東海道戦争 改版 (中公文庫 つ 6-13)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122022065

作品紹介・あらすじ

東京と大阪の戦争が始まった。自衛隊の戦闘機が飛び、地上部隊は重装備で進撃、市民兵もぞくぞく参加してテレビ中継車がつづく。斬新な発想で現代社会を鋭く諷刺する表題作ほかの秀抜な処女作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 破茶滅茶だけれど笑い飛ばしてもいられない今日この頃。面白かったです。猫の話が好き。
    東京と大阪が戦争し始める表題作と、矛盾ばかりの政治家の記者会見にロボット記者が耐えられなくて爆発する「やぶれかぶれのオロ氏」、総花学会を母体とする恍瞑党政権(名称がもうアレ)が敷く全体主義社会「堕地獄仏法」の風刺がとても凄いです。「やぶれかぶれの〜」なんて今ではよく見る話法だけど、文章になるとやっぱり意味がわからん。
    地下での盲目の白い猫たちと白い鰐の死闘と荘厳な結末「群猫」と、コバルトブルーの車『お紺』との別れ「お紺昇天」が特に好き。お紺ちょっと…色気がすごい。

  • 我が家には、師匠が宝物として大事に保管している新潮社の筒井康隆全集があって、この短編集に収録されている作品のうちいくつかは、全集で読んだことがあります。筒井康隆の短編、ものすごい数ありますからね。
    ただ、こうして「筒井康隆の第一短編集」として復刊フェアで出されたものを改めて読むと、その鮮烈さに驚かされます。全編キレッキレ。1965年に発表されたんですよ、これ。今読むと、社会や人物の描き方には流石に若干の古さを感じるものの、その”攻撃力”はいささかも衰えていません。発表当時に読んだ人たち、驚いただろうなぁ。

    どの作品も基本的にワン・アイディア・ストーリーで、コンパクトなページ数でさくっと読めます。が、そんな必要最小限な枠組みの中で描き出される世界観の分厚さ、構成力の巧みさ、何よりも「目の付け所」の鋭さが、実に筒井康隆です。突き放したニヒリズムを漂わせつつも、時折垣間見える人間的な温かみがまたたまらない。うーん、やっぱり筒井康隆は短編が良いな・・・。
    洒脱なユーモアに溢れる作品、気迫に満ちたサスペンスフルな作品、いわゆる「バカSF」と、バリエーションあふれる作風の中で、鴨が一番好きなのは「群猫」の緊迫感あふれる美しい描写。特殊な状況下で進化した猫と鰐が戦う、というただそれだけの話なんですが、それだけの話を圧倒的な筆力で眼前に映像を繰り広げるが如く描き切る、このエッジィさ!最高にカッコいい!

    なお、初期の筒井康隆作品にしては珍しく(?)、そこまで過激なエログロ描写はありません。実は筒井康隆初心者にオススメしやすい作品集かもしれません。

  • SFの中に作者の思想や考え方が見え隠れする短編集。
    古い作品だが、今でも十分通用する点は流石という感じ。

  • 以下9編からなるSF短編集。
    ・東海道戦争
    東海道戦争つまり、東京と大阪の戦争に巻き込まれる展開にぐいぐい引き込まれました。戦争の悲惨さが、散々たる描写につながりますが、堅いことを考えずスプラッター娯楽として読むことをお勧めします。
    ・いじめないで
    人と電子頭脳の対峙を描いております。
    ・しゃっくり
    ある一定の時間を反復し続けるという話。辿り着くべき時間が到達しない場合、この作品どおり人間は自我を保つことができなくなってしまうかもしれない。
    ・群猫
    筒井版「ガンバと仲間たち」。面白いです。
    ・チューリップ・チューリップ
    うーん、これは過去を変えようとする男の物語なんだけど、よく分からないというのが正直なところ。とりあえず頭が痛くなってきた。。。でもドラえもんでも同じことやってるよね。文章にして読むとかくも気持ち悪いものだな。
    ・うるさがた
    人と電子頭脳の対峙による不都合その1。
    ・お紺昇天
    人と電子頭脳の対峙による好都合。結末としては、ハッピーエンドじゃないのですが、どこか心温まるものがありました。
    ・やぶれかぶれのオロ氏
    人と電子頭脳の対峙による不都合その2.
    ・堕地獄仏法
    最高です。この作品のためだけでも読んでほしいなあ。これフィクションだから言語統制の縛られることないという筒井御大の高笑いさえ聞こえてきそうな作品です。

  • 筒井氏の処女作品集。
    「堕地獄仏法」が興味深かった。
    未来予想図…今現在、随分近付いている気がする。

  • メディアを筆頭に日本がまだ元気だった頃の話。

    筒井康隆初期の短編集で、作者の年齢もあるんだろうけど、文章の雰囲気が若いし元気。

    でも1960年代に20代かそこらの処女作品集で、この内容は当時から才気走ってたんだろうな、と。

  •  筒井康隆,最も初期の短編集。1965年に早川書房より出版され,その後ハヤカワ文庫,そしてわたしの持っているこの中公文庫版(1970年第3版)。
     解説を書いている大坪直行氏は,当時,推理小説巨匠江戸川乱歩さんから,筒井康隆たちが載っている同人誌『NULL』を紹介されたと書いていた。昭和35年(1960年)のことらしい。その大坪さんは,筒井の小説について,次のように語る。

     つまり,ただのドタバタではなく,作者の意図する社会,文明に対する痛烈な戦いが作品の底に秘められていると思うからである。
     その上,氏独特のシュールレアリズムとリズムのあるスピードが加えられ,筒井康隆作品は開花していくのである。(本書,p.264)

     まさに,10代後半のわたしが筒井に入れ込んでしまった原因は,ここにある。痛烈な常識批判,シュールな展開で,いつの間にか筒井ワールドに誘い込まれているのだ。その後,筒井は,「差別」語(かっこつき差別)をめぐり「断筆宣言」をすることにもなるのだが,それこそ,善意の押しつけ,表面だけのきれい事と真っ向から対決したのだった。そこでまた,わたしの筒井に対する好感度も上がったというわけだ。

     さて,本書は,表題の「東海道戦争」はもちろんのこと,なかなか筒井らしい作品が並んでいる。一部を紹介しよう(書いていったら「群猫」以外全部になった)。

    「東海道戦争」は,前作の『48億の妄想』のように,マスコミの戦争好みを批判している。もちろん,日本の東西で戦争をするという設定もおもしろい。あなたはどっちにつく?
    「いじめないで」「うるさがた」「お紺昇天」は,人間が作った機械やロボットと人間との矛盾を描いたもの。「うるさがた」は,過保護な母親の姿にも重なったりして…。
    「しゃっくり」「チューリップ・チューリップ」は,タイムトラベラーものというか,ま,時間を扱った作品。両作品とも,どうなっているのか辻褄合わせをしている暇もなく展開していくので,あとでまた考えてしまう。「チューリップ」の落ちには,笑った。
    「やぶれかぶれのオロ氏」は,従順なロボットたちが首相に記者会見をするという設定。意地悪な質問をされないようにと人間を排除した記者会見なのだが,論理的思考を大切にする知能は,首相の論理についていけずに,しつこく矛盾を問う。まさに,自衛隊や非核三原則などに関する論理矛盾をつくような作品だ。
    最後の「堕地獄仏法」は,ソウカガッカイとコウメイトウの話。彼らが政権を握ったらどんな社会が待っているのかを描いている。こんな作品に描かれた当事者だと思われる人たちの中にも,読者がいることを期待するしかないな。

  • 感嘆しかない。
    27歳の筒井康隆の才能が満ち溢れている。
    風刺、ジョーク、人間の業や性。文章のどこを読んでも、引きつけられる。
    作家は歳を取っても作品は歳をとらない、その典型的なものと思う。

  • 後輩のお勧め。短編とは思えない読み応えと世界観!これは他の本も読まないと。

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4122022061
    ── 筒井 康隆《東海道戦争/堕地獄仏法 199412‥ 中公文庫》
     

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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