西アジア遊記 (中公文庫 M 227-2)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122012974

感想・レビュー・書評

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  • 著者の本来扱う分野は中国に関して。
    メインの方の本も読んだことがあります。

    この本は前半は旅行記。
    やはり国が違えば本当に勝手も
    全然違うものですね。
    そしてどこの国も観光地が絡むと
    いろいろ人の欲も絡むもので。

    あと押し売りに近い人も出てきていますが
    著者のあしらい方が秀逸なのよね。
    ひたすら淡々とあしらうのです。
    あくどい手段でやるのは
    本当逆効果なのよね。
    しつこいで終わるということ。

    後半はトルコやシリア等の歴史に関して。
    やっぱり宗教は人の救いではあるけど
    時にその群れは人をかき乱し、滅ぼす。
    よりどころであるうちはいいけれどもね…

    一方で蒙古の民は確かに野蛮だったけど
    その侵略に宗教は持ち込まなかったのよね。
    これって何気に大きいことだと思いました。

  • 1986年刊行(第一部底本1944年刊行。二部は同じか?)。
    著者は京都大学名誉教授。


     いわゆる中東・北アフリカ諸国の多くが未だ欧州諸国の植民地・委任統治下にあった1930年代。
     若き東洋史家であった著者は、西洋史(ヨーロッパ史)と東洋史(中国、東アジア史)の狭間にあった中東・西アジア諸国を廻った。そこで見出したのが、中東・西アジア諸国は、西洋と東洋との結節点として、世界史的意義を有していること。
     この旅を紀行文風にまとめたのが第一部である。
     また、第二部は簡明な中東史である。

     本書の刊行時とは異なり、著者が歴訪した1930年代と言えば、イスラエルは建国する前。また、エジプトは実質的には未独立であり、さらに委任統治下の国も多く、英仏の支配が色濃く残る。そんな時代である。

     一方の日本に眼を向けてみよう。1930年代の日本は、いわゆる15年戦争期にあたっており、欧州(特に英仏)への冷やかな目線が感じられるあたりは、本書の時代相であろう。
     そのためだろうか、流浪のユダヤ民族への共感、強かに生きるアラブへの感嘆(がめつさに辟易しているところもあるが)も随所に感じ取れそうである。

     そして、時代から取り残された、かつての交易中心地であるシリア。
     ここに視点を合わせるあたりが唯の紀行文ではない歴史家としての目を感じさせる所以だ。

     とはいうものの、第二部は、今読むと、さほど突飛でも、特殊でもない西アジア史の素描でしかないとは思う。やはり第一部が肝であろうか。

  • <a href="http://www.bk1.co.jp/product/00403832"><B>西アジア遊記</B></a><br>(中公文庫)<br> 1986.2<br><br><br>ご多分にもれず品切・絶版。<br>中国史研究者として有名な宮崎先生が、昭和12年(1937年)<br>トルコ〜シリア〜レバノン〜イラク〜パレスチナ〜エジプトを旅した記録。<br><br>第二部は「西アジア史の展望」と銘打って<br>より高い視点から西アジアの歴史を通史的に述べています。<br><br>古いものなので、文章も読みにくいかも…{04.11.30}

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著者プロフィール

1901-95年。長野県生まれ。京都帝国大学文学部史学科卒業。京都大学名誉教授。文学博士(京都大学)。文化功労者。専門は,東洋史学。主な著書に『東洋に於ける素朴主義の民族と文明主義の社会』(1940年)、『アジア史概説』全2巻(1947-48年)、『雍正帝』(1950年)、『九品官人法の研究』(1956年、日本学士院賞)、『科挙』(1963年)、『水滸伝』(1972年)、『論語の新研究』(1974年)、『中国史』全2巻(1983年)ほか多数。『宮崎市定全集』全24巻+別巻1(1991-94年)がある。

「2021年 『素朴と文明の歴史学 精選・東洋史論集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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