宇宙からの帰還 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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レビュー : 117
  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122012325

感想・レビュー・書評

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  • 印象的だったのは、宇宙船の中に閉じ込められた状態と、ハッチを開けて外に出たときでは、宇宙という空間への感じかたが全く違うということ。
    宇宙船の外に出たときにはじめて、自分の目の前に全宇宙があることが実感されるらしい。宇宙という無限の空間のどまん中に自分という存在が放り出されてあるという感じだ。
    完璧な静寂。無音の世界。
    そこに一人ぼっちでただ浮いている。下を見ると地球が在る。
    地球を離れて、はじめて丸ごとの地球を一つの球体としてみることができる。

    お前が見ているものは何なのか。お前と世界はどう関係しているのか。この体験の意味するところは何だ。人生とは何だ。人間とは何だ。

    私という個人ではなく人間として地球との関係を深く考える。

    “我々はどこにいっても結局は地球人なのだ”

    “宇宙からは、本質が見える。
    地表でちがう所を見れば、なるほどちがう所はちがうと思うのに対して、宇宙からちがう所を見ると、なるほどちがう所も同じだと思う”


    アメリカの宇宙飛行士たちの体験のうち、キリスト教の信仰、神の啓示などの宗教に関する意識の変容はかなり面白い部分だった。
    信仰心が篤いもの、信仰心を持っていないもの、信仰心がとりあえずあるもの。
    それぞれが、神の座である天空に昇ったとき、神とのかかわりにおいてどういう内的インパクトを受けたのか。

    アメリカはキリスト教国であり、大半はクリスチャンである。たとえば、キリスト教国の神に対する認識と、八百万の神という考え方を持つ日本で育った宇宙飛行士とでは、衝撃の大きさが全く違うだろうことは容易に想像がつく。
    著者・立花隆さんとの巻末対談で宇宙飛行士・野口総一さんは語っている。
    「自分には宗教的な目覚め、神の啓示といったものとは縁がなかった」
    さらには、こんなこともおっしゃっている。
    「宇宙飛行士黎明期のパイオニアたちと、物心つくころには人類が月面に到達していた現代っ子飛行士では、宇宙に行くこと自体のインパクトが違うかもしれない」
    確かに現代では、以前よりも宇宙に行くこと自体珍しい時代ではなくなってきたし、写真や映像などで情報を得ることができる。
    なればこそ、この『宇宙からの帰還』で描かれるアメリカの宇宙飛行士たちの実体験は、その時代に宇宙へいったものにしか経験できない貴重なものといえるだろう。もう誰にも経験出来ないドラマなのだ。

    とはいえ、宇宙から地球を眺めた「宇宙飛行士」皆が言葉は違えども、地球に対して「美しい」と実感している。そして宇宙から地球を見るという経験は、人を変えずにはいられないということを認識している。そこには時代や国籍、宗教など全く関係ない。人間と地球があるだけだ。

    「宇宙体験をすると、前と同じ人間ではありえない」

  • 「宇宙に行った」というのは、いかなる体験なのか? というノンフィクション。
    文庫でも1985年の刊行なのでかなり古い本なのだが、宇宙に行ったということが宇宙飛行士の内的変化から書かれており、古さを感じさせない内容だった。
    「これは特筆すべきことだと思うんだが、宇宙体験の結果、無神論者になったという人間は一人もいないんだよ」というある宇宙飛行士の表現が、この本を一言で言い表しているかと思う。

    この言葉は正確には、宇宙体験をしてから神を信じるようになった、という意味ではない。しかし、宇宙に行って宇宙体験をした宇宙飛行士の多くが「超越的なものの存在を信じるようになった」と語っているのはとても興味深かった。
    これは、宇宙から地球を見ることによって、自分の存在が「個」を超えた存在――より大きな包括的のものの一部でしかない、という意識を持つためらしい。

    宗教を信じる、という感覚は、私はよくわからない。しかし、それでも彼らが宇宙へ行ったことによって、一種の神秘体験をしたのだな、ということは伝わってくる。彼らの世界が変わったのではなく、認識が変わったのだ。
    おそらく、一番違うのはやはりスケールだろう。より大きなものに触れることによって、宇宙飛行士たちは自分が精神的な存在であることに気づかされたのかもしれない。

    当時科学の最先端にいた宇宙飛行士が「超自然的なものを感じた」と語るインタビューは、読んでいてとてもワクワクした。
    そしてこれは著者の立花さんも言ってあることだが、自分も純粋にその体験をしてみたい、と思った。彼らの言う感覚を、ぜひとも自分も味わってみたい!
    一般人でも宇宙に行けるようになるのは……いったい何年後、何十年後、あるいは何百年後のことだろう?

  • すごく面白い。興味深い。30年くらい前の本だけど、職業として宇宙飛行士してる方が宇宙で体験する感覚(?)は、今も昔も根本的に同じなんじゃないかなぁ

    宗教的には「神がいる場所」とされる空(宇宙)に、いまは科学やら工学やらを叩き込まれたプロ宇宙飛行士しか行けなくて、内面の変化を伝える術を持たないっていう着眼すごいなーって思った。
    本の中で触れられていた、
    「哲学者や詩人が宇宙飛行できる世界になったら、彼らは宇宙体験をどのように表現し、どのように大衆に伝えるのか」
    ってとこ!とても興味あります。


    読んでいて思ったのは、自分の行動がどんなであったとしても、それが直感的に正しいと信じる事ができ、かつ振り返ってみてもその決断が間違っていない… そういう瞬間にひとは自分の行動に神を見るんだなぁって思います。
    あと、「神はパターンである」って考え方。初めて触れたので面白かった。
    古来より成功確率の高いパターンを「神」という存在に重ね合わせるっていう。
    これ成功パターンだよね→これが成功パターンって決めたのは誰?→神だよ!!
    って流れ…
    不可解だけどしっくりくるもの、そしてそれがなぜしっくりくるのか…

    読んでる最中も、読了後も、夜空に浮かぶ月を見つけると、なんかえもいわれぬ気分になります!
    郷愁のような…?
    わたしの故郷は地球なんですが

  • この本はかなり前から知っていたが、どうしてもっともっと早く読まなかったんだろう、という悔いを強烈に感じた。
    一冊の本から、次から次へ読みたい本が出てくる。これはもう、しばらくの間、宇宙、哲学、宗教などの本に世界にさらに入っていかざるを得ない。宇宙を飛行していて、あたかも予期せぬ重力圏内に入ったように。

    記録 p272〜p274、p300〜p309、p312〜p325
    J.E. Lovelock “Gaia- a new look at life on Earth” Oxford Univ. Press

  • こんなにもワクワクした本は何年ぶり!知的興奮ってこれこれ!

    信じられないくらい興味深く、さすが立花隆。宇宙体験がそのひとの精神世界/宗教観にどういったインパクトを与えるかを紐解くというが、それを語れるのは宇宙飛行士だけである、故に本書は彼らへのインタビューが基調で進む。地球を"個体"として目視したことで、地球のローカル性をリアルに体感した唯一の人々。地球とは宇宙的ローカルでしかない。

  • 『火星の人』の次に読むと決めていた。宇宙飛行士の精神世界に踏み込んだルポは新鮮である、のに本書は自分が高校生の頃=昭和58年に刊行されていた。米ソのソ連も懐かしい響きだった。アポロ13号の緊迫感は映画のそれを上回った。後半での宗教に関する彼らの考えが素晴らしい。また現代の科学技術の限界に対しても「分からないものは分からない」という真摯な態度も好ましい。

  • 初めて読んだときは、とにかく衝撃だった。
    宇宙から地球を見るという経験は、人間の精神をここまで変えるのか。

    ともに宇宙を体験した宇宙飛行士たちが、お互いに語り合ったことさえなかったという精神変化。それをここまで率直に引き出す著者のインタビュー手腕に感服。立花隆というジャーナリストのすごさを感じた一冊でもある。

  • 20年前の本だが、book offで発見し読んだ。
    宇宙に行った人の内面的な変化についてインタビューを中心にかかれている。特に重点が置かれているのは神について。神や精神的な事についてまじめに、宗教的・哲学的・科学的に宇宙飛行士が述べている。その中で、宇宙飛行士に共通する意識として、地球への愛情と国家の争いの馬鹿らしさというのが印象的。また神とは宇宙に満ちるスピリチュアルな宇宙生命のようなものという考えはもっとも自分にしっくり来るものであった。手塚治虫の火の鳥の世界観との類似を感じた。

  • 「宇宙飛行士」という限られた人たちが「宇宙」で得た経験、その後の人生の変化に潰え、インタビューされた作品。前半の科学的説明から後半のスピリチュアル論にいたるまで、興味深く読むことができた。

  • 「宇宙を飛行しているスペースシャトル内の窓から地球を眺めると、言葉では表現できない底知れぬ感動に大きなショックを受けた」

    無事地球に帰還した宇宙飛行士全員が口を揃えてその言葉を吐く。人生観やその人間を変えるほど強烈な衝撃を受けて地球に戻って来る。
    精神的に大きな影響を受けたあまり、その後牧師になった者も何人かいる。

    一体彼らはそこで何を感じたのか。一体何が彼等を突き動かしたのか。誰もがそれを言葉で説明することはできない。謎である。

    もうひとつの謎。
    時おりシャトル内で見える一瞬の「閃光」。
    カメラのフラッシュのように白くパッと光る閃光を宇宙飛行士の誰もが体験する。しかし、その閃光は、据え付けられたカメラの中の被写体には一切映っていない。頭の脳の中では閃光を知覚している(眼の視覚で感じ取り、確かに記憶している)が、それが果たして一体何なのか、科学的には今もって解明されていない。全くもって謎である。

    宇宙には人間の理解を越えた何かが存在しているのか・・・。

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著者プロフィール

1940年生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、文藝春秋入社。66年退社し、東京大学文学部哲学科に学士入学。その後ジャーナリストとして活躍。
74年、『文藝春秋』誌に「田中角栄研究 その金脈と人脈」を発表。79年『日本共産党の研究』で第1回講談社ノンフィクション賞受賞。83年、第31回菊池寛賞、98年第1回司馬遼太郎賞を受賞。
著書に『中核vs革マル』『宇宙からの帰還』『「知」のソフトウェア』『サル学の現在』『臨死体験』『ぼくはこんな本を読んできた』『天皇と東大』など多数。

「2020年 『自分史の書き方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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