情報の文明学 (中公文庫 う 15-10)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122033986

作品紹介・あらすじ

物質とエネルギーの産業化から、精神の産業化へ-。情報産業社会の到来をいち早く予告し、その無限の可能性を人類文明の巨大な視野のもとに考察した、先見性と独創性に富む名著。

感想・レビュー・書評

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  • 読みやすい本ですが、この本から受ける衝撃は長く続くはずです。本書は、梅棹氏が60年代初頭に「情報産業」(同氏の造語とされています)の到来を正確に見通した類例のない予言の書です。当時、営業を開始したばかりの新幹線を、人や貨物の運搬ではなく、情報を運搬するものと定義し、情報産業に位置づける箇所は、いまもなおスリリングです。
    (ブクログ ITエンジニアに読んでほしい技術書・ビジネス書 推薦文)
    https://www.shoeisha.co.jp/campaign/award/2017/recommend#reco01

  •  梅棹忠夫氏が「情報産業論」を最初に論じられたのは1962年ですが、その後の時代の流れを正確に見通していることに驚きました。生物の発生学にもとづいて情報産業を外胚葉産業と例えた着眼点もさることながら、情報の意味と価値に関する認識を改め、情報経済学までも打ち立てようとされています。

     特に情報産業時代の価格決定システムとして提案されている「お布施原理」には目からうろこが落ちる思いでした。一般にモノの価格は需要と供給で決まりますが、情報の価格は売り手の格と買い手の格で決まるという洞察されてます。実際に現代社会ではソフトやコンテンツに対して正規料金を支払う人もいれば、で無料でダウンロードする人もいます。このお布施理論は来るべき「評価経済社会」にも通じるものを感じます。

     また、梅棹氏はマーケティングについても先見性があったようです。梅棹氏が80年代以前から指摘していた体験情報の重要性や顧客ニーズの個別化の動きは、その後「経験価値マーケティング」や「1to1マーケティング」としてMBAコースでも教えられています。

     コンテンツビジネスについても、80年代当時に民放が情報の価値を理解せずに古いフィルムを廃棄していた一方で、梅棹氏はビデオオンデマンドの構想を先駆けて打ち出し、ライブラリの構築を進めていました。

     現代では当然と考えられていることを40年以上前に予見した梅棹氏の思考の根底を理解することは、この先に起きる変化に対応する際に必須かもしれません。

  • 授業にお呼びしたゲストが今読むべき本として挙げていたので購読。情報産業の勃興からの変遷、その意義や将来予測を行なった論文や対談、講演等をまとめたもの。農業社会から工業社会となり、情報化社会となることをいち早く見抜いていた先見性は驚くばかり。ビックデータ解析やAI判断など、当時はピンとこなかっただろう。面白いのは、情報とはビットで表されるものだけではなく、芸術や音楽、動物の行動なども全て情報であるという考え方。これは、SFCの環境情報学にも通ずるものがある。本書の予言でまだ実現していないものがあるとすれば、こういった「情報」の取り扱いかなあと思うが、何が来るのか引き続き考えてみたい。

  • 半世紀も前に今日の情報化社会を見事に予見していた著者。
    【農業】→【工業】→【情報産業】
    元の論文「情報産業論」は新聞以外のマスコミ創成期である1962年に発表され、当時の時代背景は良くわからないが、ラジオからテレビの時代に入り、直接口に入るもの、もしくは、工場で生産された工業製品でもない、情報というものの価値について語る。

    コンニャク情報論…コンニャクは食べてもほとんど消化されず栄養物として価値の無い食品であるが、われわれはこれを食品として常用し、そのために大規模なコンニャク栽培もおこなわれている。これはいったいどういうことか。
    →栄養価がないからといって、食品として無価値であるとはいえない。
    →情報というものには、かなりの程度にこのコンニャクに似た点がある。

  • 糸井重里さんのご紹介から、読みました。情報産業論のお話には、圧倒され、現代社会が、梅棹先生のお話の世界になっている状況に、ただただ、言葉がありません。オススメしたい一冊です。

  • なんでも情報産業に結びつけてる。薬だってそうだそうな。
    こんな昔に現代を予見していてすごいみたいな書評を見た気がするが、全然予見してない。たまたま情報産業という名前を使ってることと、かの時代に起こりはじめたソフト的な産業について話しているだけじゃないのか。
    それが重要だと言ったくらいなもので、重要とかってよりも、これもそう、あれもそう、あっちもそうじゃん!情報じゃん!ってことを書いたにすぎず、昔に特に注目を集めた時期もあるようだけどイマイチよくわからん。

    僕の理解が少ないのでしたらすみません。そのうちまた読み返します。

  • 初めて梅棹先生の本を読みました。
     読めば「1960年代に、この現代を見抜いていた」という慧眼に感服することは間違いないと思います。過去・歴史の分析と、現在に起こっている事象との相違・繋がりを、絶妙な「言い換え」によって表現し、そこから未来を読む。この「言い換え」が梅棹先生の慧眼に結びついているのではないか?と感じました。
     分かりやすい例えもあれば、一読では理解しがたい表現もあり…だからこそ余計に、好奇心を掻き立てられるのかも。読むのに難儀して、一旦置くんだけど、時間をあけるとまた読みたくなり…を、読み切った後もしばらく繰り返しそうです。

  • 昔とった杵柄・・とはこのこと。しかし内容はむしろ今こそ読み返されるべきものだと思いました。情報=コンピュータと思い込んでしまう世代にはとくに情報の本質を感じさせる本です。

  • むつかしかったけど、ちょっと面白かったです。
    新幹線は一見、運輸業にみえるけど情報産業として捉えている著者が面白く感じました。
    内胚葉産業とか中胚葉産業とかは、さっぱり理解できなかったです。

  • 「文明の生態史観」などで有名な梅棹氏ですが、本書も梅棹作品の古典の一つということで、やっと手に取る機会ができました。本書の内容は1960年代に書かれているということですが、「情報産業」なるものが勃興しつつあること、それはこれまでの主要産業であった工業とは全く異質で、梅棹氏の言葉を借りれば、工業は物質的充足度を追求しているのに対して、情報産業は精神的充足度を追求するものになる、という主張は2019年に読んでも大変説得力があると感じました。

    梅棹氏の用いる喩えは、理論的に正しいのかどうかというよりも、そのユニークさと頭の中に残る粘着度が非常に高い。例えば、人類史を紐解くと主要産業が農業→工業→情報産業と発展しているが、これを人間の部位にあてはめてみようということになる。すると、農業は消化器官系を中心とした「内胚葉」にあたり、手足の強化にあたる工業は筋肉を中心とする「中胚葉」に該当する。そして情報産業とは脳神経系、あるいは感覚器官を中心とする「外胚葉」に該当することになる。つまり情報産業が主要産業になる世界とは、梅棹氏の主張によれば、人間の「外胚葉」の進化を促す世界であり、人間進化の最後の段階ということになるわけです。

    そのほかにも、工業がいわゆる実業であるのに対して、情報産業は虚業であること、ただし虚業はポジティブな意味として捉えるべきであるという主張がなされています。数学でも実数と虚数があって、その両方で複素数平面が構築されるように、工業と情報産業があわさって、ようやくすべての領域が表現されるようになるのだ、という喩えも使われていました。

    もう一つの有名な喩えが「お布施理論」でしょう。つまり情報産業のアウトプットに対する価格付けです。工業製品であれば原価を積み上げて適正利益率を上乗せして値段をつけるという「お作法」がありますが、情報産業の商品(例:動画、コンサルティング)の値付けはどうなるのか、という問いに対して、梅棹氏は「お布施」と同じだと断言するわけです。お布施の額がどう決まるかと言えば、檀家の格とお寺の格に依存する。両変数が高ければ高いほどお布施の額が高くなる。つまりクライアント(檀家)とサービス提供者(お寺)の格で決まるのだ、ということで、この考え方が完全に正しいかどうかは別として、2019年現在に照らしても、なるほどそうかもしれない、という気にはなりました。50年以上前の古典ですが、デジタル化が大きく進む昨今においてもかなりの説得力がある内容だと思います。

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著者プロフィール

1920年、京都府生まれ。民族学、比較文明学。理学博士。京都大学人文科学研究所教授を経て、国立民族学博物館の初代館長に。文化勲章受章。『文明の生態史観』『情報の文明学』『知的生産の技術』など著書多数。

「2023年 『ゴビ砂漠探検記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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