伽羅の香(かおり) (中公文庫 み 18-13)

著者 :
  • 中央公論新社
3.58
  • (12)
  • (23)
  • (34)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 203
感想 : 20
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122026414

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 香道をテーマとした小説。
    香道ついては、全くと言っていい程、知識がなかったのだが、日本古来からの伝統文化の一つであり、その性質から、それに興ずるということは地位、富の象徴でもあったのだろう。
    自分にとって興味深い発見でもあった。
    香道は、香りを楽しむだけでなく、古の書物に記されている香を再現する。その古に興ずる際、今のように視覚に訴えるものがないなか、五感の一つとして嗅覚を使っていた、ということだと思う。
    確かに、映画などを観るよりも、嗅覚に訴えることは想像力、趣きが広がるような気がする。そして、とても贅沢なことかもしれない。
    ヨーロッパでも香の文化があるが、文学的素養が必要という観点からも、日本の香道は、より高度な文化であると思う。

    明治から昭和を生きる女性が主人公であるが、時代と共に変わりゆく家制度、身分制度に振り回されるなかにあっても、自尊の精神で凛として逞しく生きていく姿が清々しい。

  • やっぱり、宮尾作品は力強い!
    こちらも続きが気になり、一気に読みました。

    しかし、宮尾先生は女性を幸せにしないですね…。

  • 良い小説を読んだなと
    久々に。

    お金の苦労が無いと人はどう生きるか。

  • ある地方の豪商の跡取りとして生まれた1人の女性の生き様が、彼女の目指す香道とともに鮮やかに描かれている。

    本を読んで感じるのは、世の無常。そして執着、嫉妬といった人の業。
    香や茶を嗜み、穏やかで完璧な男性に見えた貢の裏の顔や、上辺は葵へ賞賛を送るばかりだった上流階級の人びとが持っていた葵への嫉妬や蔑視の眼差しを知るたびに、葵は傷つく。それでも自らの誇りを失わず、自力で立ち上がってゆく。葵のまさに伽羅を彷彿させるような気高さ、「葵」の名の通りの高雅さは、多気村でも東京でも、また時代を経て私たちをも魅了し続ける。


    -----------

    主人公葵は、三重の山奥の多気村で一番の有力者である本庄家唯一の跡取り娘として、満ち足りた生活を送っていた。幼少から密かに慕っていた従兄弟と結婚し、多気村を出るべきではないという両親の反対を押し切って、東京で2人の子どもとともに幸せな結婚生活を過ごしていたが、30代半ばで夫が病死。悲嘆に暮れていた葵に、夫の父親である貢は香の道を勧める。幼い頃、貢が伽羅の香をたくのを聞き、天の羽衣を見たような心地になったことを思い出し、以後夫の弔いも兼ねて香の道に進む。
    その後、天性の才もあり、葵は香道の修得において目覚ましい成長を見せる一方で、身の回りは不幸が続く。両親が相次いで亡くなり、更に香の道を教えてくれた貢も急逝。貢の遺書で、葵は亡き夫の長年の裏切りと貢の隠し子の存在を知る。その後娘、息子も結核で失い、失意のどん底の中で、香の仲間から、日本の香道の発展のため、中心になって皆を導いてほしいと祈られ、決意。彼女の邸宅はサロンと呼ばれ、戦後の華族や上流階級の心の拠り所と言われるまでに隆盛を極めた。貢の隠し子もそばにおき、楠子の心の支えの一つになっていった。また、香道の先祖である宮家の道隆に手づから香を教える中で、葵の中に恋心が芽生え、生きている実感を得ていく。
    しかし幸せな時間は束の間、葵が全て費用を出し、心を込めて執り行った道隆への免許皆伝お披露目会
    の帰り道、葵は転んで骨折。それを引き金に脊椎カリエスが発症。入院生活を余儀なくされる中で、葵は楠子の裏切り、道隆への香の会の会員の裏切りを知り、世の無常を思う。病床で全てを失った彼女の脳裏に浮かんだのは、多気村の美しい四季や、山の生活。これまで疎み続けてきた多気村へ、多くの荷物を供に帰っていくところで物語は終わる。

  • 【読了メモ】2018_002(180228)宮尾登美子『伽羅の香』

  • 2016/06/04完讀

    【6.5/10】

    三重的炭大亨的獨生女葵,在姑丈(岳父)貢的薰陶下偶然進入香道的世界,面對丈夫子女雙親棄世的打擊後,決意和故鄉徹底劃清界限,全心全意投入香道,而在貢的斡旋之下也覓得大枝流傳人為師,獲皆傳等及諸道具。葵不收學費,自己的池田山宅邸開放如文化沙龍。後來論及欲成立香道協會,葵擔憂自己的出身,便從善如流栽培奉獻公家姉小路実兼直到創立流派。但病後發現弟子眾人皆棄其而去,公卿貴族習慣受人好處卻無義理,自己犧牲奉獻反而令他人眼紅,最終便決意歸鄉。

    **

    香道只在有栖川宮屋敷體驗過一次,甚感好奇,便借來這本書。根據書中所說,現代極難如手好的香木,因此多半是古時流傳下來之物,縱有千金亦難入手,因此便成為極其小眾的嗜好。而香道與典籍習習相關,因此必須熟習諸多典籍,聞香賽輸後還要當下立刻作和歌,因此書法和和歌的素養也必須具備。優質的香木實際使用時只用「馬尾蚊足」般的大小,然而據說高貴的香味讓人穿越數百年的時空,和古代聞香的雲上人連結為一體。而所有的流派傳人,都應該分得蘭奢待才有正式名分等等。有趣的知識也不少,閱讀過程也對這些高雅的香味感到好奇,書中也使用相當高級的道具,就像老師所說的,稽古的過程中還是要有好東西來當滋養才會進步。

    不過就小說而言,主角的造型讀到最後依然讓人很難移入感情,雖然主角一直覺得自己很歹命,不過由於太過驚人(應該說恐怖)的財力難以有同感,而主角本人究竟在香道有何天分(根據書中所說,這需要天分,這個技藝並不是練習就可以進步),以作者的描寫來說難以確實地讓讀者充分感受,反而是不禁覺得經由財力獲得老師傳承的成分居多,這部分應該要是作品最重要的血肉,可惜並未入木,最終反而看起來有點像暴發戶想討好上流社會最終還是灰頭土臉的悲哀故事,甚為可惜。再者主角的任性和對家裡奉公人的冷血,對自己的身分感到羞恥卻又對於貢的私生子楠子出身暗帶歧視,這點也很難讓人認同。不過最終發現公卿出身者和眾人的無情,反而很乾脆地徹底揮別東京的結局反而有加分的好感,從卷末眾叛親離的沉鬱心情轉而為一種神清氣爽的昂揚感。然而,同時也讓人覺得香道還是一堵高不可攀的門牆,就像那血統與貴族的世界,無法以常識衡量。

  • まだ読んでいない宮尾登美子氏の作品があった!と手に取りました。
    経済的に豊か過ぎる主人公故に、なかなかのめり込むことができなかった。
    それでも、最後には村に戻る決心をしていく過程には、様々な人の思いが影響していた。
    戻る場所があってよかったですね。
    これほどに仕えてくれる使用人はいないでしょう。

  • 今回はあんまり主人公に傾く事がなかったかな、結構自己ちゅぅだと思えてしまった。

    それでも、人の中に亀裂を発生させる要因として、異性というのは大きいなと感じた。当たり前なのだけれども、何だか切ないですね。

  • 三重で薪炭業を営む裕福な家に生まれた葵。
    親に大切に、何不自由なく育てられた葵は、やがて思いを寄せていた従妹と結婚し東京で新しい生活を始める。
    そしてそこで、さまざまな教養を身につける。
    所が次々と肉親の不幸が相次ぎ、葵は香道に自分の生きる道を見つける。

    はっきり言って、主人公の葵のことが嫌いでした。
    思ったことをはっきり口に出せない内気な性格の割にはかなり強情で、自分の意思を絶対に押し通すところがある。
    そして実家の財産に頼り何不自由ない豪奢な暮らしをしながら、その田舎の生家を恥じている。
    とんだ甘ちゃんだ、と思い共感できないまま読み進めました。

    彼女に好感をもてたのはほぼ終盤になってから。
    信じていた人たちの裏切りにより、ようやっと彼女が目覚めてからでした。

    この本を読んでお香・・・特に伽羅に興味をもちました。

  • きのねが面白かったし三重県の話なので読んだ。
    こんなに主人公を好きになれない小説も珍しい!
    親先祖のお陰で働くこともなく、裕福に暮らせるのにもっといい家だったらと家を恥じたり、捨てたり、戻ったり。
    でもこんな環境で育ったらこうなってしまうのかな?
    いつか好きになるかもと最後まで読んだけれど好きになれず。
    モデルの方はいるのかな?

全20件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1926年高知県生まれ。『櫂』で太宰治賞、『寒椿』で女流文学賞、『一絃の琴』で直木賞、『序の舞』で吉川英治文学賞受賞。おもな著作に『陽暉楼』『錦』など。2014年没。

「2016年 『まるまる、フルーツ おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮尾登美子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×