天の川の太陽〈上〉 (中公文庫)

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  • 中央公論新社
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感想 : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (604ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122025776

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  • 日本最初の大規模内戦、壬申の乱を描いた古代歴史小説。

    主人公は勝者となった大海人皇子(天武天皇)。権力者としても武人としても策略家としても才能豊か。さらに部下にも女にも優しく、慕われている。歴史上の人物をここまで完璧にしてしまうのはやり過ぎな気がするが、そのおかげでストーリーは非常にわかりやすい。

    大化の改新を経て、倭国のトップとなった中大兄皇子は異常な猜疑心の持ち主。自分の敵になり得る者を次々と葬る。しかも、老いるにつれて、実子の大友皇子への愛情を隠そうとしなくなる。大海人皇子はそんな兄に対して、自分の才能や野心を目立たせぬよう細心の注意を払う。その一方で、朝鮮と唐との争いに倭国は巻き込まれていた。

    いずれは自分がこの国の統治者となり実力を発揮したい大海人皇子と、最愛のわが子を後継者にしたい中大兄皇子のシーソーゲームを中心に中臣鎌足や大海人の妻たちが活躍。現代人以上に人間関係や権力に敏感な古代の人間の行動は血なまぐさく、欲望むき出し。そんな中で冷静に周囲を分析し、我慢すべきところは我慢し、将来に向かっての布石を打っていく大海人皇子。ウソみたいによくできた人間だ。

    彼の「倍返し」、壬申の乱が起こる前で上巻終了。

  • 信ぴょう性の高い資料がほとんどない古代史で、日本では空前絶後の天皇家の内戦、壬申の乱を想像で埋めてダイナミックにとりあげた作品。
     天智天皇は兄、天武天皇は大海人、弘文天皇は大友皇子、藤原鎌足は内臣、持統天皇は讚良(さらら)と表記されます。たくさんの登場人物が出てくるのですが、メインキャストはこの4人で、前半では弟の大海人から息子の大友に皇位継承の気分が移りつつある中で、誰が味方か誰が敵か、色分けに収れんされます。女性の地位はかなり低く(天皇になる人もいますが)、政略で親がまぐあわせるケースが続出するのですが、その関係は狭い狭い。例えば、天智天皇は娘4人を天武天皇に嫁がせてますが、天武天皇は弟ですから、天武天皇は自分の姪を4人めとったことになります。白村江の戦いに絡めて、百済・高句麗・新羅・唐との日本との関係もけっこうがっつり触れられているので、ストーリーをおいかけてくのは大変ですが、天皇家での内戦をとりあげた壬申の乱がテーマだと、日本ではテレビにも映画にもできないので、エンタメ作品として楽しむには小説しかないのです。

  • すごくおもしろかった

  • 苦手なストーリーです。

  • 大海人皇子を主人公に壬申の乱を描く長編小説の前半です。
    この巻では658年の有馬皇子処刑から、天智天皇が亡くなる672年までの物語が語られます。
    記紀や万葉集、藤原家伝を相当に読み込み、なおかつ独自の見解も含め、話を大きく盛り上げていきます。
    当初は皇太弟として次期天皇の有力候補とされ、兄の中大兄皇子からも頼られる大海人ですが、百済や高句麗の撲滅や白村江の戦での倭国大敗、唐の進出といった韓土の状況、教養溢れる大友皇子の出現などによって、次第に政治から遠ざけられていきます。その間の大海人の心理を丹念に描き、とても面白く読めます。
    そして、主人公以上に異彩を放つのが妻であり中大兄の娘である鸕野讃良。後に自分の直系を天皇にするために自ら持統天皇となった女性らしく、極めて強い気持ちを持った女として、大海人にも大きな影響を与えていきます。
    さて、下巻はいよいよ壬申の乱。大津京に風雲が巻き起こります。

  • 壬申の乱をテーマとした小説で、大海人皇子の視点で描かれる。

    この上巻では、主人公・大海人皇子は、兄である中大兄皇子の政権下で、「武人肌で政治にはあまり興味のない皇太弟」として過ごす。
    中大兄皇子は、ブレーンである鎌足から独立して「大王」ではなく「天皇」という新しい観念の独裁者になることを望み、着々と実行していくが、白村江の惨敗を経て自信を失う。その頃から、老いとともに我が子大友皇子を溺愛するようになる。そして皇太弟である大海人から大友へ天皇位がわたるように巧妙に操作していく。

    天智天皇の心変わりや大海人の野望が育っていく様など、心理描写は巧みで人間を深く描いている。「老い」というものに対する観察眼は特にするどい。舎人や官吏らの周辺キャラクターも丁寧に描かれている。

    不満があるとすれば、持論の展開を含めて時代背景などの解説が小説の流れをしばしばぶった切ること、朝鮮半島の情勢が必要以上に細かすぎることで、小説を書きたかったのか、歴史書を書きたかったのかわからない。
    その割に、当たり前のように粁(キロ)などの単位を使うので、なんだか興ざめしてしまう。

    下巻に続く。

  • 物語は、大化の改新から14年後、中大兄皇子が皇太子として政治を行っていた頃からスタートする。百済の滅亡、唐による高句麗の征服など、朝鮮半島が激動する中で、大海人皇子は大友皇子に皇太子の座を奪われつつも、屈辱に耐えつつ着々と地盤固めを行っていた。

  • 黒岩重吾氏による古代小説。
    壬申の乱を軸に天武帝=大海人皇子の生涯を描いています。
    彼の統治以後、日本は「日本」になったと言われていますね。

    とにかく面白い。
    時代を辿るのはもちろん楽しいですが、登場人物が活きています。
    古代日本を舞台にした小説は、なんとなく人物描写が薄くて感情移入しにくいものが多い。
    しかし、黒岩氏による登場人物への肉付けは素晴らしいの一言。
    生々しいと言っても過言ではないかも。
    だから好き嫌いも分かれるかも知れませんね。

    ・大海人皇子=豪放磊落。日に焼けて頑丈なスポーツマンタイプ。いつも舎人たちと野山を馬で走り回っている。意外としたたかで感情もうまくコントロールできるので、謎めいた一面もある。

    ・中大兄皇子=頭脳明晰。隙のないタイプ。白皙の貴公子。かなりの美男子で遊び人。沈着冷静に見えるけど意外と熱血漢・直情的でわかりやすい一面もある。

    こんな感じ。私の中でもこのイメージで定着してしまってるので、他の設定の作品を読んだ時に違和感を感じる事になります。

    サブキャラクター=大海人皇子の舎人たちの人物像も大好き。
    男依、雄君、恵尺、根麻呂…みんなキャラがあって凄い。
    彼らを描いた短編集もおすすめ。(後日レビューします)

  • 昔、単行本で読みました。
    黒岩氏の作品の中では一番好きです。
    スケールが大きい。

  • 670年ごろ。大海人皇子(天武天皇)が中大兄皇子(天智天皇)の子供の大友皇子を倒し,天皇になるまでの物語。いわゆる壬申の乱の話。
    戦自体の記述は少なく,主に,大海人皇子が天智やその取り巻きに疎外され吉野宮滝に仏門に入るまでのやりとりが物語の半分を占める。
    このため,上巻は読んでいても少しだらける。下巻になると,挙兵までの大海人と舎人達のやりとりがスピード感を増し,いっきに読める。
    また,黒岩小説の割には,鵜野讃良(大海人の妻。後,持統天皇)など女人との関係の記述は少ない。
    本小説は大海人側に立った見方だが,大友皇子の取り巻き連中である左大臣の蘇我赤兄,右大臣の中臣金らは,近江朝側が持ち応えられなくなると見るや,大友皇子に最後まで着き従うことなく遁走。大友皇子の最後までつき従ったのは物部連麻呂で,大友皇子自害後,その首を大海人に届けることになる。大友皇子も自分の器量や大海人の器の大きさを見誤り,愚かではあったが,恐らく智将として大海人の下に着いたなら,すばらしい才を発揮したのではないかと思う。唐の賢人達との話も好きであったことなども考えると決して悪い人間ではなかったのだろう。
    救われるのは,麻呂が大友皇子の隣にいて,最後をみとることが出来たことだろう。今度は,麻呂の物語なども読んで見たい。きっとすばらしい武人だと思う。
    麻呂は壬申の乱後,天武に赦され,石上麻呂と名を改め,左大臣にまで昇進を遂げるのである。
    全2巻

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著者プロフィール

黒岩重吾

一九二四年大阪市生まれ。同志社大学法学部卒業。在学中に学徒動員で満州に出征、ソ満国境で敗戦を迎える。復員後、証券会社などに勤務しながら、「近代説話」の同人として小説を執筆。六〇年『背徳のメス』で直木賞、八〇年『天の川の太陽』で吉川英治文学賞を受賞する。九一年紫綬褒章受章、九二年菊池寛賞受賞。二〇〇三年死去。

「2021年 『斑鳩王の慟哭 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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