- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122016392
感想・レビュー・書評
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再読。
著者の杉山茂丸は、池田屋事件のあった元治元年(1864年)生まれ昭和10年没、明治大正昭和と生きて政界の黒幕と呼ばれた怖いおじさん、そしてなんとあの夢野久作の父。
そんな茂丸が、神と崇めるほど敬愛してこの伝記を記した児玉大将とは、長州(支藩の徳山藩)出身で、後年日露戦争では満州軍総参謀長として活躍した明治の軍人・児玉源太郎のこと。嘉永5年(1852年、ペリーの黒船が浦賀にやってくる前年)生まれの長州人ということで、私の中ではギリギリ幕末の人という認識。戊辰戦争当時まだ10代後半ながら下士官として従軍、五稜郭まで転戦して生還。
維新後は明治政府の陸軍将校として、佐賀の乱、神風連の乱、などの鎮圧に奔走、西南戦争当時は熊本鎮台の参謀として籠城戦を戦った。本書では西南戦争に結構ページが割かれているし、山川浩中佐のことを大変ほめてあったので満足。後半は日清戦争後の台湾総督時代のエピソードが多く、終盤はもちろん日露戦争、満州軍総参謀長として活躍、戦後まもなく脳溢血で急逝。55歳。
著者の杉山茂丸は児玉より12歳年下、自身が児玉と関わった思い出は一切書かず、ひたすらいかに児玉大将が立派であったか、ユーモアがあり公正で有能であったかというエピソードのみを連ねており、多少美談化しすぎのような気はするものの、よっぽど大好きで尊敬してたんだな、ということだけはひしひしと伝わってきます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
右翼の大人物であり政界の影の黒幕と謳われる杉山茂丸の著した、児玉源太郎の時代小説。というか評伝。
内容は、小説というか、講談的要素が強く、我らが大将・児玉かっこいい!!みたいな礼讃が度々出て来、内容も戦争ものというよりは、児玉源太郎による台湾統治がいかに鮮やかな政治手腕で行われていたのか、などメインに書いていると思う。
児玉源太郎といえば、日露戦争で活躍した奇謀策謀の天才参謀として知られているが、杉山がこの小説を書いたころはまだ戦争が終わってまもないころなので、陸軍の機密文書は公開されていなかっただろうし、世間的にも日露戦争を分析できる学者はいなかったろうから、自然本書もそういう内容にならざるを得なかったのだろう。
杉山は児玉と知己の間がらだったそうだ。2人が直接やりとりするような内容は本書には出てこなかったけれど、杉山の描く児玉源太郎像は、おちゃめで、かわいらしく、あいきょうがある、ちっさいおっさん。というイメージで、当時の児玉を知る人物がそう書くのだから間違いないと思うが、ほんとうに児玉って可愛いvvv
大好きvvvなんて思いながら読みました。