混沌からの出発 (中公文庫 い 23-4)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122033689

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  • 作家の五木寛之と中国文学者の福永光司が、古代から現在にまで至る日本文化の根底に道教の影響があるという考えを語っている本です。

    福永は、「南船北馬」という言葉を手がかりにして、中国大陸南部の漁労と稲作に基づく農耕民族の文化を「船の文化」、北部の騎馬民族文化を「馬の文化」と呼びます。そして、「馬の文化」が儒教を生んだのに対して、「船の文化」においては道教的伝統が育まれてきたと主張しています。さらに、この「船の文化」が日本古代の信仰の中にも道教の影響が浸透しているという主張が展開されます。もちろん、こうした福永の主張の系譜をたどるならば、柳田国男の「海上の道」などの説を見ることも可能でしょうが、もっとも直接的な背景としては、彼自身もその一員である京都大学人文科学研究所を拠点とするいわゆる新京都学派の「照葉樹林文化」論の影響を見ることができるように思います。

    また、中心よりも周縁の文化に関心を抱いてきたという五木は、道教文化の中にある混沌たるものに対する尽きない興味を語っています。

  • 異なるものを受容し、溶け合って変容しながら時代を超えて流れ続ける、そんな道教こそ一神教的思想の元での発展が躓き、多様性を許容できる社会に向かっていくことが求められているこの時代には必要なんだろう。
    思っていたよりも濃く、深く、道教の思想が日本の古代から取り出せることに驚いた。
    むしろ日本こそ道教の思想を体現できる、してきた国なのかも。

  • 偉大なる何かの存在を、我々は無意識の中に知っていて、それを受け入れている。それが宗教や思想、理論や哲学であろうと、解釈の仕方は違っていても、この感覚は共有しているはず。そんなことを学ばせてくれる本でした。

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著者プロフィール

1932年、福岡県生まれ。作家。生後まもなく朝鮮半島に渡り幼少期を送る。戦後、北朝鮮平壌より引き揚げる。52年に上京し、早稲田大学文学部ロシア文学科入学。57年中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『百寺巡礼』『生きるヒント』『折れない言葉』などがある。2022年より日本藝術院会員。

「2023年 『新・地図のない旅 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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