スティル・ライフ (中公文庫)

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  • 中央公論社
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レビュー : 365
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122018594

感想・レビュー・書評

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  • 佐々井が語る、宇宙や星、素粒子、天気などの話に「ぼく」とともに引き込まれる。
    遠く果てしない世界が自分の中の世界と繋がっていくような……
    佐々井が語る星の話に「ぼく」は気づく。
    “自分の頭蓋の内側が真暗な空間として見え、頭上から降ってきてそこを抜けてゆく無数の微粒子がチラチラと光を放って、それをぼくは単なる空虚でしかないはずのぼくの脳髄で知覚し、そのうちにぼくというものは世界そのものの大きさにまで拡大され、希釈され、ぼくは広大になった自分をはるか高いところから見下ろしている”
    そう、まさにこれなの。
    こんな気持ちにさせてくれる。
    「理科っぽい」話を池澤夏樹さんが文学にすると、こんなに美しく幻想的になるんだ。

  • タイトルの「スティル・ライフ」って画材の静物、あるいは静物画という意味なんですね。 そっか、うん、確かにこの物語そのものがひっそりとしながらも存在感のある静物、なんだなぁ、と納得です。.
    先日読んだ、朝日新聞のコラム集「終わりと始まり」がよかったので、芥川賞受賞作である「スティル・ライフ」も読んでみようかな、と。(#^.^#)

    染色工場でアルバイトをする青年が主人公なのだけど、芯に硬いものと柔軟なもの、二つを兼ね備えているような彼が好きでした。

    池澤さんって、理系の村上春樹って言われている人なんですって。
    うん、なるほどね・・・・。(#^.^#)


    で、このお話に出てくるメインキャラは ぼく と、アルバイト仲間の佐々井。
    二人とも、リアルな世界からちょっと離れた所に身を置いて、でも、そんな自分が結構気に入ってたりするところが似てるかな。
    落ち着いた話しぶりや、じっと何かを見つめる姿勢が静かに私の中に入ってきて、気もちよく読めました。

    で、お話のヤマは、突然佐々井から持ちかけられる“仕事”の話。



    ネタばれです。


    なんと、佐々井は8ケタ(って〇千万だよね)の横領犯で、でも、そのお金には手をつけないまま、もうすぐ時効を迎える、という設定。
    そのお金を資金にして、株取引で利益をあげ、それを利子としてつけ元本も返す、という。
    一攫千金といった株の儲け方ではなく、地道に売り買いをして利益をあげていく、という過程も面白かったし、佐々井が残していったプロジェクターや山、川、星などの写真を一人で見る ぼくもよかったです。

  • 紀伊国屋書店が実施していた『本のまくら』フェアで手にとった一冊。 『生物と無生物の間』を読んで以来、理系の人が書く小説を読んでみたかったけど、まさしくこれ!って感じで言葉のチョイスが絶妙でした。 良い本に出逢えたなー☆

  • 公金横領の犯人の仕事を手伝う、ロシア人からスパイの誘いがある、派手な設定なのに、静かに、美しく進む物語。本の周りに人がひとりおさまる位の球状の静寂があって、本を手に取り読んでいる間はどこにいても周りの音から遮断される、そんな想像をさせられてしまったよ。続きが気になるけど、それは重要じゃないんだろうな。
    誕生日の贈り物。感謝。

  • 久しぶりに読み返しましたが、相変わらず素晴らしい小説でした。この小説は僕にとって「かすかに光る微小な天体」として、高い軌道の上に確かに存在し続けています。

  • 福永武彦から辿り、初めて読んだ池澤作品。
    凄く独特の世界観を持っており、友人や親子同士の日常的な場面にもフワフワとした非日常感が漂い、読んでいると何だかノスタルジックな気持ちになってしまう。
    大きな事件が起こるわけでも無く、刺激的な人間関係が描かれているわけでも無いのに、何処か詩的で流れるような文章が、スルスルと心に流れ込んできて、どうにも心地よい。
    ストレスを抱えた時、何も考えずにこの作品を読み、気持ちを中庸に戻せたら。

  • 読み始めたきっかけは、ウェブ上の誰か全く知らない人のブログ上でのレコメンド。普段天邪鬼な私が、なぜか素直に読みたい衝動にかられすぐに書店へ駆け込んだ。

    多分、おそらくだが、この本はこれから何十年も、ずっと私の書斎の片隅に居続けてもらうことになる予感がしている。

    ページをめくり活字を読むことで体感できる独特の世界感は、これが宇宙世界なのか精神世界なのかよくわからないけれど、紛れもなく私の感受性と想像力をより一層、押し広げてくれた。

    何つったて、詩的センスのかけらもないこの俺様、営業畑のサラリーマン35歳が勤務時間中のほんの僅かな休憩時間にもかかわらず、無性に改行なんかしつつレビューを書きたい衝動に駆られているのだから間違いない。

    本書は「スティル・ライフ」と「ヤー・チャイカ」の短編2部構成。多くの書評や引用がスティル・ライフを高く評価する一方、私は片割れの世界観がとても心地良く感じた。

    ヤー・チャイカ…わたしはカモメ

    世界初の女性宇宙飛行士のワレンチナ・テレシコワが宇宙で発した最初の言葉

    小説のストーリーにまるで関わりを持たないこの言葉が、気がつけば全ての登場人物の生き様に重なる。

    共感とか腹落ち感の、全く外側にある読んだ者のみぞ知る不思議な読了感。

    1988年発刊の本書が、2018年の現代に未だ平気に革新性を投げつけてくる。心地よく心地よく。

  • ステイルライフ:まだこの作品を超えるような池澤夏樹の小説には出会えていない。独特の雰囲気と手ざわり感。

  • 難しい。たぶん 自分の 内なる世界 と 外の世界 の 2つの世界を目線を変えて 描いた小説2編。タイトルに 意味があると思う

    「スティルライフ」は 静止画の意味。星や外の世界を 静止画として 自分の内なる世界と別物として見る目線。小説の中での 佐々井の役割=外の世界を暗喩

    「ヤーチャイカ」は ロシア女性宇宙飛行士のコールサインを意味。宇宙(外の世界)から 自分の内なる世界を見る目線。小説の中での 恐竜の役割=自分の内なる世界の変化を暗喩

  • ものすごく不思議な読書体験。こういう本に出会えるから、読書はやめられないなあと思う。二作目の『ヤー・チャイカ』が好き。二度目を読むときに、感じ取れることが増えてるといいな。

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プロフィール

一九四五年、北海道帯広市生まれ。旅と移住が多く、ギリシアには七五年から三年間滞在。小説、詩、評論、翻訳など幅広い分野で活動する。著書に『スティル・ライフ』(中央公論新人賞、芥川賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『花を運ぶ妹』『カデナ』『光の指で触れよ』『世界文学を読みほどく』『アトミック・ボックス』等多数。また池澤夏樹=個人編集『世界文学全集』、同『日本文学全集』も多くの読者を得ている。

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