辻留ご馳走ばなし (中公文庫 つ 2-9)

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  • 中央公論新社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122035614

感想・レビュー・書評

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  • 「日本らしさ」という安易な言葉は嫌いだが、強いてその言葉の意味を探ると行き着く先は日本の料理ということになるのかもしれない。もちろん京料理とその他の地域の料理は違うし、そもそも料理屋でいただく料理と家庭料理は全く違う。だが、日本がそれまで影響を受けてきた外国の文化や、国土の名産の「旨味」が一番濃縮されたのが日本の料理ではないか。
    蘊蓄を語りながら食べる料理は味気ないが、料理のバックボーンを知っていただくのとそうでないのでは味の深みが違う気がする。

  • 美味しくて為になる随筆でした。それにしても昔の人はやることが洒落てますね。金銭を直接渡すのではなく修行の為若い者に毎日鯛を一本持ってこさせて調理させるなんて。そう言う表立たない地道な引き立ては粋だなあと思います。
    昨日たまたま世界のレストランランキングで1位になったと言うコペンハーゲンのお店のドキュメンタリーを見たのですがどこの料理も目指すものは素材そのものを感じさせる素材の味なのかなあなんてぼんやり思いました。

    とりあえず今日は牡蠣雑炊!を作ってみます。楽しみです!

  • 辻嘉一は、105年前の1907年1月2日に生まれて24年前の1988年11月17日に81歳で亡くなった京都の老舗懐石料理の店・辻留の二代目。

    私は食べることが好きと同時に料理することも大好きで、それとともに食物や料理・栽培・農業など食べることに関するありとあらゆる問題に興味と関心があります。

    辻嘉一お師匠さんは、もちろん直接薫陶を受けたわけではありませんし、京都生まれだからといって辻留にもたった一度連れて行ってもらっただけで、そもそも料亭料理そのものが庶民の日常の食事とは縁もゆかりもないよそ行きのいってみれば虚構の料理です。

    ただ師匠に注目したのは、食材に対する眼差しや調理の際の所作、あるいは料理そのものを単に作って食べて美味しいというだけでなく、風や光や四季を交えた風情の中で、生きることの本質にかかわる行為として誰よりも真剣な姿勢でおられると本を読んで感じたからです。

    ところで、料理というか食べ物というか食に関する本で初めて私が読んだ本は何だったのか?

    金子信雄の『楽しい夕食』なのか、中尾佐助の『料理の起源と食文化』なのか、『平野レミ・料理パレード』なのか、郡司篤孝の『危険な食品』なのか、玉村豊男の『料理の四面体』なのか、ブリア・ヴァサランの『美味礼讃(味覚の生理学)』なのか、辰巳芳子の『手しおにかけた私の料理』なのか、北大路魯山人の『魯山人味道』なのか、江原恵の『生活のなかの料理学』なのか、津村喬の『食と文化の革命』なのか、池波正太郎の『剣客商売 包丁ごよみ』なのか、大塚滋の『食の文化史』なのか、うえやまとちの『クッキングパパ』なのか、沢村貞子の『わたしの献立日記』なのか、太田竜の『日本の食革命家たち』なのか、辰巳浜子の『娘につたえる私の味』なのか、丸元淑生の『いま、家庭料理をとりもどすには』なのか、内田百閒の『御馳走帖』なのか、鶴田静の『ベジタリアンの文化誌』なのか、思い浮かぶ本を書き並べても、これだという実感がありません。

    中でもやはり師匠は特別の存在で、芸事にも似た艶っぽさや粋を感じて、うっとりあこがれて料理に関する心構えや所作を学んで、その全著作から彼の全体像を体現するべく精進してきました。

    その結果、包丁さばきや素材選び任意の材料から最適な料理をいかに素早く美味しく作るかなどはお茶の子さいさいで、お店を開けばと口走る人もいますが、とんでもない平野レミ風に料理愛好家然としている方がいいに決まっていると思っています。

  • 京都に旅行に行った際、たまたま通りがかった本屋の店先に平積みになっていたものを購入。なぜ買ったのかは思い出せませんが今でも時々読み返しています。レシピを知る類の本ではなく、辻さんが生きた時代を食を通して、美しい言葉遣いで知ることのできる本です。

  • 説明不要の「辻留」先代主人のコラムを没後にまとめたもの.落ち穂拾いのような内容なのだが,特に家庭の身近な総菜中心にまとめられているので,それなりに実用性は高い.但し図版は無いので盛付けの美しさを賞玩する事は出来ない.
    どうでもいいのだが,ここんちの主人は親子して私と名前が似ていて嫌なんだよなぁ.
    さらにどうでもいいことなのだが,この本を読んで眠った夜,京都の辻留に弁当を誂えに行ったら当主が死んで葬式をやっている夢を見た.もちろん現実には御本人は健在である.

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