スティル・ライフ (中公文庫)

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  • 中央公論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122018594

感想・レビュー・書評

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  • 佐々井が語る、宇宙や星、素粒子、天気などの話に「ぼく」とともに引き込まれる。
    遠く果てしない世界が自分の中の世界と繋がっていくような……
    佐々井が語る星の話に「ぼく」は気づく。
    “自分の頭蓋の内側が真暗な空間として見え、頭上から降ってきてそこを抜けてゆく無数の微粒子がチラチラと光を放って、それをぼくは単なる空虚でしかないはずのぼくの脳髄で知覚し、そのうちにぼくというものは世界そのものの大きさにまで拡大され、希釈され、ぼくは広大になった自分をはるか高いところから見下ろしている”
    そう、まさにこれなの。
    こんな気持ちにさせてくれる。
    「理科っぽい」話を池澤夏樹さんが文学にすると、こんなに美しく幻想的になるんだ。

  • タイトルの「スティル・ライフ」って画材の静物、あるいは静物画という意味なんですね。 そっか、うん、確かにこの物語そのものがひっそりとしながらも存在感のある静物、なんだなぁ、と納得です。.
    先日読んだ、朝日新聞のコラム集「終わりと始まり」がよかったので、芥川賞受賞作である「スティル・ライフ」も読んでみようかな、と。(#^.^#)

    染色工場でアルバイトをする青年が主人公なのだけど、芯に硬いものと柔軟なもの、二つを兼ね備えているような彼が好きでした。

    池澤さんって、理系の村上春樹って言われている人なんですって。
    うん、なるほどね・・・・。(#^.^#)


    で、このお話に出てくるメインキャラは ぼく と、アルバイト仲間の佐々井。
    二人とも、リアルな世界からちょっと離れた所に身を置いて、でも、そんな自分が結構気に入ってたりするところが似てるかな。
    落ち着いた話しぶりや、じっと何かを見つめる姿勢が静かに私の中に入ってきて、気もちよく読めました。

    で、お話のヤマは、突然佐々井から持ちかけられる“仕事”の話。



    ネタばれです。


    なんと、佐々井は8ケタ(って〇千万だよね)の横領犯で、でも、そのお金には手をつけないまま、もうすぐ時効を迎える、という設定。
    そのお金を資金にして、株取引で利益をあげ、それを利子としてつけ元本も返す、という。
    一攫千金といった株の儲け方ではなく、地道に売り買いをして利益をあげていく、という過程も面白かったし、佐々井が残していったプロジェクターや山、川、星などの写真を一人で見る ぼくもよかったです。

  • 何回も何回も読んで心を浄化したい小説です。明晰な言葉を使う中に、人間として生きる優しさが込められています。
    独特な世界観ですが、アルゴリズムを日常で考える事が好きな方にはときめくものがあると思います。

  • 池澤夏樹の作品を読むのはこれが初。
    今まで読んで来た作家さんの誰にも似ていない独特な世界観の文章を書かれる方だなと感ました。
    特に「スティル・ライフ」は読んでいると周囲の音が吸い込まれ静寂に包まれていくような不思議な感覚に陥りました。
    「ぼく」の語りはとてもシンプル。
    淡々と進んで行くように見える語りの中に、時折美しさを放つ一文が静かに現れる…
    その美しさに何度もはっとさせられました。
    しかし、ストーリーの展開はやや淡白な感じがします。
    ストーリーよりも言葉や表現の美しさに魅力を感じる人にハマりそうな小説です。

  • 村上春樹モドキだなという初見を反省しなければならない。確かにその雰囲気はあるが、小説が引き込む世界観において、本著は、例えるなら北欧家具でインテリアを揃えた静かな部屋に誘って人生の味わいを与えてくれるような、そうした良い意味での雰囲気小説だ。詩的と言っても良いかもしれない。抑揚のない日常の怠惰。人生とは余暇の付き合いだとでも言いたげな弛緩した時間。この緩さこそが、生きることの大事な意味なのかもしれない。そんな事をふと、読みながら。

  • 福永武彦から辿り、初めて読んだ池澤作品。
    凄く独特の世界観を持っており、友人や親子同士の日常的な場面にもフワフワとした非日常感が漂い、読んでいると何だかノスタルジックな気持ちになってしまう。
    大きな事件が起こるわけでも無く、刺激的な人間関係が描かれているわけでも無いのに、何処か詩的で流れるような文章が、スルスルと心に流れ込んできて、どうにも心地よい。
    ストレスを抱えた時、何も考えずにこの作品を読み、気持ちを中庸に戻せたら。

  • 紀伊国屋書店が実施していた『本のまくら』フェアで手にとった一冊。 『生物と無生物の間』を読んで以来、理系の人が書く小説を読んでみたかったけど、まさしくこれ!って感じで言葉のチョイスが絶妙でした。 良い本に出逢えたなー☆

  • 公金横領の犯人の仕事を手伝う、ロシア人からスパイの誘いがある、派手な設定なのに、静かに、美しく進む物語。本の周りに人がひとりおさまる位の球状の静寂があって、本を手に取り読んでいる間はどこにいても周りの音から遮断される、そんな想像をさせられてしまったよ。続きが気になるけど、それは重要じゃないんだろうな。
    誕生日の贈り物。感謝。

  • 久しぶりに読み返しましたが、相変わらず素晴らしい小説でした。この小説は僕にとって「かすかに光る微小な天体」として、高い軌道の上に確かに存在し続けています。

  • これも何度も読んでしまう本。「ほんのまくらフェア」という風変わりな企画(本の冒頭数フレーズだけがカバーに印刷され、著者名やタイトルはわからない状態で本が売られていた)で出会った。本書のフレーズは「この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。」
    初めて読んだ時は、理科っぽい話題を楽しんだり、響きだけで雨崎に通ってみたりといった登場人物の行動に共感を覚えたものの、全体として何が書いてあるかはさっぱりわからなかった。そのわからなさが楽しくて、何度も読んでしまった。
    何度目かわからない今回、ようやくこの物語の意味がわかってきた気がする。「スティルライフ」には静物画という意味があることを知って、文庫版の解説を読んで。まさにこの物語は、静物画を描くように世界の感じ方を表現するためにあったんだ。冒頭の一幕がそのことを教えてくれている。世界の、自然の動きをいきいきととらえたい人に効くお話だと思う。

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著者プロフィール

池澤夏樹(いけざわ なつき)
1945年、北海道帯広市生まれ。1964年に埼玉大学理工学部物理学科に入学し、1968年中退。
小説、詩、評論、翻訳など幅広い分野で活動する。著書に『スティル・ライフ』(中央公論新人賞、芥川賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『花を運ぶ妹』『カデナ』『光の指で触れよ』『世界文学を読みほどく』『アトミック・ボックス』等多数。また池澤夏樹=個人編集『世界文学全集』、同『日本文学全集』も多くの読者を得ている。旅と移住が多い。
2018年9月から、日本経済新聞にて連載小説「ワカタケル」を連載。

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