細雪 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 1009
レビュー : 108
  • Amazon.co.jp ・本 (936ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122009912

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。桐野夏生のデンジャラスを読んで、タイトルの優雅さと船場の美しい四姉妹の話という古典に心惹かれつつも結局いまになるまで未読のこちらをようやく読了。
    図書館でよそから取り寄せるので受け取るまで本人のボリュームを知らず、借りに行って重量にびっくり。読み切らないかなと思ったし、妙子以外は現代の目線からするとなんというかおしとやかすぎて何もおもしろいことはなく、ゆるゆると日記みたいな内容が三人称で書き連ねられているだけなんだけど、ページをめくる手が止まらず、最後の文章で「えっ!?止まらない下痢の一文で終わり?」と、思わず次のページが本当に白紙か確かめる次第。
    終始女性陣への観察眼が常軌を逸していて、批判する時には昼ドラの姑みたいないやらしい姑息な感じすらする。あっぱれ。特にこの最後の下痢の下り(ダジャレか)に嫁入り衣装の思い出などを混ぜるのもすばらしい。女を表す五行くらいの文章にあんなにぴったりなものがあったか。
    時代もあって差別的な見方もあるし結婚については特にしち面倒臭いことばかりだけど、そういう時代の資料としてとても面白い。ちょうど物語の終わりの雪子と同年代の時に読めてよかったのかもしれない。

  • 読了。
    昔ながらの関西弁(主に使われていたものは、船場言葉というらしい)で繰り広げられる、登場人物たちの繊細なやり取りにはっとさせられた。自分が本来持っていたはずの何かを失っていたのではないかと思ってしまう。
    昭和初期においてさえ「古風」と評される、雪子のように過ごすことはこの平成末期にはさすがに難しいのだけれども、日常で見る事のない美を見出して、素直に感動した。良い作品。またこの世界に浸かりたいので思い出した時に繰り返し読みたい。

  • 解説:田辺聖子

  • 文庫で900ページもを読ませてしまうだけの面白さ、当時の文化、記録としての面白さはある一方、淡々と日常がつづられ、なんでこんなにお見合い話が続くのか、今一つわからない。大垣や岐阜、豊橋といった身近な地名が出るとオッと惹きつけられたが。
    何より、結末が、なぜ、何ゆえこの結末なのか、900ページ読んで来て最後の一文がこれ!?と驚愕の締めくくりだった。谷崎ファンの方はまさしく谷崎らしいとのことだったが。谷崎文学研究の先生のレクチャーでは、これは赤痢にかかり、その後流産した妙子の運命を雪子もたどることを暗示している、また谷崎の悪魔主義でもあり、川端の描く「美しい日本」を描かなかった谷崎とも言っておられ、なるほどとは思ったけれど、やっぱりこの最後の一文は、えー!?と驚きの結文だ。

  • 蒔岡の家には四人の娘があり
    上のふたりはすでに片付いているのだが
    自由奔放な末の妙子と、物静かな三番目の雪子は行き遅れていた
    妙子はともかく、雪子の結婚が決まらないのは
    相手に恵まれないばかりでなく
    本家の口出しや、妹のスキャンダルに足を引っ張られてのことだ
    この時代、名家令嬢の恋愛問題がゴシップになったのである
    姉たち…とくに二番目の幸子は
    これを非常に不憫と捉えていたのだが
    しかし雪子自身、どこか結婚そのものを厭わしく思うふしがあった

    末の妙子は早くに父親と死に別れたため
    僻んでいるというのでもないが、「家」に対する情の薄いところがあり
    幼馴染と駆け落ちしたと思ったら
    身分違いの写真家といい仲になってみたりして
    二番目の幸子には悩みの種だった
    折りしも時局が三国同盟から対米開戦を臭わせつつある中
    仲のよかった隣のドイツ人一家は帰国してゆき
    それに自身の流産も重なると
    幸子の心はなにか足場を失ったようで
    そうなると、雪子のためにろくな縁談を用意できずにいることも
    ますます申し訳ないような気がしてくるのだった

    三番目の雪子は内弁慶で
    ひとりでよその人を相手にすると、すぐにどぎまぎしてしまう
    小娘ならともかく、三十すぎてのそんな具合は
    ちょっと尋常とは言えないかもしれないが
    それはひょっとすると
    落ちぶれかかってなお気位の高い蒔岡家の人々と
    それを眺める世間の人々のあいだで
    心が引き裂かれた経験を持っているからかもしれなかった
    大人としては何に対しても気を許せず
    子供のように立ちすくむしかないのだ
    そしてそう考えると、末の妙子は世間に対して闇雲だった
    「家」からの自立を焦って、さまざまな事業に手を出すも空回り
    前後不覚に陥って、理想と現実のギャップをごまかそうと
    いくつもの顔で男たちや姉たちを欺くようになっていた

    とまあ、そんなごたごたはありながらも
    みんなけっこう仲良くやっている話
    他愛もない日常の出来事を連ねて、ひとつの大河小説に仕上げている
    それは芥川龍之介が「歯車」のなかにしたためた構想であり
    また「筋のない小説」論争を呑んで出した谷崎なりの解答でもあろう
    近代日本文学の結論と呼んで差し支えないのではないか

  • 約10年振りに読みましたがやはり名作です。谷崎潤一郎の作品の中で一番好きです。雪子の見合いの話を中心に物語は進んでいきますが、雪子の心情が出てくるのは僅かで、それがまた色々な事を想像させてくれます。10年前の20代に読んだ時と30代の今では感じ方が違うのがまた面白い。40代になって読んだらまた違うのでしょうね。
    繰り返し読みたい作品です。

  • 2017年11月8日に紹介されました!

  • 生活劇。
    昭和11年秋から昭和16年春までの大阪旧家の4姉妹物語。

  • 貞之助は、なんてよくできた婿なんだ。

  • 大阪船場の旧家にいた美女4姉妹の日常生活が、船場言葉で絢爛に描かれた小説。昭和10年代のありようが、徐々に落ち行く上流階級の4姉妹各々の生き様を通して伝わってくる。物語はとりわけ、芯は強いが当世風に馴染まず内気な三女の雪子を軸に進む。ぐずぐずと煮え切らない面には幾度も苛立ったけれど、そのゆったりとした時間感覚で四季折々の行事を楽しめる。何より一貫して爽やかな印象なのは、意見が異でも仲違いはしない、上品な血の繋がりが根底にあるからだろう。だからこそ、終わり方に衝撃を受けた。

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著者プロフィール

明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2018年 『父より娘へ 谷崎潤一郎書簡集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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