新選組遺聞 改版: 新選組三部作 (中公文庫 し 15-11)
- 中央公論新社 (1997年1月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122027824
感想・レビュー・書評
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再読。子母沢寛の新選組三部作、二作目。目次の「壬生屋敷」「池田屋斬込前後」は、八木為三郎老人壬生ばなし(昭和三年一月十五日)となっており、著者がまだ当時ご存命だった、新選組が寄宿した壬生の八木家の方に実際に聞いた話なのでリアリティがある。
基本的には新聞記者だった著者の取材ベースになっているけれど、いかんせん昭和初期のデータのため、沖田林太郎が沖田総司の実兄とされていたり(実際には姉婿なので義兄)現在では違うとされている記述もある。
ちなみに、私の知る限り、沖田総司の容貌についての証言は、この八木為三郎氏のものしか残っていない。本書では以下の部分。
【沖田総司は、二十歳になったばかり位で、私のところにいた人の中では一番若いのですが、丈の高い肩の張り上がった色の青黒い人でした。よく冗談をいっていて殆ど真面目になっている事はなかったといってもいい位でした。酒は飲んだようですが女遊びなどはしなかったようです。(114)】
証言も多く、写真も残っている近藤・土方両氏と違い、沖田総司は写真も残されていないため、おもな新選組もの小説における沖田総司のキャラ造形は、この八木氏の証言などによる部分が大きいように思う。美形に描かれるのは後世の希望・願望でしょう(笑)
個人的に、とても気になるが出所不明でどこまで信じていいかわからないのが「原田左之助」の項目で書かれている以下の部分。
【京都の浪人で、楠小十郎という人物が、長州の間者になって新選組へ交わっていたは、これを看破していきなりうしろから斬り殺して、「ああいい気持だ」といってエヘエヘ笑ったために、後で勇にひどく叱られたということが、新選組一流の剣士であった播州明石の浪人副長助勤斎藤一、後の山口次郎老人の口述したものだといわれる述者不明の、「夢録」というに書かれてある。(37)】
気になるのは斎藤一の「夢録」というものについて、言及しているのがこの本のこの一文のみだというところ。もしそんなものが存在しているなら是非とも読みたいものだけど、斎藤一がそういうマメなことをするタイプだとは思えないんだよなあ。ちなみに浅田次郎の『一刀斎夢録』は、おそらくこの夢録が実在していたら…という想像を膨らませて書かれた小説。
司馬さんの『新選組血風録』の元ネタになったのはこれかな、というエピソードも散見(沖田総司の恋、近藤さんの虎鉄の逸話など)
※収録
象山の倅/原田左之助/篠崎慎八郎の死/沖田総司房良/木曽路の春/壬生屋敷/池田屋斬込前後/伊東兄弟/近藤の最後/勇の屍を掘る詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読んだ本 新撰組遺聞 子母澤寛 20230902
大学生の頃に、「新撰組始末記」を読んだ時に一緒に買ったものだと思いますが、奥の方から出てきました。「新撰組始末記」が小説の形をとってなくて、インタビューを記録したようなのが当時なんとなく読みづらくて、ほったらかしになってたんですね。
遺聞も、同様に小説ではなく資料形式なんですが、本当に見た人が語る真実の迫力が伝わってきます。これが年を重ねるってことなんですかね。
特に芹沢鴨の傍若無人が新撰組贔屓なんじゃなくてホントだったんだなってことと、近藤勇の立派な人物像が語られてるのが真実味があっていいですね。近藤勇の最期は、真実味が高まると悲しみが増します。
年取ると薩長の陰湿さが疎ましくなって、佐幕派になってきました。 -
江戸末期を生きた人達がまだ存命だった昭和初期に、新選組にまつわる目撃談、体験談を取材した貴重な記録。最も臨場感があるのは、芹沢鴨暗殺の描写で、八木為三郎の母からの又聞きという形ではあるが、殺害前後の経緯や光景が具体的で、記憶力の良い証言者の恩恵を感じざるを得ない。その他、池田屋騒動から帰還後の隊士の様子や、山南と明里の別れ、斬首された近藤の屍を掘り返す話など、それぞれかなり描写が細かいので、タイムスリップしてそれを見てきたかの様な感覚にとらわれる。ドラマや小説では取り上げられないが、ある隊士を介錯した直後、明るく餅つきを手伝っていた隊士の挿話は印象的。その事をからかわれた彼が「折角忘れているものを」とつぶやく場面には、現在の我々には想像ができない心境が伺われ、そんな過酷な環境こそが新選組の魅力になってもいる倒錯性を感じたりもした。
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『新選組始末記』につづく三部作の第二作。永倉新八・八木為三郎・近藤勇五郎など、新選組ゆかりの古老たちの生々しい見聞や日記手記等で綴った、興趣尽きない、新選組逸聞集。
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本著は、まさに大正から昭和初期に子母澤寛が新選組に縁のある関係者から聞いた話(遺聞)を纏めたもの。読後、司馬遼太郎など新選組関連の歴史小説が、子母澤寛の新選組3部作に影響を受けていることがよく理解できた。
後世の脚色された新選組ではなく、隊士達の息吹が感じられ、却って迫るものがある。
以下引用~
・「近藤さんは酒を飲まないかと思ったらやはり飲むそうだけれども、酔った風を見せないのは偉いものだ」
・土方は役者のような男だとよく父が云いました。真黒い髪でこれが房々としていて、眼がぱっちりとして引締まった顔でした。むっつりしていて余り物を云いません。 -
当時彼らを見ていた人からの証言を元にしていて、その場をありありと思い浮かべることのできるいい資料だった。主だった人がそれぞれピックアップされていて読み応えあった。
近藤の最期はやはり何度読んでも悲しい。私情による怨念から切腹さえもさせてもらえず、死骸に情もなくただ乱暴に扱われたる様は、怒りさえも覚える。一体首は本当にどこへ行ってしまったのだろうか。
みんな時代をただ生きているだけなんだけど、サイコパスで少し怖いなーと思ったが、仕事とはそういうものなのかもしれない。人を斬るのもただ仕事だから。 -
新選組3部作の第2作
既に、色々なところで、
新選組については書かれているが、
自宅を屯所に使われていた八木家から見ると、
とても面白いというか凄まじい。
お坊ちゃんから見ると、
お兄ちゃん達は、みんな人斬りで、
挙句の果てには、
幹部同士が殺し合いだもの。
ただ、新選組隊士の人斬りではありながら、
純粋なところも見えて、そうは言っても、
まだ、青年だもんなあと感じさせられた。
凄まじい時代の変わり目を、
嵐のように駆け抜けた新選組、
やはり面白い題材である。 -
新選組始末記に、まとめて記載