- Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122025356
感想・レビュー・書評
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◯流れるような文章に対して、内容は理路整然と論理的に文章の書き方や、読ませ方が書かれており、新しい感覚というか、不思議な本であると感じた。
◯書き手が何を思ってその文章としたかを読み解ける視点も得られ、書くことを知ることで読むことも深められた。
◯なによりも、何か書きたくなるような、そんな心持ちになった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
誰にでもわかりやすく書くこと。
かつ長く記憶に残るような文章を心がけること。
しかし間隙を作り、説明しすぎてはいけない。
日本人の性質に合わせて日本語を使うという
谷崎の哲学が私は大好きだ。
文章を書くプロなら当たり前なのかもしれないが、
ルビや送り仮名にも神経を使う緻密さに驚いた。
美しい文章を書く谷崎潤一郎だからこそ大いに説得力のある本。
「陰翳礼讃」と合わせて読むとより谷崎の美学が理解できると思う。 -
文章に実用的と芸術的の区別はない
現代の文は、「わからせるように」書くこと。簡単な言葉で明瞭に物を書き出す技術が大切。
もっとも実用的(対象を仔細に描き、それ以外の無駄を省く)な文章=芸術的
人に分からせるように書く秘訣は、言葉や文字で表現できることと出来ないことの限界を知り、その限界内にとどまること。
文章は目で理解するばかりでなく、耳で理解するものである。そのため、文章を綴る場合には、まずその文句を実際に声を出して読み、それがすらすらと言えるかどうかを試してみる。もしすらすらと言えないようなら、読者の頭に入りにくい悪文である。
字面の美と音調の美とは単に読者の記憶を助けるのみでなく、理解を補うもの。言葉を多く使いすぎるのは間違いであり、言葉の不完全なところを字面や音調で補ってこそ、立派な文章である。
国語というのは国民性のうえに成り立つものであるため、我々の国語がおしゃべりに適さないように発達したのも、偶然ではない。
【文章の上達法】
文法的に正確なのが、必ずしも名文ではない。文法に囚われすぎないこと。国文の持つ簡素な形式に還元するよう努めること。
一つのものを繰り返し読むこと。音読すること。
自分でも作ってみること。
感覚というものは、一定の練磨を経た後には、各人が同一の対象に対して同様に感じるように作られている。
【用語】
奇をてらおうとしない。分かりやすく、昔から使い慣れた言葉を選ぶこと。拠り所のある言葉でも、聞き慣れない言葉よりは、耳慣れた外来語や俗語を選ぶこと。ただし、適当な古語が見つからないときに初めて新語を使うこと。
類語辞典が便利。しかし、自分がよく知っていて即座には思い出せない言葉を引き出す用途に使うのであり、世間に通用しない言葉は使わない。
文体・調子…書いている人の性質に左右されるもの。これが一番美しい、というものはない。
【品格】
文章の上で礼儀を保つには
1 饒舌を慎むこと
→あまりはっきりさせようとしないこと
→意味のつながりに間隙をおくこと
つまり、ものごとの輪郭をぼやかすことである。
現代の書き手は、センテンスとセンテンスの間が意味の上でつながっていないと承知できない。もっと読者の理解力に一任してもよい。
2 言葉づかいを粗略にせぬこと
3 敬語や尊称を疎かにしないこと
【含蓄について】
日本語は主語を省くことができる。「私」や名詞代名詞を省いたほうがよい場合が多い。
現代には無駄な形容詞や副詞が多い。比喩は、それを例えに出したときに一層情景がはっきりする、というときに使うものであり、無理やり出してはいけない。
言葉を惜しんで使え。
感覚の鍛錬を怠らなければ、教わらずとも次第に会得できるようになる。 -
実際に必要な言葉だけで書く
分かりやすい言葉で書く
その為には、同義語のうちどれが適しているか考えて、それを選ぶ
最適な言葉はただ一つしかない -
"重厚な内容で、難しいところもあり、何度か読み直さないと身につかない。
まず、「ゐ」や「ゑ」「を」などなど、現代の言葉使いとは違うひとつ前の世代の文章で書かれているところで躓く人もいるかもしれませんが、根気強く読みつつけていくと、所々でなるほど~とうなることになります。
母国語でさえおぼつかない自分が外国の言葉を覚えようなんておこがましく感じてしまう今日この頃。" -
宇多田ヒカルがだいぶ昔に三島由紀夫の文章読本を好きな本に挙げていたのを目にしたときにそういう類の本があることを知って以来、今やっと自分なりのタイミングと思い読んでみた。谷崎のほうだけどな。
技巧的な話題もあるもののだんだんと谷崎自身の「俺の考える最強の日本語の文章」みたいな話になって最終的には「この本の文章の書き方を頭から見返せば自ずと分かるはず、そして一にも二にも感覚を磨くべし」的にメタに結論をまとめるという後半読み進めたあたりからの嫌な予感が見事に的中したのに苦笑いして読み終えた。
感じることを全て文章で書き現わすことはできないので、その限界を知ることと、それゆえ省くことが肝要であり、日本語にはもとよりその仕組みが備わっているのというのが全体の主張だと理解した。 -
無駄に修飾語をつけてしまう癖があったのでドキリとした。日本人の文化論のようなところまで踏み込んでいる。含蓄は味わえるが、書くとなれば大変だ。
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日本語を好きになる本。
日本語ならではの言葉の使い方を考えさせられ、その良さと味わいを楽しめます。日本語や日本文化への愛あってこその文章だと感じました。
書かれたのはだいぶ昔だけれど、今にも通用する内容ばかりです。谷崎の時代とは生活も文化も何もかも違っているような現代なのにそう感じられるのは、とても喜ばしいと思います。
自分には古文漢文の知識がほとんどないので、是非また勉強したいという気持ちになりました。今使っている言葉をもっと大切にしていこうと思いました。 -
今まで読んだ文章上達系の本の中で一番よかったかも。三島由紀夫氏が推薦文をよせている。
著者プロフィール
谷崎潤一郎の作品






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