新釈落語咄 (中公文庫 た 56-1)

著者 :
  • 中央公論新社
3.42
  • (5)
  • (12)
  • (25)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 149
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122034198

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ★★★★★

    古典(落語)を解釈する、とはこういうことだったのか。

    僕は決して落語に明るい方ではないが、落語に古典と新作があるくらいのことは知っている。

    古典はクラシック音楽みたいなものなので、基本的なスジは変えずに細部をちょっと変えてみたり、演じ方を工夫したりして落語家各自が独自性を出すのだろうと思っていた。

    その理解は(他の落語家のことはよく知らないが)立川談志に関しては間違っていた。ごめんなさい。

    談志の解釈はそんな水遊びみたいなものではない。

    彼は自分で立てた落語が落語たるための条件「業の肯定」という柱にそって山ほどある古典落語を再解釈していく。

    本書を読んでいるときにたまたま聴いた古典落語のひとつ「やかん」において、その違いが明らかだと実感できた。

    「やかん」は、長屋に住む八公がいろいろな質問をし、それにご隠居が独自の解答を返していく落語で、二人のやりとりの妙が見所だ。

    名人三遊亭圓生の「やかん」は、八公が子供のようにする「なぜ」「どうして」という質問に、物知りを自認するご隠居が困りだす様子が面白い。

    おそらくこれがオーソドックスな「やかん」なのだろうが、談志のはこれがひっくり返る。

    談志の「やかん」では、八公が子供のように質問を繰り返すのは同じだが、ご隠居の方が完全に一枚上手なのだ。

    「雷は電気だっていいますけど」
    「電気なわけねぇじゃねぇか、ランプの時代からあったよ」

    「海はなんで大きいんです?」
    「小さいと池と間違われちゃうからね」

    「そういうことでいいんですか?」
    「何が悪いの」

    圓生版と談志版では登場人物の立ち位置がまるっきり違う。

    ちょっとやそっと細部をいじるのではなく、ここまで根本からやり直すのが談志の解釈なのだ。

    その分析力、解析力たるや凄まじいものがあるのだが、ただの理屈に終わらず、ちゃんと体感を捕まえているのがなお凄い。

    あとがきで爆笑問題の太田光が談志の落語をセックスに例えているが、これもまた言い得て妙というか、大した慧眼だ。

    物語を構造物として捉えるのは分析する上では大切なのだけれど、いざやるとなったらそれを一連の流れ、運動として捉えなければライブ感が消えてしまう。

    僕はそれを宮崎駿や出崎統の作品から学んだけれども、立川談志にも同じものがあると感じた。

  • 立川談志追悼という帯につられ買ってしまったが、おもしろかった。
    読んでいると彼の姿が目に浮かんでくるようだ。

  • 前半で噺のすじを語り、後半であらを語る。なんつって。
    ま、概ね、そんなカンジ。後半の解釈はまちまちだけど、前半のすじはさらっと書いてるのにわかりやすい。さすが。

    伝統をそのまま演るのではなく、自分の頭と心でちゃんと向き合ってから、演る。
    解説風に言うならばヤる。落語もセックス。古典と交わりイカせたり、イカせられたり。神を降ろす、なんつーと、巫女っぽい。落語家ってーのは古典と交わる様を見せて、客を陶酔させてくれる、ストリッパーみたいなもんとかね。蛇足か。

    しかし、あれだね。好きじゃないけど、さすがに上手いね。太田光。よーわからんもんを、こう、くっと捕まえる力がさ。

  • なぜか 2巻から先に読んでしまったので、1巻も読んでみた。

    なんか最近、爆笑問題の太田が政治づいていると思ったら、どうやら談志の影響らしい。

  • 何度読み返しても愉快でいーや。
    落語はやっぱ最高だね。
    落語は人生豊かにするね、間違いない。
    人間的にも幅が広がるとおもーよ。

  • 談志家元は、天才だ。<br>
    天才というのはきっと、世の「了見」について目が利き鼻が利く人のことなのだろう。<br>
    この本を読んで改めて感じる。家元、見事なり。

  • よむよむ第56回

  • 落語をもしかしたら好きになれるかもしれないと思った。

  • 書かれた落語なのに面白い。

  • 面白い。落語ハマった。

全10件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

落語家、落語立川流創設者。1936年、東京に生まれる。本名、松岡克由。16歳で五代目柳家小さんに入門、前座名「小よし」を経て、18歳で二つ目となり「小ゑん」。27歳で真打ちに昇進し、「五代目立川談志」を襲名する。1971年、参議院議員選挙に出馬し、全国区で当選、1977年まで国会議員をつとめる。1983年、真打ち制度などをめぐって落語協会と対立し、脱会。落語立川流を創設し、家元となる。2011年11月逝去(享年75)。

著書には『現代落語論』(三一新書)、『談志百選』『談志人生全集』全3巻、『立川談志遺言大全集』全14巻(以上、講談社)、『談志絶倒 昭和落語家伝』(大和書房)、『談志 最後の落語論』『談志 最後の根多帳』『立川談志自伝 狂気ありて』(以上、ちくま文庫)、『談志が遺した落語論』『江戸の風』(以上、dZERO)などがある。

「2021年 『談志の日記1953 17歳の青春』 で使われていた紹介文から引用しています。」

立川談志の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×