ある運命について 改版 (中公文庫)

  • 中央公論社 (1995年1月1日発売)
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  • 本 ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122024403

感想・レビュー・書評

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  •  一部昭和40年代後半から50年初頭のものもあるが、多くは昭和50年代後半に書かれた随想、エッセイをまとめた作品集。

     タイトルになっている「ある運命について」は昭和49年発表で、松原一枝『藤田大佐の最後』を読んでの感慨が書かれている。司馬はかつて藤田大佐の部下だったことがあった。この藤田大佐とは、終戦直後の満洲で起こった通化事件の関係者だったようだが(調べてみて分かった)、司馬はそのことに直接触れることはせずに、敗戦と言う崩壊の中での生身の人間の運命について考える。
     同じく「服従について」では、29年間も命令への絶対服従を貫き、ルバング島から生還した小野田少尉について考えを巡らせる。
      *この文章を読んで、横井さん、小野田さんと、残留日本兵発見のニュースを見た時代のことを思い出した。
     
     そのほか、広瀬武夫の文学的資質や、藤澤桓夫等と同人仲間だった長沖一が昭和5年に自らの入営経験を基に書いた軍隊小説のこと、自らの作品についての余談や知人についての思い出が述べられる。

     短い文章からも十分窺われる日本の歴史や地理に関する豊富な知識に学ぶことが多いし、自らの敬愛する人に対する温かな人物評は読んでいて気持ち良い。

     少し異質なのが、週刊読売に書かれた「若い訪問客」と「山姥の家」。一般常識からすれば「変わった人」とのやり取り。特に「若い訪問客」は、彼なりの論理の一貫性はあるのだろうが、そのあまりの非常識さがシュール過ぎる。

     

  • ▼かなり以前に読んだのですが、その時に感想を書き忘れたままで。かなり中身を忘れています・・・。

    ▼司馬遼太郎さんのエッセイ集。いちばん覚えているのは、巻末の「若い訪問客」。司馬さんのところに無心にきた若い男性が、まあ言ってみれば人生舐めてませんか?困ったもんだよ今時の若い人ってのも・・・というだけの一編なのですが、語り口が上手いので、珍獣に面した自然番組を見るような興趣。

    ▼その他、関西の作家の長沖一さんについて。あと、藤田さんだったかな?軍人さんの話なども、いずれ再読したいものです。

  • 司馬遼太郎氏(1923-1996) が、昭和47年から12年間に身辺風土、歴史に名を残した人物の運命を洞察し、書き留めた随筆集。 日露戦争で旅順口に散った海軍中佐<広瀬武夫(1868-1904)>のロシアと文学との関わりを論じている。 旅順要塞攻撃の軍司令官<乃木希典(1849-1912)>は、戦略・戦術の大敗北により6万人もの犠牲を出した。「戦後、国民の前で検討され解剖されることなく、壮烈悲愴という文学的情景が取って代り、ノモンハン、太平洋戦争という性懲りもない繰返しをやっていくもとになった」と嘆く。

  • 1984年の随筆集。江戸、明治、昭和時代の歴史背景や人物を掘り起こして、著者の人間観や感性が読み取れるような内容であったり、日本の歴史の細部を知れるよう内容になっている。難しかったが、興味を引く話が結構多い。著者の人間を観察する力がすごい。

  • 予備知識無しでページをめくり始めるとそれは短編集だった。

    「遠い世からの手紙」
    「歴史の風景」
    「同時代のひとびと」
    「身辺風土」

    と大きく四つにくくった副題を並べ、その中に全29編がそれぞれ並べられている。書名の「ある運命について」はその中の一遍のタイトルでありながら全体も内包する二重の意味になっている感があり妙なり。

    前半は「司馬作品 あとがき全集」とでも呼んでよいような内容で、ある程度の数の司馬作品を読了してから読むとお得感が倍増する仕組み。読了組として「坂の上の雲」「菜の花の沖」「胡蝶の夢」「燃えよ剣」「竜馬がゆく」「ひとびとの跫音」が、未読了組には「箱根の坂」「播磨灘物語」が挙げられ、これらについては近々にも挑戦して早々にまたこの記述に戻ってきたいと思わされた次第。

    司馬作品を離れた文章の側においては、終戦後とほうもない時間を経過してから帰還兵となった二人の名を挙げ、シバさんが彼らに対して思うことを語る部分も興味深かったが、インパクトがあったのは「山姥の家 ―人間を所有すること」という作品。戦前戦後を生き抜いたあるシバさんの知る女性に関しての徒然とした記述なのであるが、そのひととなりの強烈さにしばらく虜にされてしまった次第。

    全体的に読みやすくお得感満載。手元においてより頻繁に帰ってきたい。

  • ある運命について

  • 18/9/20読了

  • 司馬遼太郎の随筆集。とりとめのない感じだが、それぞれ含蓄が深く、理解しきれない部分も。

  • 歴史的人物から著者の親戚まで、人物絡みのエッセイ集。他作家の刊行物(全集の月報等)に寄稿したものもあり、そういうのは週刊誌用より難解。前者こそ著者が本当に書きたかったことなのかなぁと思ったり。でも後者の明快さこそ著者の魅力だよなぁと思ったり。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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