プレゼント (中公文庫 わ 16-1)

著者 :
  • 中央公論新社
3.39
  • (32)
  • (122)
  • (206)
  • (19)
  • (8)
本棚登録 : 1105
感想 : 143
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122033061

作品紹介・あらすじ

ルーム・クリーナー、電話相談、興信所。トラブルメイカーのフリーター・葉村晶と娘に借りたピンクの子供用自転車で現場に駆けつける小林警部補。二人が巻き込まれたハードボイルドで悲しい八つの事件とは。間抜けだが悪気のない隣人たちがひき起こす騒動はいつも危険すぎる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 職を転々とする中で何故か事件を引き寄せる葉村晶と、娘の自転車が主な移動手段という一見ほがらかな風体の中に鋭さを隠し持つ小林警部補の連作短編集。

    『ぼくのミステリな日常』を読んで宮部みゆき氏に似てるかなと思ったけれど、続けて読むとやはり違うかなという印象。
    でも、くせのない真っ直ぐな文体は読み易くて、読むのが遅い自分でもさくさく読める。

    序盤はそれぞれ独立した主人公達の物語だが、最終章で待ってましたとばかりに交錯する。
    なんと言っても葉村パートが面白過ぎる。
    20年以上前の作品にして、女性主人公で面の皮が厚過ぎる言動、怪しい状況・ありきたりの展開に対する冷めた皮肉交じりの一刀両断っぷり。
    それでいて姉達との歪んだ確執を抱え込んでいたり、ふとした瞬間に見せる繊細さのギャップ。

    事件の究明やフーダニット、ホワイダニットもさることながら、やはりこの人物の生き様を読むのが楽しい。
    正直、小林パートなんて、なんかぼんやりしていて要らないんじゃあとも思ったけれど、最終的には緩急という意味でも、最後のまとめという意味でもあるべくしてあるものなのかなとも思った。
    続編もこの2人で展開していくのだろうか。

    • 111108さん
      fukayanegiさん
      お返事ありがとうございます!

      葉村晶、ハードボイルドを好きなfukayanegiさんから見ても稀有なキャラクター...
      fukayanegiさん
      お返事ありがとうございます!

      葉村晶、ハードボイルドを好きなfukayanegiさんから見ても稀有なキャラクターなんですね。ちょっとドタバタ気味でもありますが、何か爽快感ありますよね。

      御子柴くんシリーズはだいぶ前読んだのでうろ覚えです。御子柴くんも小林警部補も前に出ないタイプ(巻き込まれタイプ?)なイメージで2人とも薄いという印象でしたがw
      葉村×小林×御子柴で意外な着地となったんでしょうか?

      『依頼人は死んだ』レビューそのうちに楽しみにしてます♪

      2022/08/14
    • fukayanegiさん
      111108さん

      よく分かりにくいコメントでしたね、すみません。
      同じこの本でのデビューだったのに、片やドラマ化されるほどの人気主人公に、...
      111108さん

      よく分かりにくいコメントでしたね、すみません。
      同じこの本でのデビューだったのに、片やドラマ化されるほどの人気主人公に、片やスピンオフ的に冠タイトル持った作品出してもらえているのに、小林警部補だけスポットライトが当たらず可哀想かなと思いまして。

      まだこの作品しか読んでないので、実は何処かで重要な役柄担ってたりしたら余計なお世話なんですけどねw

      111108さんの幅広なレビューも楽しみにしております!
      2022/08/14
    • 111108さん
      fukayanegiさん

      あーなるほど。葉村晶ならドラマ化されましたもんね。御子柴くんも受け身キャラが物語回すのに適していたのかも。小林警...
      fukayanegiさん

      あーなるほど。葉村晶ならドラマ化されましたもんね。御子柴くんも受け身キャラが物語回すのに適していたのかも。小林警部補は数多あるシブい警察官キャラに飲まれてしまったのかもしれませんね。重要な役担ってたかも‥やはり記憶曖昧ですw
      2022/08/14
  • 曇天のイメージの一冊。

    初、葉村晶シリーズ。これが噂の…!
    しかも短編集で、葉村晶、小林警部補のミックス盛り。

    なんだかお得感いっぱい。

    先に味わった葉崎市シリーズは何となく太陽のイメージだとすればこちらは静かな曇天のイメージ。
    曇天の中で味わう苦味、毒もなかなかのものだ。

    どれも決してスカッとしない、太陽の光が差すかのような気配もない、こういうのも好きだわ。

    小林警部補の自転車が唯一の笑いと明るさかな。自転車こぎこぎ、ナマで見たい。

    葉村晶の人となりが徐々にわかっていくようなこの過程も良かった。次は長編で会えるのかな。

  • ハムラアキラシリーズ、依頼人は死んだ以来の二作目です。前にも感じたのですが、文章とハムラアキラのざらっとした感じがとても合っていて心地よいのです。ハムラアキラが年齢を重ねてどうなっていくのか、とても楽しみです。また、追いかけたい探偵が増えてしまいました。

  • 20代の葉村晶!小林警部補の倒叙物と交互に話は進み最後の物語で出会う(御子柴君とも)短編集。どっちも楽しくお得感満載。この頃から「トラブルを引き寄せる体質」よくぞ40代まで頑張ってるな〜

  • 若竹七海『プレゼント』中公文庫。

    葉村晶と小林警部補シリーズの短編集。8編を収録。

    『海の底』。平淡な弛いストーリーは、終盤に一気に畳み掛けるようにフリーター・葉村晶が名推理を展開する。それまでの弛い雰囲気は一転して引き締まる。そして、最後に名言。

    『冬物語』。過去に騙された知人に復讐殺人を企てた男が、その犯罪を小林警部補に暴かれるという他愛の無い短編。

    『ロバの穴』。フリーター・葉村晶が登場する短編。事件解決後にまたも名言。パターンだな。

    『殺人工作』。小林警部補が登場する短編。可もなく不可もなく。

    『あんたのせいよ』。探偵・葉村晶が登場する短編。いつの間にか事件は解決する短編

    『プレゼント』。表題作。小林警部補が登場する短編。ひねったね。


    『再生』。探偵・葉村晶が、またもいつの間にか事件を解決するという感じの短編。

    『トラブル・メーカー』。探偵・葉村晶と小林警部補のコラボ短編。珍しく葉村晶が痛い目に遇わないなと思ったら……

    本体価格705円
    ★★★★

  • 葉村晶シリーズ一作目。
    この作者さんは初挑戦なんですが、文体に何故かあまり馴染めず、読むのに少し時間がかかってしまった(後半は流石に慣れたけど)
    ハードボイルド調というか、良くも悪くも淡々と冷めた感じで個人的にあまり好みではないけど、葉村晶の雰囲気にはピッタリなので、違和感は感じなかった。
    8つの話からなる短編集なのですが、その殆どが後味が悪い... 人の悪意や汚さをこれでもかと描写していて、なかなかシンドイところも...
    というか葉村晶の周りの人たちクズが多すぎる...そりゃあんな性格になるわ...

  • 最近話題の葉村シリーズの第1作という事で、期待して読み始めたが可もなく不可もなくと言う感じかな。

    この本は丸ごとが葉村晶の話ではなく、小林警部補との話しが交互に出てくる作りになっている。個人的にはこの段階では小林警部補の方に親しみを感じる。

    こちらをシリーズ化しないで、葉村晶をシリーズ化したのは作者の考えがあったのでしょうが勿体ないな。

    葉村シリーズも本は購入済みなのでこれから楽しみたい。

  • 何だか読む順番が滅茶苦茶になっているのだけど、もう仕方がないな。
    ここに至って、葉村が最初に登場したこの本。
    葉村が出てくる話と、小林警部補&御子柴君のコンビが出てくる話が交互にあって、最後の話で3人が交わる。

    葉村は、2話目に『26歳になる』と出て来て、その後の話では28歳。3話目では長谷川探偵事務所に勤めていて、最後の話では辞めている。
    背表紙には“トラブルメイカーのフリーター”とあるが、正確には最終話の作中で長谷川が言うように『トラブルのほうが、彼女を慕ってやってくる』ということで、既にこの頃から、“世界で最も不幸な探偵”の片鱗。
    禄でもない知り合いたちにかき乱されながら、熱中し出すと止まらない性格で危なっかしい目に合うのも、今に続く。
    どの話もサラリと読めてチト物足らない感は残るが、小林のパートも含めてそれぞれ良く練られていて、ビターでダークな結末も最早お馴染み。

  • 葉村晶と小林警部補の話が交互に繰り広げられる短編集。
    葉村がまだ少し若い頃でなんだか感慨深かった。
    ドラマで見た姉の話はこれかあとようやく見つけた感じ。
    相変わらず葉村のところには理不尽な人々が現れる。
    対して小林警部補の話は、先に犯罪というか事件の当事者から始まる。サスペンスドラマのよう。
    全体的にダークというかシニカルというか、そんな雰囲気を醸し出してるような感じだけど、文章がテンポ良く読みやすかった。

  • テレビドラマ化された葉村晶シリーズの最初の1冊目を読み終えた。短編集のような作りで、葉村晶以外が主人公のパートがあったりして、羽村晶シリーズとはいえそれ以外の作品も混ざっているのかと思っていました。読み終えてみると、それらは全て表裏で絡み合っていてひとつの話を構成していたらしい。また、これから展開する話の伏線となっているらしい。なんてことを想像(?)しています。

全143件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒。1991年、『ぼくのミステリな日常』でデビュー。2013年、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。その他の著書に『心のなかの冷たい何か』『ヴィラ・マグノリアの殺人』『みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない』などがある。コージーミステリーの第一人者として、その作品は高く評価されている。上質な作品を創出する作家だけに、いままで作品は少ないが、受賞以降、もっと執筆を増やすと宣言。若竹作品の魅力にはまった読者の期待に応えられる実力派作家。今後ブレイクを期待出来るミステリ作家のひとり。

「2014年 『製造迷夢 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

若竹七海の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×