ノラや (中公文庫 う 9-5)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122027848

作品紹介・あらすじ

ふとした縁で家で育てながら、ある日庭の繁みから消えてしまった野良猫のノラ。ついで居つきながらも病死した迷い猫のクルツ-愛猫さがしに英文広告まで作り、「ノラやお前はどこへ行ってしまったのか」と涙堰きあえず、垂死の猫に毎日来診を乞い、一喜一憂する老百〓先生の、あわれにもおかしく、情愛と機知とに満たち愉快な連作14篇。

感想・レビュー・書評

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  • 百閒はふとした縁から野良猫「ノラ」を世話をするようになる。老夫婦を癒し、心の拠りどころにもなっていたノラは、ある日突然姿を見せなくなる。ノラを懸命に探し数年が経った頃、軒先に迷い猫「クルツ」が現れる。

    「ノラやお前はどこへ行ってしまったのか」
    突然姿が見えなくなったノラを案じ、迷い猫探しの広告を作成し、日々の空虚を日記にしたため、外国人が保護しているかもと想像力を膨らませ英字版の広告も用意し…と猫探しに奮闘する日々。「似た猫がいる」という連絡があれば確認に赴き、一喜一憂します。愛猫が帰らない毎日に涙する様子に胸がきゅっとなる…。
    猫が見つからないという事実を前に、ここまで悲哀の想いが吹き出し、言葉が生まれ、1つの作品が仕上がることに驚きます。
    悲劇は喜劇とはいうものの、私はこの作品に“愉快さ”を感じられませんでした。けれど、「ノラや、ノラや…」と懸命に愛猫を捜索する百閒の必死さから人の温かさと優しさと愛しさに触れ、溢れんばかりの猫愛が伝わってきます。
    とことん切ないけれど、動物を心から慈しむ姿に触れ温かい気持ちにさせてくれる1冊でした。

  • 文豪内田百閒先生がいなくなったネコを探してオロオロ、メソメソ。
    わかりますとも、その気持ち。
    でもちょっと、度を越してはいませんか?
    奥さまや周りの方々はたいへんだったことでせう。

  • 「臆病な自尊心と尊大な羞恥心から変わっちゃう話で」「それはトラや」「ネットによく転がっている」「それはコラや」「アンクル・トムの」「それは小屋や」「大げさな嘘のことを」「それは法螺や」「講談社の創業者の話かな?」「それは野間や」「大洪水にまつわる方舟の話で」「それはノアな」「ウッス」「プロレス風に返さなくていいから」「ちなみに名前はイプセンの小説かららしいね」「ノーラだね」「ラピュタに出てくる空中海賊の」「ドーラだね」「大草原の小さな家の」「ローラだね」「傷だらけの」「それは西城」「「ヒデキ、感激!!」」

  • なんでこんなに可愛いのかよ~♪

    この本を読んでいる間ずっと、
    大泉逸郎の孫が頭の中に流れてました。

    庭の水がめに落ちたことがきっかけで、
    飼うことになったノラが帰ってこなくなった。
    心配で心配で毎日、毎日泣いて、仕事も手に付かない先生。

    新聞にノラを探す広告を4回入れたり、
    見つかってないのに、お礼の文章を考えたり、
    風呂場に専用の座布団を用意したり、
    毎日、猫用に魚屋さんからアジを取り寄せ、
    猫用にカレイを煮る?!

    読んでいてつっこみたくなるところ満載。
    文章にユーモアもあって、面白かったー

    ただ、短編が何作品も掲載されているので、
    同じ話が何度か繰り替えされてるので間ちょっと飽きるところがあるのが
    ちょっと残念。

  • 数年程の期間を空けて4度読み直しました。
    2度、友人におススメして貸しましたが戻って来なかったので買い直しました。現在は文庫本1冊とKindle版でも持っているので、またいつかは読み直し、オススメ本として誰か友人に文庫本を貸したいと思います。貸した本が帰って来なくても今はKindle版も持っているので少し安心です。が、やはり気に入った本は紙の本で持っていたいので、本当は返して欲しいです。

  • 猫と老小説家。その暮らしと別れの話。

    猫たちの普段の仕草や習慣、自分に擦り寄ってくる愛らしさ、描写される表情が可愛過ぎてほっこりが凄い。
    本人も言う通り、高級な猫を飼ったり、猫であれば何でも良いなどの、所謂「猫好き」ではなく、成り行きで関係性を持ったノラやクルとの生活を淡々と描写される。

    が、割とすぐにノラがいなくなってしまい、ノラを思い悲しみに暮れ、とにかくすぐ泣く百閒先生。
    その悲しみようが読んでいてほんとに切なくて、昔読んだときは途中で読むのをやめてしまった。

    ノラがいなくなり、その後住み着くクルが体調を崩し、その都度毎日百閒先生は切なくて涙を流す。
    つられて切なくなる。強面の老小説家がおろおろと取り乱す。
    「昨夜は頭をつけてから涙止まらず」
    「涙は午後まで止まらない」
    「ノラやお前はどこに行ったのだと思い、涙が川の如く流れ出して止まらない」
    「「「猫は」と聞いたことに思いつながり、起き抜けから涙が流れ出した」
    「ノラが可哀想になり泣き続けた。どうも雨の日はいけない。一日中泣いたので目が腫れぼったい」


    周りが元気付けようと誘った旅行先でも
    「その内ふとノラの事に触れて、お膳の前で泣き出したが、すぐに制して涙を拭いた」
    「ひとりでにノラのことがおもわれて涙が止まらなくなり、昨夜の様に制することが出来なかったので、諸君に失礼した」
    とのように、涙に暮れる。

    ほっこりパートはほんの少しで、ほとんどが百閒先生の心配と感傷の吐露だ。
    なんなの?!ってくらいずっと続く。ずっと読んでると結構くらってしまう。
    しかしなんだか読んでしまうし、清々しい気持ちになる。

    偶然に、ふいに出会って、なんとなく一緒に暮らすようになり、いつのまにか愛おしくなって、突然別れがくる。
    生きていると全部そんな感じだけど、そういう部分を強く感じられて良いのかも。

  • 猫好き必読の本か何かで取り上げられているのを見て手にした一冊。裏表紙の説明に「消えてしまった」、「病死した」という単語を見て、ちょっと萎えて、しばらく積読。
    やっぱり、猫飼いとしては、胸が痛かったですね。飼い猫が出かけた切り帰って来ない。看病むなしく病死する。いやぁ、耐えられない。
    最初はノラと比較して、仕方なしに飼っているんだというスタンスだったクルにどんどん情が移っていくのが分かりやすい。
    内田百閒読むの初めてですが、昭和30年代、40年代でも旧仮名遣いだったんですね。

  • 猫を飼おうかなと思っている人に、是非読んでほしい一冊。
    猫のノラとクルツに対する、著者の愛が半端じゃない。
    いなくなった猫を可哀想に思って、70代のじいさんが連日声を上げて泣いているのである。このままではおかしくなってしまう、と言いながら。
    厳格だと言われた作家をここまでメロメロにした猫を、いつか先にいなくなってしまうであろう猫を、それでも飼えるだろうか...?
    猫のいる生活に憧れていたが、私はちょっと無理かもしれない。
    きっとこの作者のように、なってしまいそうだから。

  • だめだめな百閒先生の姿に、なんか安心する。本人はあくまで大まじめなのである。

  • ※1980年3月発売

    猫どころか動物を一切飼ったことのない私が読める本なのか?と思いながら手にとったが、すっかり百閒先生のペースに飲み込まれました。
    ノラが可愛くて、いなくなってからは、今日こそ帰ってくるんじゃないかと期待し、もうこの感じだと帰ってこないのかなと気づきつつも、似て非なる猫クルツを受け入れるまでのささやかな葛藤なんか、もう一緒になって感じている気にさせられました。
    猫愛が薄い私ですらこんな感想なんだから、猫好きな人は読んでて辛くなるかもしれない。

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