- Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122011489
感想・レビュー・書評
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世の中には壮絶な体験や思いをしている人がいるんだな、
と改めて思った。
戦前、戦中、戦後と、
多く日本人妻が朝鮮半島に渡った。
彼女らの多くが、壮絶な人生を送っている。
なかんずく朝鮮戦争が、壮絶さに輪をかけた。
爆撃を受ける状況と
住んでいる地域に敵が攻め込んでくるそれとは、
後者の方が悲惨のレベルが何段階も上のようだ。
そんな壮絶な人生を送っている日本人妻を、
庇護している施設がある。
それが本のタイトルの施設だ。
この本が書かれたのは1984年、
すでに30年が経過したが、
その後、その施設はどうなったんだろう。
なお、この本は、
上坂冬子昭和史三部作 日本がしたこと、されたこと、
の一遍として読みました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
図書館で偶然目にして手に取った本。
日本では、先の大戦のことをテーマにした文学作品が、今この時代に出されることは皆無に等しいだろう。はるか昔のこととして捉えられているのか、すでに「歴史化」されていることと考えられているのか、あるいはタブーなのか。身近にそのことを「語ってくれる人」がいないことから、子どもの頃から事実としてはわかっていても、自分にとっては遠い存在であった。
実は、フィンランドとかかわりを持つようになってから、彼の国では第二次世界大戦が、独立戦争に次いで、未だに小説のテーマになり、そのときのあらゆる痛みや悼みが身近なところにあることに当初は驚いた。そして、今は、むしろ、先の大戦のことを過去のこととして、封じ込んでしまっている感のある日本の方がむしろおかしいのではないかと思うに至っている。
さて、この本。戦争や、国の体制の変化に翻弄された人々の現実が筆者の根気強い取材と聞き取り作業からまとめられたドキュメント作品だ。
一人ひとりは、穏やかに安心して生きていけることだけで幸せのはずなのに、職業・「為政者たち」の愚かな思いに右往左往させられてしまうことが、どれほどやるせないことか。個人の選択の自由があるとは限らない場面で、どれだけ自分の意志を通せるのか。そして、生きることに必死な時のことを時折考えることが大切なのではないかと思うのだ。 -
20091002-
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戦争が終わって始まった、知られざる地獄。取材熱心な著者の金字塔ともいえる作品。