斑鳩王の慟哭 (中公文庫)

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  • 中央公論新社
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感想 : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (574ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122032392

感想・レビュー・書評

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  • みんな大好き聖徳太子が主人公の、『紅蓮の女王』に接続するようでしない作品。『紅蓮』以降の推古天皇がしっかり出てくるんだけど、なんか『紅蓮』の時と人が違う!!でもその変わりようにも逆にリアリティを感じる。

    超長編だが『紅蓮』よりも遥かにレベルの高い面白さに達しており、一気に読める。聖徳太子の懊悩は様々あるんだけれど一読者として最も心を打たれたのは母親に対する想いだった。怨念の塊と化してしまった母になんとか安らかになって欲しいと願いつつ、そのあまりに重い負のエネルギーにたびたび引きずり込まれそうになり、優しくできない太子…。自ら唱えた「和を以て貴しとなす」を身近なところで実践できない歯がゆさ。

    最後の山背大兄王が死ににいくシーンを、「玉虫厨子」の側面に描いてある「捨身飼虎」の伝説に準えてるのはうまいなぁと唸ってしまった。

  • 同作家の「聖徳太子 日と影の王子」は悩みながらも理想に燃える若き日の厩戸の話。快活で聡明で努力家でキラキラしてたんだけど、この「斑鳩王の慟哭」では理想と現実のギャップ、母親への複雑な思い、子の山背大兄王への不安など、晩年の厩戸の悩みや葛藤を描いてる。そして、厩戸が病死してから、山背大兄王と大政治家蘇我馬子の子の蝦夷、孫の入鹿との対立が深まっていく。
    最後は山背大兄王始め、厩戸の子孫全員が入鹿に追い込まれ自害するという。そりゃ「慟哭」だよなぁと。

    途中で厩戸が馬子と国記・大王記を編纂しようということになるんだけど、神話の世界を創作するということで、山背大兄王にこれは飾り者じゃというセリフがあって、最近古事記を読んだばかりだったし苦笑してしまった。

  • 意外と資料に裏付けされて面白かった。

  • 厩戸皇太子と山背大兄王、蘇我馬子と蝦夷の父子関係、偉大な父を持った山背大兄王と蝦夷の苦悩が描かれています。面白くて夢中になって読みました。
    ラストもよかったです。

  • おそらく、とても丁寧に歴史を追っていて、
    そこに筆者の捉えた人物像を織り交ぜて描いているのだと思う。
    今まで詳しくなかったこの時期の登場人物を覚えることができた。

    でも物語としてはそんなに面白くはなかった。
    人物の形容が最初から最後までずっと一緒でくどかった。
    物語の序盤に用意された人間関係から、
    変化が乏しいまま終わってしまった。

    厩戸は政治家であることと仏教者であることの板挟みのまま、
    山背大兄王は父を越えられないことを悩んだまま、
    間人皇后は自分の薄幸を恨んだまま…
    そういった葛藤などが、単調に説明されるだけではなく、
    もう少し人物関係のエピソードのなかで読みたいと思う。

    小説として読み進めるには少し体力がいる作品でした。

  • これは斑鳩に移り住んだ晩年の厩戸皇子(聖徳太子)とその息子(山背大兄皇子)を中心に上宮王家の滅亡までを描いた歴史小説です。
    聖徳太子は以前から好きで他にも何冊か本を読んだことがありますが、それまでの超人・聖人なイメージとはかけ離れたこんなに普通に迷ったり悩んだりする人間らしい厩戸像は初めてで新鮮でした。
    また、あとがきに書かれていましたが、作者は平成4年に公表された欽明天皇を葬った古墳の石室内の写真をヒントにこの小説を書き上げたそうで、ひとつの新しい事実に対してこれだけのことを想像できるとはさすがです。というか、私は、推古朝の政治は厩戸と馬子が中心に行われていたと習ってきましたが、実は推古女帝は圧倒的な権力者として二人の上に君臨していた、という事実は衝撃的でした!

  • 博愛主義の政治という理想がはばまれる中で、聖徳太子はしだいに厭世観を募らせていた。一方、強靱な生命力を持つ推古女帝は血の怨念から大王位に固執し、蘇我馬子と組んで太子の疎外を画策する。やがて太子、女帝が逝き、大王位をめぐる確執は、山背大兄王と蝦夷が引継ぐ―。上宮王家滅亡を壮大に描く長篇。

  • 名言ー人間は学問によって豊かになれるが余り学識に頼ると却って人間的なものが失われる。
    聖徳太子含む上宮王家の滅亡を抱く大作。飛鳥時代の蘇我馬子と推古天皇及び聖徳太子の三つ巴の関係がよく理解できる作品。仏教にのめり込む様や朝鮮半島及び中国隋との当時の様子も垣間見る事が出来た。聖徳太子の悩みと2世の悩み。なかなか勉強になった!

  • 600年ごろ。蘇我馬子,推古大王,厩戸皇子の3名が其々の理想・執着等を成し遂げるため,時には権謀術数を用い,時には武力を用い,時には権威を笠に着,また徳を積むなどし,勢力争いをしていく。
    3名の生き様が其々が死ぬまで綴られており,読み応えは十分あり,理解もしやすい。
    そして最後には,厩戸皇子の子供の山背大兄皇子ら厩戸一族が蘇我蝦夷に攻められ全滅するところで締めくくられている。
    時代は,馬子から蝦夷,そして中大兄皇子,中臣鎌子に繋がっていくのである。
    厩戸皇子と妃の菩岐岐美郎女の死は一日違いらしい(622年)。他殺も考えられるという。厩戸の死後,近畿では厩戸信仰が起こったが,厩戸皇子が聖人君子であったからと言うわけではなく(だって,厩戸の皇子には14人も子供がいて,正式な妻も4人いる),やはり,人間平等,特に,奴隷や農民らにそのことを評価され,それがために一度に7人の言うことを理解できたとかまことしやかに伝えられ,信じられたのだろう。厩戸は17条の憲法を制定したが(厩戸皇子が制定したかは各説あり),これは厩戸のように非常に高い理想を持ち,それに向かって邁進出来る非常に限られた人間にしか達成できないような制度で,諸豪族からは色々と非難が出ていたらしい。また冠位12階においても,秦連河勝ぐらいが破格の抜擢をされたぐらいで,あとは現状の豪族の勢力並に冠位がさづけられたと言う。理想と現実の間で厩戸はとても苦しんだ事と思う。
    馬子の晩年はどうもボケてしまったらしい。やはり,若い時に神経を使い過ぎるのも老後に付けがまわってボケてしまうのだろうか。馬子は厩戸の死後4年後に他界する(626年)。そして,蝦夷は馬子のために石舞台古墳を墓として5年の歳月を費やしたという。推古大王の晩年は,馬子と協力しながら権力を手に入れるまでと違い,どちらかというと,一人の女性としての嫉妬,母として子供を大王につかせたいという思いで生きていたように思う。最愛の子供,竹田皇子も病弱なためなくなり,推古大王は馬子の死後2年後になくなった。その時もまだ馬子の墓は建築中だったのだろう。

  • 斑鳩王とは言わずと知れた聖徳太子(厩戸皇太子)のことである。
    太子の晩年から死、そして斑鳩宮を継いだ太子の長子・山背大兄王とその一族、
    所謂上宮王家の滅亡の時までを描いた物語である。

    この物語は『聖徳太子 日と影の王子』の終章で
    簡単に触れられた太子が政治から遠ざかるようになったその辺りが描かれている。
    また『聖徳太子』で太子自身が気にかけていた
    山背王の人間性が悪い方向に行く様も。。。

    聖徳太子があまりにも偉大であった故に、
    凡人であった山背王が生涯抱えることとなるコンプレックスとプレッシャー。
    史実に基づき、違和感なく山背王の心根を捉えている。

    聖徳太子は後世に偉大なる聖者として崇め奉られているが
    実母と推古天皇の血の確執、子供達との葛藤、
    さらに馬子や蝦夷との政治的な考え方の相違等、
    苦悩の生涯だったのではないだろうか。
    でもあんまり好きになれないわ(笑)気の毒だなっては思うけど。
    結構重い話だった(涙)

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著者プロフィール

黒岩重吾

一九二四年大阪市生まれ。同志社大学法学部卒業。在学中に学徒動員で満州に出征、ソ満国境で敗戦を迎える。復員後、証券会社などに勤務しながら、「近代説話」の同人として小説を執筆。六〇年『背徳のメス』で直木賞、八〇年『天の川の太陽』で吉川英治文学賞を受賞する。九一年紫綬褒章受章、九二年菊池寛賞受賞。二〇〇三年死去。

「2021年 『斑鳩王の慟哭 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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