 大阪船場の旧家にいた美女4姉妹の日常生活が、船場言葉で絢爛に描かれた小説。昭和10年代のありようが、徐々に落ち行く上流階級の4姉妹各々の生き様を通して伝わってくる。物語はとりわけ、芯は強いが当世風に馴染まず内気な三女の雪子を軸に進む。ぐずぐずと煮え切らない面には幾度も苛立ったけれど、そのゆったりとした時間感覚で四季折々の行事を楽しめる。何より一貫して爽やかな印象なのは、意見が異でも仲違いはしない、上品な血の繋がりが根底にあるからだろう。だからこそ、終わり方に衝撃を受けた。

  • 細雪上中下巻。上巻は昭和18年、中間は昭和22年、下巻が昭和24年と戦争を挟んで執筆、出版された。(文庫本で929ページの長編。)小説の時代設定は日本が先の大戦に突入する直前くらいの何かと先が怪しくなってきた時代。それでも世の中はそんなに深刻になるとはつゆ思わず淡々と回っていく。大阪の旧家蒔岡(まきおか)家は大層な羽振りであった先代当主がなくなり女ばかりの四人姉妹が後に残った。長女、次女は先代が存命中に縁談をまとめてもらい本家と分家をそれぞれ構えることになる。家には昔日の勢いは失われているものの、庶民とくらべると数段上質の生活を送りプライドも高い。それぞれ当主である長女・次女はかなり格式にも縛られている。でも次女幸子の方は縛られ方も少し緩やかではある。そういうところに居心地の良さを感じている三女雪子四女妙子は幸子の家での生活が気に入っている。三女雪子は美人だが内気なため婚期が遅れている。四女妙子は外向的で自分の手で稼ぎ自由に恋愛もする。そういう姉妹がそれぞれの性格を見せながらポリフォニーが織りなされていく。縁談、花見、芝居見物、お稽古毎、恋愛、病気、災害、外国人との交流などのイベントが走馬灯のように次から次へと現れては消えていく。特に大層な筋書きがある訳ではない。が、結構浸れる。

  • 世界にどっぷり入ってしまって、「ねー、こいさんがさぁ・・・」と話しかけそうになる。本の登場人物だった。
    図書館で借りたので手元に置きたい。
    何度か読み返すことになってしまうだろう。
    このユーモア・・・だれもウケなどねらっていない(はず、な)のだが・・・ものすごくおかしみがあるなぁ。。

  • 四姉妹が生き生きとして描かれていたことと、男性作家の割には女性の心理が事細かに描写してあって、嫌らしくもなく偏ってもなく、その筆力にさすが大谷崎と思わせられました。
    そして物語にはっきりと雅を出しているのが舟場言葉では無いでしょうか。太宰治の斜陽もそうですが、滅んでいく時が一番美しい、その様を見事に描き切っていると思います。
    最後、雪子のお腹の不調を感じさせながら終わる、というのをどう解釈したらいいのかわからないので再読したいけど、この量だと再読にも体力が要りそうです。

    物語の舞台では戦争の気配しかありませんが、この四姉妹は果たしてどう戦火を生き延びたのでしょう。(鶴子の子供は上の子らは召集されてそう)物語のその後を色々想像して楽しめる作品というのもなかなかないですね。

    (全)で買いましたがそれだと重いので寝ながら読む時腕が怠くなります。買うなら上中下での方が良いと思います。

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著者プロフィール

明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2018年 『父より娘へ 谷崎潤一郎書簡集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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