- Amazon.co.jp ・本 (604ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122027138
感想・レビュー・書評
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文武ともに秀でた大津皇子が、どう生き、どのように非業の最期を遂げるにいたったのか。
壬申の乱に勝利した天武天皇の改革、外交戦略の中で、大きな存在感を放つ大津皇子と鸕野讚良との攻防。自信に溢れていた日々からの転落はあまりにもあっけない。
結局…政争に敗れたのは…若かったんだろうなぁ。壬申の乱を経験し、血で血を洗う政治権力争いのいろいろを知っていた熟年の鸕野讚良に立ち向かうには、きっと若い純粋さが仇になったんだろうなぁ。
結末を知っているだけに、ずっと切なく胸を痛めながら読み進めていたけれど、やっぱり最期はたまらなくなりました。
また、あの山に登りに行かねば。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
内容(「BOOK」データベースより)
皇位を継ぐのは誰か―。壬申の乱後に即位し、新国家造りをめざす天武天皇の宮廷に渦まく愛憎と権謀。文武に秀で自由濶達な大津皇子に強い期待と深い猜疑の眼が集まり、誇り高い青年皇子は恋と政治闘争に身を燃やしつつ、悲劇的な結末に追い込まれてゆく。古代飛鳥に展開する歴史と人間の凄絶なドラマ。
本の感想
この本は古代日本史の歴史小説である。主人公は『懐風藻』や『万葉集』で有名な大津皇子で、西暦679年~686年ごろの物語である。当時の地図や略系図については、この本の最終ページにある。
『懐風藻』という作品については大学入試で日本史を受験した人なら思い出す人がいるかもしれない。この小説は大津皇子の視点に立っているので、高校の日本史で習ったことと若干異なるかもしれない。古代日本史が好きな人に勧めたい本である。 -
我が子草壁皇子かわいさに、姉と天武天皇の息子大津皇子に敵愾心を燃やす鸕野讚良(持統天皇)の執念深さ。じわじわと追いつめられる大津皇子。鸕野讚良の抑えられない天武天皇の、壬申の乱の勝者とは思えない不甲斐なさ。
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「死者の書」を読んで,大津皇子の事を知り,彼がなぜ死に至ったのかを知りたくて読んだ本。時代背景がよく分かり,今の世の矛盾と重なり合って感じるところもたくさん・・・・学生のころに読んでいたら,歴史がもっと楽しく勉強できたかもしれない・・・
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私はかなりの黒岩氏ファンを豪語していますが、この作品については……正直ちょっと熱を感じなかったです。
主人公は大津皇子。
壬申の乱の勝者である大海人皇子=後の天武天皇の息子なんですが、黒岩氏の小説にしては珍しく、主人公としてのインパクトがイマイチなんです。
凛々しくて人望あって器が広いのは良いのですが、その割には行動力が伴ってないし、自分で何をした訳でもないし…。
石川郎女の件と言い、策謀の件と言い、ラストの河嶋皇子へのぶっちゃけトークと言い、なんか中途半端っちゅーか、本当に聡明なのかと疑う部分もあったし。
いい意味では男の美学・プリンシプルを貫いたのかもしれませんが、それってただの我侭じゃん自己満じゃん感も否めない。
あんなに協力してくれた御方皇子(子孫も含めて)や舎人、奥さんたち取巻きのみなさんが可哀想で可哀想で´д`。
もちろん、大津皇子のあまりに短い不遇の人生も憐憫を誘いますが、私にはちょっと塩気が足りなかった。
短命ってのも、略奪愛らへんで自棄っぱちにならなかったら(てかそれ以前にキチンと恋愛してたら)、鵜野讚良を挑発せずに上手く折り合いつけてたら、もっと長生きできたんちゃうん?って思ってしまう。でもそれじゃあプリンシプルじゃないんだろう。
それとも、その不器用さがまた憐憫を誘うのかなあ。
まあ、真っ直ぐすぎたのでしょうね…。
そんな訳で、大津の人生よりも鵜野讚良の親馬鹿ぶりと必死さや、時代背景の資料的記述がドーンと目立った1冊でした。
資料的記述は大変勉強になりますが、やっぱ小説としてはウーン…だったので、黒岩作品には珍しく★は少なめです。 -
680年ごろ。天武天皇と大田皇女の子である大津皇子の物語。
大津は天武の皇后である鵜野讃良(持統)とその子の草壁皇子から敵視され,不遇な毎日を送っていた。
皇后は自分の子を将来の天皇とするべく,手を着くし,才覚や武勇に劣り病弱な草壁を皇太子とする。
大津は自分の運命を感ずいていたが,自分の真っ直ぐな生き方を変えることが出来ず,最後には友に裏切られ謀反の罪で捕まり自害へ追い込まれる。
大津は若く,少し愚かな性格だと思いつつも,その時代にいたなら,恐らく自分もそんな大津に惹かれるだろうと思う。 -
多くの作品は持統天皇・草壁皇子側が主役となったものが多く
敵対された大津がどんな心情であったかは何となくしか伝わってこなかった。
大津の目から見て、持統天皇や草壁がどんな存在であったのか
物語の始めの方はあまりにも憎憎しく書かれていて居た堪れないものがあった。
が、読み進めるうちに、大津の人としての心が伝わってきた。
切なくて、あんまりにも哀し過ぎる。
皇子でなかったら、母が生きていれば、そんな別の想像をせずにはいられない -
文武にすぐれ人望もあり天武天皇の長子である大津皇子は後ろ盾の母を亡くした。なまじっか才能があるだけに彼は、草壁皇子を次代の天皇にしたい鵜野讃良(後の持統天皇)に憎まれ追い詰められていく。<BR>
悲劇の英雄大津がとにかく格好よく、持統の母の情念が凄まじい。<BR><BR>
金烏臨西舎 鼓聲催短命 泉路無賓主 此夕離家向 <BR>
(懐風藻より辞世メモ) -
黒岩重吾さんは古代の作品をたくさん書いていますがどちらかと言うとオーソドックスに日本書紀の記述に沿ってまとめています。
才能があるゆえ持統天皇から憎まれた大津皇子を書いていますがどんな事件だったのかを知るにはわかりやすい本だと思います。