中空構造日本の深層 (中公文庫 か 54-1)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122033320

感想・レビュー・書評

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  • 主旨としては前半1/3ほどに凝縮されている。

    中空構造とは、文字通り「中心」が空っぽということである。
    つまり、絶対的中心の存在があり、その周辺に一般大衆が存在するという西洋的構図ではなく、AとBがあり、それらのカウンターバランスによって社会がバランスしているということだ。
    これを神話や昔話を例に挙げ、実に明快に説いている。

    日本人と西洋人が根っこの深いところでは決して共感できない部分があるのは、このためなのだろう。
    もっと突き詰めて言えば、島国と大陸との溝は、ここにあると思う。
    父性原理に基づく西洋思想(大陸思想)と母性原理に基づく日本思想(島国思想)。

    それらをわかった上で生きるのと、分からずに生きるのとでは、雲泥の差。

  • ★★★2021年3月★★★


    東日本大震災から10年が経った。
    本著は、日本神話の分析から日本人の特性、深層心理を明らかにしようとするものである。日本は「母性社会」であり、中心をもたず、あらゆるものを包括的に包み込むような特性があると筆者は述べる。
    『古事記』で、アマテラス、スサノヲと比してあまりにも存在感の希薄なツクヨミ。このツクヨミのような「無」の存在を中心に置くこと。そして、一方が他方を駆逐するような物語は日本では見られないこと。
    これが「母性社会」日本の特徴か。
    西欧は「父性社会」で、物事を分断して考える。

    現代の日本で起きている家族の問題についても
    このような日本人の特徴をしっかりと考えて対処しなければいけない。
    僕も気が付けば30代後半になり、子供2人。
    人の心は分からない。今後、河合先生の本を読みながら考えることが増えそうな気がする。

  • もっと神話構造と政治・社会の対応だけに区切った分析なのかと思っていましたが、非常に幅の広い内容に驚かされました。

  • 真ん中に「空」を置くことで、対極にあるものを、ある意味バランスを取るという考え方は、良くも悪くも調和を重んじる日本人的な気質を象徴するような考え方だ。
    中でも聖書と神話の構造の違いの解説はとても興味深かった。

  • 中心で統合するのではなく,周辺部の力の均衡を取る構造。
    合力としての凝集性ではなく,正と負(陰と陽)の両面を以て一体とする。中心には空という核が想定される。その核は大きな力を持たない。

    日本や西洋といった大きな対象について論じるが,個人にも同様の構造が認められるのか。

    古事記,おそるべし。神話,あなどりがたし。

  • 日本における父性の弱さとそのラディカルな対応に警鐘を鳴らすその的確なことよ。
    個々人が文化環境から形成された内面をみつめ理解しなければ、対応策はないとの処方箋までしめしてくれているのに・・・。

    現在の青年の心象をよみとっているところが抜群に興味深い。

  • 36182

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    神話や昔話を題材に日本人の深層を分析している。
    この本を読んで気がついた事は自分が当たり前と思っていたことが日本神話や日本の昔話の内容に関連付けられることに驚いた。特に気になったのは日本人の中心が中空構造であり、周辺でバランスをとるような構造になっているということだ。
    この本で書かれている日本の中空構造は2017年現在でも存在していると感じることがある反面、時代が強力な中心の誕生を望んでいるように感じることがある。
    中空構造で有り続けることは日本が暴走した際に止める存在がないという状態になりそうだし、強力すぎる中心は独裁になる危険性が存在していると思う。これからは弱めの中心を持ちつつ、中空構造でバランスを取ることができないだろうか。
    それこそ地球と月のように相互に影響を与えるような状態が良いのではないだろうか。

  • Ⅰ 神話的知の復権/『古事記』神話における中空構造/中空構造日本の危機
    Ⅱ 昔話の心理学的研究/民話と幻想/「うさぎ穴」の意味するもの/日本昔話の心理学的解明
    Ⅲ 現代青年の感性/象徴としての近親相姦/家庭教育の現代的意義/偽英雄を生み出した「神話」/フィリピン人の母性原理

    日本人の心の構造の特殊さを見せてもらった。言葉で表現することの難しさを横においておけば、なかなか面白かった。父性か母性か、外向か内向かという図式は大まかな性質を見るうえで分かりやすい。それぞれに納得したり疑問を持ったりしながらゆっくり時間をかけた読書をしましたw

  • 「中空構造日本の深層」河合隼雄著、中公文庫、1999.01.18
    274p ¥740 C1111 (2017.12.18読了)(2017.06.08購入)(2008.06.30/3刷)

    【目次】

    神話的知の復権
    『古事記』神話における中空構造
    中空構造日本の危機

    昔話の心理学的研究
    民話と幻想
    「うさぎ穴」の意味するもの
    日本昔話の心理学的解明

    現代青年の感性
    象徴としての近親相姦
    家庭教育の現代的意義
    偽英雄を生み出した「神話」
    フィリピン人の母性原理
    あとがき
    解説  吉田敦彦

    (「BOOK」データベースより)amazon
    日本人の心の深層を解明するモデルとして『古事記』神話における中空・均衡構造を提示し、西欧型の中心統合構造と対比させて、その特質を論究する。人間の内界を記述するものとしての神話・昔話、さらにはファンタジー作品などの分析を通して、人類の深い知恵を導き出す刺激的論考。

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