女帝エカテリーナ 上 (中公文庫 M 284-1)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122012592

感想・レビュー・書評

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  • 上下2巻の一大叙事詩。ヨーロッパ諸国に比べて近代化の遅れたロシアに、他国生まれでしかもクーデターで夫=皇帝を追い落とした人物が絶対権力を保持して近代化を進めたという事実にまずは驚愕します。しかも女性ですからね、この時代に!

  • 『大尉の娘』からの流れで、『女帝エカテリーナ』。没後10年を迎へたアンリ・トロワイヤの登場であります。

    エカテリーナ二世(最近の表記は「エカチェリーナ」が主流らしいが、ここでは本書の表記に従ふ。また原著では「カトリーヌ」になつてゐます)は、帝政ロシアの女帝。在位1762-1796。生誕名はゾフィー。ウルトラマンを助けに来る宇宙人とは無関係。

    元元彼女はロシア人の血を全く受け継いでゐないし、特別な家柄でもなかつたのですが、伯父に当るカール・アウグストなる人物がかつてピョートル大帝の娘(後の女帝エリザヴェータ)と婚約者だつたといふ関係がありました。カール・アウグスト自身は直ぐに死去してしまひますが。
    その縁で、エリザヴェータ女帝時代に、その後継者と目されたピョートル三世の嫁として白羽の矢が立つのでした。ゾフィーはエカテリーナとなり、ロシア正教に改宗します。しかしこの結婚生活は幸福なものではなかつた。

    エリザヴェータの死後、夫のピョートル三世が即位しますが、彼はプロシアの方ばかり顔を向け、ロシアの国益を無視する政策ばかりだつたので、民衆の不満は爆発寸前。エカテリーナは世論に押されるやうな形でクーデターを敢行、自らエカテリーナ二世として即位するのでした......

    いやあ、やはり評伝小説は面白い。可憐な少女時代から、権力の凡てを握るまで、エカテリーナはぶれません。目的のためには、あらゆる権謀術数も厭わない。しかし表面上は汚れ役から距離を置き傍観者を演じます。しかし愛人関係はだらしない。
    特に息子のパーヴェル夫妻に対する態度は、かつてエリザヴェータ女帝から自身に向けられた仕打ちそのもので、歴史は繰り返すとはよく言つたものであります。
    孫のアレクサンドルに権力の座を継がせる目的を達せないまま、自身は力尽きますが、死後数年経つて結局大望を実現してしまふところは、まるでドラマのやうな展開と申せませう。

    改めて、アンリ・トロワイヤは良い意味の通俗小説家だと勘考します。工藤庸子さんの翻訳も素晴らしい。否、別に原書と突き合はせて読んだ訳ではありませんがね、多分素晴らしいのです。うむ。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-717.html

  • 積読消化で、エカテリーナ二世の伝記。本人の回想録や書簡等を元に出生から大公との結婚を経てクーデターを起こし政治を仕切るまでが上巻。原註があるのに半分近く読んでから気づいた。
    ドイツ人の小貴族の娘だったゾフィーが大国ロシアを収めるようになるが、運半分実力半分という感じでロシアに来てからエリザヴェータ女帝が崩御するまでが一番大変な時期に思える。

  • 2019年3月2日に紹介されました!

  • 【最終レビュー】

    図書館貸出。

    キッカケは、地元・兵庫県立美術館で現在開催中の以下の展覧会での、最新フライヤーのタイトル

    〈大エルミタージュ美術館〉

    *詳細URL

    http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1710/index.html

    を創設したのが、著書のタイトル通り、彼女張本人というのがいきさつです。

    ◆目次

    *第一章:フィクヘン

    *第二章:旅路

    *第三章:目的に向かって

    *第四章:婚約式

    *第五章:結婚

    *第六章:処女妻

    *第七章:母と母性

    *第八章:はじめての政治的駆引

    *第九章:大芝居

    *第十章:愛と暗闇と裏切り

    *第十一章:ピョートル三世

    *第十二章:クーデター

    *第十三章:権力の座について

    *第十四章:香と血

    *第十五章:法律マニア

    彼女のモチベーションの根本にあるのは、この時代背景に関係なく

    [教育(学び・文化面を含める)=原点そのもの]

    数々の喜怒哀楽の歴史的出来事等に彼女自身

    翻弄されつつ、涙を流しながら、過酷な運命を目の当たりに遭遇していく中でも

    至って、常に、上記のシンプルなモチベーションを持ちつつ、芯の強さを根っこから持ち合わせていたこと。

    ラスト手前から、一層、明瞭で確かなものとして、表沙汰になっていくのが、鮮明に感じられました。

    後半に進むにつれ、展開的にも一波乱、ふた波乱と交錯し、あらゆる立場柄の彼等の策略の数々など、目まぐるしい中、彼女が政権を握っていく…

    そこまでの過程においても、丁寧に、一人一人の心情描写も並行し描かれています。

    何故、この展覧会を催す背景にある出来事の

    〈一つの伏線〉が張られていたので、それは、後編にて続きを読み進めるしかありません。

    〈感性の高さ・理性が備わっている・知的さ・観察力・判断力・明晰さ・気品さ・良識・現実家・着飾らない…〉

    こういった、周囲からの彼女に対する印象。

    本文で明記されていた

    [才気煥発]という言葉そのものに結びついていることを踏まえながら

    彼女を軸に描かれた

    〈人間ドラマ〉の世界観といった雰囲気が滲み出ている感じです。

    ひとまず、前編においては、このあたりでレビューを終えます。

    続きは、後編にて…

  •  ドイツ生まれ.ロシア正教の洗礼で、エカチェリーナに.

     ロシア社会に接するためロシア語、ロシア正教を学び、ベヴォールテールやモンテスキューら啓蒙思想家の哲学を身につける.

     夫を帝位から追い落とすが、その正当性は2点.
     1)ロシア正教を異端から守る.
     2)強い「カクカクたる」ロシア.

     上巻は帝室入り、ビョートロ大帝との結婚と結婚生活、クーデター、政権揺籃期を書く.
     このあと貴族への政策提示、改革が下巻のストーリー展開か.

     貴族を相手に、女帝が政権を維持した要素.啓蒙思想家としてのカリスマ性か.
     一部、貴族をして支持と理解の必然化をうかがわせる点が、示されている.地方役人の適正配置が必要なときに、元老院議員は「いくつ地域政府があるか」下問に答えられなかった一場面.
     なにやら、徳川吉宗をおもいおこさせたが、女帝の啓蒙思想ばかりではなく、「あるときは懐柔しあるときは断固たる態度をとる」「寛大でもあるが警戒もおろそかにせぬ二重の方式」(269p)を、カリスマ性の裏付けと理解しておきたい.

     本書を読みに、一定の既存知識が必要か.
     記載構造が緻密で、文脈を追い続けることと理解度には、いささかの乖離を生じやすい.
     その溝を、接続するには既成の理解がないと、なかなか取り付けない.

  • 4122012597 321p 1985・10・10

  • 皆さんはロシア史に興味がおあり?僕は全く無い。その僕が結構夢中になって、読み続けたのだから作者の力量は凄い。因みに上巻はエカテリーナ(ゾフィー)が生まれてロシアに嫁いでクーデターを起こしイヨイヨ即位するまで。
    狂言回し役のピョートル3世もいい味を出してます。恐らくですが、皇国の守護者の佐藤大輔氏も本著を参考にしてるんじゃないでしょうか?
    結構オススメです。

  •  エルミタージュの本当の主。ロシアという国は未だに彼女の前の時代から今に至るまで変わらない所があるのかもとも感じられる。

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著者プロフィール

1911年モスクワ生まれのロシア系フランス人作家。1935年に処女小説『ほの明かり』を発表して以来、2007年に95歳で没するまで精力的に小説、伝記、エッセイ等を発表した。日本でも多数の作品が翻訳されている。主な著書に、『女帝エカテリーナ』(中公文庫、1985年)、『ドストエフスキー伝』(中公文庫、1988年)、『バルザック伝』(白水社、1999年)、『プーシキン伝』(2003年)、『ボードレール伝』(2003年)、『ヴェルレーヌ伝』(2006年)、『フロベール伝』(2006年、以上、水声社)等がある。

「2023年 『モーパッサン伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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