サイトムさんの感想
2015年11月22日
主に16世紀のスペインについて書いた本である。 グラナダ陥落(1492年)にはじまり、コロンブスの航海、カリブ海の征服と、奴隷狩りとエンコミエンダ制の酸鼻、ラスカサス、カリブ海の社会実験、メキシコの征服、メキシコで『ユートピア』を実現しようとしたバスコ・デ・キエロガの事跡、スペインで植民地のことを思索したフランシスコ・デ・ビトリアの事跡にくわしい。ビトリアは、普遍的な人類社会の法について思索し、グロチウスの国際法の先駆けとなった。 また、世界の果てには怪物がすむという中世人の世界像が17世紀まで影響を及ぼしていること、「不死の泉」「シボラの都」「アマゾンの国」などの騎士道小説や伝説をアメリカにいったスペイン人が信じて、探索していたこと、差し迫った世界の滅亡をまえに、キリスト教を宣教せねばならないと当時のスペイン人が思っていたこと、エラスムスの人文主義が1530年代をピークにスペインで力をもっていたことなどが書かれている。カリフォルニアが女戦士(アマゾン)の名前であるなど、細部も興味深い。
増田義郎 ますだ よしお 1928年、東京生まれ。東京大学文学部卒業。東京大学名誉教授。専門は文化人類学、イベリアおよびイベロアメリカ文化史。『大航海時代叢書』(全42巻 岩波書店)の刊行を推進。主な著書に『インカ帝国探検記』『黄金の世界史』『太平洋』など。訳書に講談社学術文庫『西太平洋の遠洋航海者』(B.マリノフスキ著)のほか、『ワルツへの招待』(ロザモンド・レーマン著)、『片隅の人生』(サマセット・モーム著)などがある。2016年没。 「2020年 『アステカとインカ 黄金帝国の滅亡』 で使われていた紹介文から引用しています。」