中国行きのスロウ・ボート (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
3.51
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本棚登録 : 3863
レビュー : 365
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122028401

作品紹介・あらすじ

青春の追憶と内なる魂の旅を描く表題作ほか6篇。著者初の短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • 初めて読んだ時から
    実に22年!

    村上春樹の記念すべき初の短編集であり、
    いまだに春樹さんの短編集の中では
    この作品が一番だと思っています(^^)
    (個人的な意見を言えば村上春樹は
    優れた短編小説家だと思う。彼の長編の多くは実験的に書いた様々な短編をつなぎ合わせたものだし)


    若き日の村上春樹だからこその
    ニヒリズムとキザ一歩手前のセリフ。

    熱くなり過ぎず、
    けれども揺らぎない芯を感じさせる
    クールで抑制された文体。

    どんな話の中にも
    キラリと光るセンス・オブ・ユーモア。

    ひょうひょうとして見えても
    みな喪失を抱え、
    自らの信念やルールに従って生きる
    ハードボイルドな登場人物たち。

    ああ~やっぱ好きなんよなぁ~、
    この頃の村上春樹♪

    今改めて読んでも
    初めてこの本に触れた時の喜びが蘇ってきたし、
    その当時の空気感や匂いまでも
    瞬時に思い出させてくれる。


    かつて出会った中国人たちに思いを馳せる
    『中国行きのスロウ・ボート』、

    背中に張り付いた叔母さんのエーテルは
    見る人によって姿を変え…
    『貧乏な叔母さんの話』、

    レコードを間違って買ってしまった客にカセットテープに声で返事を吹き込む
    デパートの商品管理係の男のイタい独り言(笑)を描いた
    『カンガルー通信』、

    炎天下での芝刈りバイトの思い出を瑞々しい感性で描いた
    個人的に大好きな一編
    『午後の最後の芝生』、

    シーズンオフのリゾートホテルを舞台に
    死んだ犬の匂いに悩まされる女と、
    彼女に去られた男の雨の2日間を
    詩情に溢れ映像喚起力の高い筆致で描いた傑作
    『土の中の彼女の小さな犬』、

    砂金王である父親の莫大な遺産を受け継いだ大金持ちの私立探偵と、
    ピザ屋を切り盛りする女の子「ちゃーりー」、
    そしてあの羊男が繰り広げるユーモラスな冒険活劇に
    誰もがニヤリとすること必至の
    『シドニーのグリーン・ストリート』、
    などなど粒揃いの短編がズラリ。


    彼の小説を読むと
    必ず主人公が食べていたスパゲティやドーナツが食べたくなるし、
    ビールをグビグビしたくなるし、料理を作りたくなったり、
    動物園に行きたくなってしまう。
    (初期作品の登場人物の殆どに名前がないこともそうだし、読者が物語の中に自然と入り込んでしまう同化現象を、春樹さんの作品は自然と呼び起こすんです)

    そして書かれた当時の時代背景もあるけど、
    タバコが効果的な小道具として描かれてるのも
    共感できる点かな(笑)
    (今でこそ、不当な悪者扱いを受けてるタバコだけど、昔からタバコとジャズとロックと酒は自由のシンボルで、多くの表現者の創作意欲を増してきたし、一つの文化として成り立ってきたハズ)


    自分がこの本を初めて読んだのは
    まだ恋も知らない16歳だった。

    詩人は21で死に、
    革命家とロックスターは24で死ぬ。

    ならば自分は
    一体いつまで生きるんだろう。

    ロックに目覚め、
    今も続けているバンドを組んだばかりの自分は
    電車の中で夕刊フジを読むような
    イージーな大人になるくらいなら
    ディフィカルトな子供のままでいたいと思っていた。

    ストーンズの音楽と手に入れたばかりのギターと
    少しのお酒と村上春樹の小説があれば、
    くそったれの人生も
    いくらかはマシになるって。


    ラジオから流れるFEN、ドアーズとCCR、夏の光にチラチラ揺れるウィスキーとショートホープ、昭和の牧歌的な時代、入れ替え制のない古き良き映画館、雨の日の動物園、誤解されて別れた恋人、傷つけた人たち、親友が亡くなったことを知らずにいたバカな自分。

    あれから22年経って
    結局イージーな大人にはなれなかったし、
    過ぎ去ったもの、失くしたものは
    もう戻らないけど、
    自分はまだ生きているし
    悲しいかな、あの頃と何も変わっちゃいない。

    ストーンズとギターと少しのお酒、
    そしてこの小説とあの子がいれば、
    まだ当分の間は生きていけそうだ(^^;)

    • vilureefさん
      こんにちは。

      ハルキストにはなれませんが、村上春樹大好きです。
      網羅とまではいきませんが、ほぼ読んでいると思っていました。
      が、何...
      こんにちは。

      ハルキストにはなれませんが、村上春樹大好きです。
      網羅とまではいきませんが、ほぼ読んでいると思っていました。
      が、何と言うことでしょう!
      この本は抜けていました。

      円軌道の外さんのレビューを読んだら、今すぐにでも読みたくなりました。
      さっそく文庫買いに行こうかな。

      私は春樹の本を読むと、“サンドウィッチ”が食べたくなります。
      “サンドイッチ”ではなく、“サンドウィッチ”。
      この表現にこだわりがあるのかなと思っていたら、最近の作品ではなぜが“サンドイッチ”。
      これには意味があるのか無性に気になります・・・(^_^;)

      .
      2014/01/15
    • 円軌道の外さん


      vilureefさん、遅くなりましたが
      コメントありがとうございます!

      仕事の多忙が祟ったのか
      只今、人生初のインフルエン...


      vilureefさん、遅くなりましたが
      コメントありがとうございます!

      仕事の多忙が祟ったのか
      只今、人生初のインフルエンザにかかり
      自宅療養中です(泣)

      寒かったり暑かったり
      変な天気が続いてますが、お変わりないですか?


      あははは(笑)
      自分もハルキストにはなれないし、
      作品は好きだけど、
      あそこまでただの小説家を神格化するのはどうかと思ってます(笑)

      ノーベル賞なんて春樹さん本人は
      これっぽっちも望んでないと思うんやけどなぁ(笑)(´`:)


      と、脱線しましたが(汗)、
      この短篇集はオススメですよ(^^)

      これも初期の『カンガルー日和』と共に
      大好きな短篇集で
      何度も買い直してます(笑)


      今の春樹さんもいいけど、
      初期の作風やそこに流れる匂いが好きなんです。

      最近、小川洋子さんとクラフト・エヴィング商會が取り上げて
      再評価された、
      『 貧乏な叔母さんの話』や、

      郷愁溢れる『 午後の最後の芝生』や
      詩情溢れる『 土の中の彼女の小さな犬』は
      本当に傑作だと思うし、

      まるで童話や児童小説のように
      無邪気でシュールで
      ロマンチックな冒険活劇の
      『 シドニーのグリーン・ストリート』は
      初期だからこその
      遊び心とキュートな作風に
      メロメロになるハズです(笑)(*^^*)


      また、読まれたら
      レビュー楽しみにしてますね(^o^)


      あっ、そういえば
      自分もサンドイッチの表記、
      感じてました(笑)

      僕が、『ああ~自分は今、村上春樹を読んでるんや』って、
      一瞬にして思わせてくれる表記は
      やはり『サンドウィッチ』の方です(笑)

      ミュージシャンの佐野元春が、
      ラジオをレイディオと呼ぶのと同じで(笑)、
      まるで外国文学を読んでいるかのような春樹さんの文体は
      僕が初めて読んだ20年前には
      本当に斬新で
      『これこそが自分たちの世代の文学なんや』って  
      もう吸い寄せられるように
      ハマっていったのを覚えています(笑)(^^;)

      2014/03/01
  •  村上春樹の最初の短編集。初めて読んでから数十年(?)たった。村上春樹はなんだか偉くなったけれど、ぼくはただの老人になった。若いころのピュアな感じが懐かしい再読だった。
     初めて読んだ頃の友達と100日100冊カバーという「面白がり」を始めたら、友達が感想を書いていて、懐かしかった。ブログに掲載したので読んでほしい。
     https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202006170000/

  • 並行世界のような不思議なプロットと浮遊感のあるでも定まった言葉選び、そして奇妙な後味の結末。紛れもなく切れ味鋭い時代の村上春樹だ。氏は幾つか短編集を刊行しているが、本作品は前後の長編に通じる空気感を有している。

    どの作品も魅力的だったが「中国行きのスロウ・ボード」「午後の最後の芝生」がよかった。

  • 村上春樹は10代~20代前半くらいにわりとはりきって代表作を読んだつもりだったのだけど、たぶんこれはすっぽり抜け落ちていました。今更80年代の初短編集を手にとったのは、これも小川洋子&クラフトエヴィング商会『注文の多い注文書』で「貧乏な叔母さんの話」パスティーシュを読んで興味が沸いたから。

    ある日突然、背中に謎の叔母さんが貼りついてしまう「貧乏な叔母さんの話」はやっぱり面白かった。貧乏といっても貧乏神のように憑りついた相手を不幸にするわけじゃなく、彼女を見た人の記憶に残る最も不幸な女性の姿を取るだけだ。今もどこかの誰かの背中を叔母さんが転々としているかも、と想像すると楽しい。

    羊男と私立探偵の「シドニーのグリーン・ストリート」は、子供向け媒体で発表されたもののせいか、可愛らしくて好きだった。当たり前だがセックスだのワギナだのって単語も出てこないし。

    つまりそれ以外の、二言目にはセックスの話をするところが今も昔も変わらず村上春樹で、もちろん人生や恋愛を語る上でそれは欠かせない要素ではあるわけだけど、なんかもうちょっと直接的じゃない言い方できないかな、というかいい加減「もうええわ!」とツッコミのひとつも関西人のおばちゃんは入れたくなるわけで。

    文学作品だし真面目に受け取るほうがバカだけれども、お客のクレーム返信にセックス連呼、あなたと寝てみたいと書く(言う)クレーム処理係の独白「カンガルー通信」なんかもうただのセクハラですからね。2019年の今この作品を発表する作家がいたら炎上するんじゃなかろうか。

    なんて、くだらないことに目くじらたててごめんなさい。好きな部分もいっぱいあるのだけど、なんというか、パクチーと同じで好き嫌い分かれるよねっていうか、全体としてお料理は美味しいのだけどそこにパクチー(露骨なセックスの話題)を乗せないでくれたら、もっと美味しくいただけるのにという感じ。

    ※収録
    中国行きのスロウ・ボート/貧乏な叔母さんの話/ニューヨーク炭鉱の悲劇/カンガルー通信/午後の最後の芝生/土の中の彼女の小さな犬/シドニーのグリーン・ストリート

  • 表題作。とてもナイーヴで、心が震える。真面目に生きていることが辛くなるけれど、でも本当にそうしているならば、そういうことは誇りを持つべきなのだな、と思う。
    どうして「僕」は、もう彼女と二度と会えなかったのか……どうして……そのことを考えるだけで、心が遠くに行く。
    「そもそも、ここは私のいるべき場所じゃないのよ」という言葉の持つ遠さは、いったい何だろう。どうして私はここにいるのだろう。

    その他の短編も悪くはなかったが(「貧乏な叔母さんの話」もとてもよかった)、表題作の震えがあまりに瑞々しいので、今、そればかり思い出している。

  • 何度でも読みたい。

  • 村上春樹にとって、初めての短編集。
    やっぱりこの人の文章は好きだ。心に残るワンフレーズを発見したり、妙に懐かしい空気にとり憑かれたりする。
    「中国行のスロウボート」は、興味深く読めておもしろかった。
    「午後の最後の芝生」と「土の中の彼女の小さな犬」は、どちらもしっとりと温かみのある素敵なお話。
    最後の「シドニーのグリーン・ストリート」は、絵本を読んでいるようで楽しかった。

  • エッセイらしくもある短篇集。
    著者が実体験した出来事かな、と思うも、奇妙さが色濃く残る物語ばかり。現実と空想の境を攻めるのがうまい。絶妙。その不安定さが魅力なのだと思うけど、時にどっちつかずでモヤモヤすることも。ただ、村上春樹の小説を読んでいると、現実と空想の境は実は曖昧なのではないかと思えてくる。そんな少し不思議な物語ばかり。SFじゃないけれど。

  • とても好きだった。とくに「土曜の最後の芝生」は真夏のジリジリとした暑さがかなり気持ちよかった。「土の中の彼女の小さな犬」と「中国行きのスロウ・ポート」もよい、孤独なのにどこか温かい世界。温かいのに孤独さが広がるとも言うべきか。

  • 最も好きなのは『ニューヨーク炭鉱の悲劇』。 前半2つの場面では「僕」の周りをかすめて通り過ぎるような「死」を日常の風景の中で描き、最後の場面は突然ガラリと変わってよりはっきりと形を持った具体的な「死」が、自分に向かってゆっくりと、確実に向かってきている様が描かれている。先程までとは打って変わった非日常的な死。視点も「僕」から語り手へと変わっている。 最後の転換っぷりには初めは少し戸惑うものの、「僕」が回避したはずの死をいきなり目の前に突き出されたようでどきりとした。こういう小説の展開は初めてで驚いた。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月刊行。2019年9月10日発売の『文藝春秋』10月号で「至るところにある妄想 バイロイト日記」を寄稿。

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