日の名残り (中公文庫)

制作 : Kazuo Ishiguro  土屋 政雄 
  • 中央公論社
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本棚登録 : 185
レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122020634

感想・レビュー・書評

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  • 英国民の英国民による英国民の為の…?

    ふと、ノーベル文学賞の選者って英国人が多いのかしら?なんて、筋違いの憶測がよぎってしまいました。(笑)



    全編を通して、
    ダーリントン・ホールという舞台で繰り広げられる当時のイギリス貴族の生活、そして真の名士に仕える執事という者の矜恃がヒシヒシと伝わって来る。


    そしてさらに、第一次世界大戦後のヨーロッパ各国の立ち位置や、歴史を左右する駆け引きが息詰まる様な緊張感を伴って描かれている・・・
    ただのおセンチな恋愛小説
    (๑>◡<๑)


    物語は、ダーリントン・ホールで長きに渡って執事を務めるスティーブンスが、思いがけず現在の雇主・ファラディから提案された旅に、あれこれ悩んだ末に出発する所から始まる。

    兼ねてから抱えていた二つの懸案…

    一つは人員不足によるミスの増加傾向。
    二つ目は過去に数十年間、優秀な女中頭として共に働いた後結婚退職した、ミス・ケントンの手紙から推察される復帰の可能性…

    を解決すべく(大義名分)スタートした旅は、
    図らずもイギリスという国、そして執事という職業の本質を見直すと共に、前雇主・ダーリントンと紡いだ輝かしい歴史の数々を追想する旅となる。

    様々なアクシデントや思わぬ幸運に見舞われながら、ミス・ケントンの住むリトル・コンプトンへ向かう道すがら、
    そもそもミス・ケントンの手紙から推察した不満や虚無感、そして復帰への可能性が独りよがりのものではなかったか…
    という疑問に思い当たる。

    果たして
    再会の齎したものとは・・


    すべからく、
    求道者というものは、
    その道に関してはズブの素人… というお約束。


    ◯スティーブンス
    古き良き英国の伝統を引き継ぐダーリントン・ホールの名執事。
    ◯ファラディ
    ダーリントン亡き後、ホールを買い取ったアメリカの富豪。軽妙なジョークで、習慣の無いスティーブンスを戸惑わせる。
    ◯ミス・ケントン(ミセス・ベン)
    ダーリントン時代の極めて優秀な女中頭。何かとスティーブンスに突っかかる。結婚を機に退職。
    ◯ダーリントン卿
    ダーリントン・ホールの元オーナー貴族。
    真の英国紳士。二つの大戦を通して、ヨーロッパの趨勢に深く関わった名士。
    だが、戦後ナチの走狗という汚名を着せられる。

  • 執事の旅行そして一人語りと追憶

  • 5

  • いろいろと考えさせられながらメインのストーリーをたどっていった。
    落ち着いたゆっくりした流れが進んでいって行き着く所へたどり着くような終わり方で、読み終えてからの満足感が高い。
    こうゆうのは好き。

  • 読み助2018年8月10日(金)を参照のこと。 http://yomisuke.tea-nifty.com/yomisuke/2018/08/1994-9d5f.html

  • 長い時間手入れされてきた、上質なオークのよう。
    日本生まれの彼が日本語でこの本を書いていたら、
    どんな味わいになったんだろう。

  • 主人公の世代のこともあるのでしょうか。
    カズオイシグロの作品のなかでも、とりわけしっとりとした美しい作品です。

  • イギリスの老執事が、古き良き時代を回顧する物語。
    最後の最後になって、タイトルの意味が分かった。
    なんだろう、最後の最後に、じわっと感動が押し寄せてきた。
    真に価値のあるもののために微力を尽くそうと願い、それを試みるだけで十分だとは、生きて生き抜くだけで人生は素晴らしいんだと気づかせてくれる。そののち迎える夕方の時間が人生でいちばんいいと思えるように、一日いちにちを大切に生きていきましょうというメッセージだとも思える。

  • 英国老執事スティーブンスはアメリカ人の新しい主人から
    勧められるままに小旅行に出る、最終目的は以前勤めていた
    有能な女中頭ミス・ケントン(既婚)に会うこと

    道中で「偉大な執事とは何か」に思いを巡らせたり
    自身の父親の最後、過去の自分やミス・ケントン、
    以前の主人ダーリントン卿が歴史に翻弄されていく様
    について語られる

    旅なので途中寄り道したり、道に迷ったりもする

    最終目的を無事果たし終え、桟橋のベンチで思い出に
    ふけっていたスティーブンスは、偶然横に座った元執事から
    「夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。」と言われ
    過去の主人から解放され新しい主人のために
    アメリカ的ジョークを身に付けようと決心する

    しんみりとイギリス小説に浸ることができました

  • 最後の最後で解題に入る、みたいな風呂敷のたたみ方があまり好きではないのでどうかとは思った(同作者の「わたしを離さないで」もそうだが、演出としてわざとこの手法をとっているのはよくわかるのだが)。僕には「古き良き英国」も「品格」の何たるかもわからないし、スティーヴンスが執事としてとる職業的スタンスの素晴らしさも正直言って理解しかねるが、ある種の信念を貫くことがいかに純粋で歪んでいるかということ、そしてそれがどのような結果をもたらそうとも「日の名残り」を見つめそれが一番良いときであると信ずるしかないという人生の空虚さ、その二つがとても印象に残った。

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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