ものぐさ精神分析 (続) (中公文庫 き 3-4)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122025196

感想・レビュー・書評

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  •  岸田の理論は高い視点から文明や歴史を分析している。このため、臨床心理学とは異なる次元になっていて、「デタラメな絵を描いているだけじゃないのか?」という思いがよぎる。しかしそうではない。なぜなら、心理学自体が「絵を描く」ことに過ぎないからだ。カウンセリングとは、本人が思ってもいない角度から因果関係を構成し直す作業といえる。

    http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20100324/p6

  • [ 内容 ]
    <正>
    人間は本能のこわれた動物である―。
    人間存在の幻想性にするどく迫り、性から歴史まで文化の諸相を縦横に論じる、注目の岸田心理学の精髄。

    <続>
    人間の精神の仕組みを「性的唯幻論」という独自の視点からとらえ、具体的な生の諸相を鮮やかに論じる岸田心理学の実践的応用篇。
    待望の続篇。

    [ 目次 ]
    <正>
    歴史について
    性について
    人間について
    心理学について
    自己について

    <続>
    歴史と文化
    性と性差別
    人間について
    感情について
    作家について

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 著者の話術にはまっているのかもしれないが、面白い言葉がある。
    (ちなみに、これが精神分析なのかどうかはわからない)

    ○人間は、現実からずれた幻想のために働くからこそ、
    人間を強制労働に駆り立てることが可能なのであり、
    また、人間の労働は余剰な生産物を生みえるのである。

    言い換えれば、夢を見ることができる人間の能力のことを言っているのだろうと思う。
    希望の未来を自分のものとして描けるからこそ、
    大きく言えば、人間という動物が文明を持つことができたのだと思うのである。

    ○趣味がまずあって、後から仕事が成り立っている。無用が有用に先立っている。

    とあるから、まさに、一個人の夢や希望があって、それはその個人のものであって、
    そうであるからこそ、人が集まる”新”ができるのだと連想する。

    精神分析とは全く観点は異なるが、
    会社経営や、自身の関心領域であるマーケティングや製品開発とは、
    いかに一個人の夢や希望に多くの人間を共感の渦に巻き込むのか?というコトにつながるのである。

    ○流行を作り出す原理は極めて単純であって、あるものを変なものと感じる人々の感覚をマヒさせ、
    価値あるもの、もっていないと恥ずかしいものと感じさせればいい。
    何が普通のものであるかの絶対的基準は存在しないのだから、理論的にはどのようなものでも流行させることが可能である。

    というのであるから、実に面白い。

    まさにそうだ!とうなずけるところである。

    一個人の希望や夢が変なもので、でも、共感できるというのだから、
    その共感する環境条件づくりがマーケティング戦略ともいえるのではないだろうか。。。

    そして、それが共感されコモディティー化される。

    その他、いろいろあっちこっちと話は飛ぶので、
    乗っかる感じで楽しんで読み進めて行くといいだろう。
    が、一つ大事なことは、深刻になって読まないということである。気軽に、そんなものか・・・といった感じで読んでいくことをお勧めする。

    最後に、精神分析らしいところといえば、
    母親とのかかわり方、いわゆる、三つ子の魂百までのような話で、
    特徴的な歴史的文学者-芥川龍之介・太宰治-やらの精神分析が面白く、受け取りやすいので、
    自分自身においても、母親が自分自身の部分を表現していたことを感じ取る客観性を持たせてくれた一冊である。

    ps:「ものぐさ」というよりは、「ひねくれ」精神分析なんてことじゃないかと思うのですが…

  • 前作の持論を受け、更に多くのケースに当てはめた精神分析。

  • 某所読書会課題図書: 解説で日高敏隆が述べているように、「常識的言辞のびっくり仰天させられるどんでん返しが、次から次からとでてくる」論考が満載の本だ.「歴史と文化」、「性と性差別」、「人間について」、「感情について」、「作家について」と5つに分けて様々な論考が掲載されているが、同一人物がこのような特異な視点から物事を見ることができるのかと驚嘆した.最も頻出していた用語は「幻想」だと感じた.文化に関して考察した箇所で「いかなる文化的規範もそれに従わない反逆者、例外者を生み出す」は、気になった件の一つだ.

  • 前作よりも分かりやすくて読みやすい。それでいて砕けた感じもなく、読み終えた後もとてもスッキリした感じが残り、あらためて岸田秀の魅力を認識した。特に「性差別は文化の基盤である」「三島由紀夫論」「太宰治論序説」「集団と狂気」は面白いだけでなく、納得することが多い。この人は心理学者で人や国家、文化などを精神分析しているが、曖昧さがなく、とても理路整然としていると思う。そこが自分にとって魅力的に感じるところである。他の本も読みたくなる。

  • 『ものぐさ精神分析』の続編。前回読んだものが面白かったので、続編にも手を出してみた。

    個人的なお気に入りは「人間について」の「性格について」と「価値について」、「作家について」の「サリンジャー『ライ麦畑で捕まえて』について」。

  • 自己嫌悪の項だけでも価値が高い

  • 高二の頃、現代文の授業でよく扱われたのがきっかけで出会った作品。確か感想文か何かの課題図書としても挙がっていたために購入したと記憶している。当時は難しくて読まないまま放置。そして3年の月日が経ったのである。<BR>


    自我を手に入れた人間は動物が本来あるべきである自然から乖離した状態になった。「自己」という人間の根幹にあること自体「幻想」であり、人間の抱く価値観や気持ち、自己の永続性、欲望、劣等感などの考えや感情などは「すべては幻想である」という独自の前提で一貫して書かれている。親子関係、アメリカ、タテマエとホンネ、しつけ、文明、恋愛や性に至るまで、人間の様々な側面を明晰に解釈している。どの話も、読んでいて「なるほど!」と納得してしまうから面白い。

  • 続も読んでしまった。こちらは性についての叙述が充実。

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著者プロフィール

精神分析者、エッセイスト。1933年生まれ。早稲田大学文学部心理学専修卒。和光大学名誉教授。『ものぐさ精神分析 正・続』のなかで、人間は本能の壊れた動物であり、「幻想」や「物語」に従って行動しているにすぎない、とする唯幻論を展開、注目を浴びる。著書に、『ものぐさ精神分析』(青土社)、「岸田秀コレクション」で全19冊(青土社)、『幻想の未来』(講談社学術文庫)、『二十世紀を精神分析する』(文藝春秋)など多数。

「2016年 『日本史を精神分析する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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