水なき雲 (中公文庫 A 180)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 108
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (423ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122012271

感想・レビュー・書評

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  • 家族間で対話が不足しているがゆえの悲劇だと思った。
    半年後に結婚するので、相手に対する思いやりを忘れずにいきたいです。
    本の内容とは関係ないが、普段使わないデバイスで読んだので疲れた。
    この人の作品は本で読みたいかな。

  • まあまあかな。
    許しという著者のライフワークの主題は本書にはあまりない

  • 妹である母親と夫と息子二人の幼少期から受験期までの綿密で濃やかな日々にとても引き込まれた。古さは全く感じなかった。姉は狂気の母性を持ち妹は自己中心的。事故以来頭が悪くなったと言われる弟の自然な無垢さが眩しい。浮気をやめてくれと頼む優秀な兄の父親への根っ子の信頼が叶うと思えず読み進めながら苦しかった。

  • 以前この本のある一場面を読んで、軽い衝撃を受けました。
    「えっ!?三浦綾子さんがこんな事を書くなんて!」と。
    それはこの本においてとても大切な場面で、激しくネタバレになってしまうので、ここには詳しく書けないんですが・・・。
    他の作家が書くなら衝撃的は衝撃的でも「ふーん」くらいなもんですが、三浦綾子さんだからこその衝撃でした。

    大きな家に住み、立派な夫をもち、出来のよい子供をもつ、美しく聡明な姉。
    その姉に何かと対抗意識をもつ亜由子は、夫の浮気を知り激しい怒りをおぼえる。
    その際投げた枕がたまたま走ってきた次男の真二の足に当たり、真二は縁側から落ちて頭を強打する。
    以来、それまで利発だった真二はボンヤリとした子供になってしまい、亜由子は頭の良い長男の純一だけ可愛がるようになる。
    それでもいつもニコニコと笑う真二。
    そんな母親に純一は疑問をもち、その思いは段々と怒りへと変わっていく。
    さらに成長するにつれ、周囲の大人たち、そして従姉妹の俊麿の秘密を知り、純一は不信感と怒りを強くしていく。

    大きな家、立派な夫、出来た子供。
    形だけ揃っているのに、そこには愛がない。
    その実体は、対抗心と上昇意識の異常に強い妻と、それを見て見ぬふりしてやり過ごし浮気を繰り返す夫、そして心冷たい姉夫婦とそんな大人たちを冷たい目で見つめる子供たち・・・。
    お互いに思いやりをもたない関係は寒々しい。
    そこで唯一、人間らしくやさしい心をもつのが真二という少年の存在。
    だけど、その「やさしさ」というものを母親は全く評価しない。
    賢さというのは生まれもってのものもあるでしょうが、本人の努力によってある程度向上させる事ができる。
    そしてそれは目に見える形で本人に返ってくる。
    でも優しさなんて評価されないものをどうやって向上させられるだろう。

    こんな家庭にあっていつも犠牲にあうのは、その中で一番やさしい人。
    ニコニコ笑いながらも真二くんは心で泣いていたのだと思う。
    もうひとつのやさしい魂も・・・。
    生まれもって「やさしさ」をもっている人はそれだけで素晴らしい存在だと私は思う。
    人間にとって真に大切なものは何か?を問う作品です。

  • 身近にありそうな設定の家庭の物語。子ども、夫の悩み。表には出さないが、抱えている問題には、色々と共感できることが多い。

  • 常に人を羨ましがり、今の自分の生活に不満を持ち、そんな生活をしている女性の息子の目を通しての話。家に居場所の無い父親は不倫を装い、1人の時間を確保し、その真実を見抜けない母親は、裕福な姉を羨ましがり、優秀な甥に負けるなと長男に期待し、勉強の出来ない次男を馬鹿にし続ける。その上、義兄と不倫をはじめるなど・・・どこまでも救いようのない女性を母に持つ息子はそれでも母を捨てきれず。
    衝撃的なラストに息子との適度な距離を保つことの難しさと大切さを学んだ。

  • 平凡で幸せそうな家族なのにこんなにもそれぞれの葛藤があるのかと
    思える作品でした。

    サラリーマンの夫和朗とその妻亜由子。
    子供は男の子が二人、兄純一と弟真二の四人家族。
    物語は少年純一の澄んだまなざしをとおして、
    父と母の大人の世界を見つめながら進んで行きます。

    和朗は昔から浮気症だと思っている亜由子の目線で
    最初は語られるので、読者も和朗が悪いと思えますが、
    和朗には和朗の言い分があり、
    それがこの物語のキーワードになっていました。

    この小説は昭和58年発行で、そのころの世相がよくわかる作品です。
    夫婦にしてもこれは、まるで仮面の夫婦です。
    ギスギスした夫婦間でも子供のためにと、
    耐えて耐えて、取り繕っていた時代だったのでしょう。
    今では考えられない。
    恐らくこのような問題が夫婦間でおこれば、
    今ではすぐに離婚、ということになるのだろうなあ。

    父である和朗と母である亜由子の狭間で
    ゆれながら成長していく少年純一が
    自分たち子供の存在を主張し、
    母の誤解や父の寂しさを理解していくまでが
    三浦さん独力の文章力でせつなくも力強く書かれた作品でした。

    ただひとつ、私も「?」と思ったのは、
    あめん坊さんも指摘していた「三浦さんらしからぬ点」でした。
    おそらく、読んだ方にはすぐにわかるはず。
    そういう意味でも、異色の作品です。

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三浦綾子の作品

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