私のスイス (中公文庫 M 7-12)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122015289

作品紹介・あらすじ

女ひとり、4千メートル級のアルプス踏破を楽しむ著者。氷河にはさまれた村や、雪に覆われた峠で、観光と銀行と中立の国スイスの素顔を発見し、資源のない国の繁栄と平和が、私たち日本人に示唆するものを考える。

感想・レビュー・書評

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  • どこへも行けない昨今、文字の旅行という趣向で読みました。

    著者も言っていらっしゃいますが、美麗写真の一枚もなく、犬養さんの色鉛筆画(とても上手)と、ほんとに文字ばかりの素晴らしく峻厳なアルプスの描写・旅行案内・スイスの国の歴史を400ページ近く、微に入り細を穿つように書き綴ってあるのです。

    犬養さんが恋した「スイス」、アルプスが美しいばかりじゃない、なるべくしてなった強靭な国のかたちを冷静に分析し、またそのことからの人の生き方暮らし方を解いてくれます。まさに犬養節の炸裂です。

    さて、「プロローグ」を読み「ブリークの宿」という気持ち和むエピソードがあり、始まった本編「西南の谷」

    *****

    ​フランスから、スイス・アルプスに入る最も早く且つ快適な列車ルートのひとつは、パリ・リヨン駅発ディジョン経由ヴァロルブ(国境税関駅)を過ぎローザンヌに降り、湖畔づたいにフランス・シャモニイ行き電車の出るマルティーニを通りさらにスイス・ヴァレイ州首都シオンからツェルマットの基地ブリークに至る、ヴェニス・ミラノ行きヨーロッパ特急(TEE)「シスアルピン」利用のそれである。

    *****​

    ​観光ツアーの「インターラーケン、ユングフラウ」しか知らないわたしには、パリ・リヨン駅とかローザンヌはともかく、ヴァロルブ、マルティーニ、シオン、ブリークなど、「どこ?どこ?」と地図と首っ引きになりましたね。

    そう、地図帳がなけりゃ文章だけでは何が何やらわからない、よくある簡単地図も添付してないのだから。(必要最小限のスイスの産物や大まかな地形図はあるが)しかし、それが著者のいいたいこと「自分で地図を読め」なのです。つまり、永世中立国というスイスの成り立ちを知るには、自律を身にもって解れということ。読み終わると「しっかりしなきゃ」と背筋が伸びるのであります。

    ま、旅行にいけないから代わりに読んだつもりが、永世中立国スイスの歴史的な地理を学んでしまったと思い知るのです。文字の旅行案内、しかも高級版だったのです。

  • 自分のアイデンティティはどこにあるのか、考えさせられる。

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著者プロフィール

1921-2017。評論家、エッセイスト、難民支援活動家。著書に、『聖書を旅する』(全10巻)、『お嬢さん放浪記』『こころの座標軸』など。難民支援活動の一環に〈犬養道子基金〉を創設した。

「2021年 『やさしい新約聖書物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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