完訳フロイス日本史 (4) (中公文庫)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122035836

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  • 歴史とは勝者のものだと言われる。勝者の都合の良いものばかりが語られると。
    この完訳フロイス日本史4は豊臣秀吉の天下統一の頃を記録したものだ。ここに記載されている豊臣秀吉は、私が思っていた彼とはずいぶんと違う。キリシタンを弾圧した秀吉だから、彼に対して並々ならぬ増悪がフロイス氏にあったとしても、彼が書き残したものがすべて嘘とは限らないだろう。当時の人たちが彼を恐れて書けなかったことをフロイス氏がある程度は『盛って』書いたとしても、それを抑えめに修正して読んだとしても、秀吉は相当な最低な人間だ。
    フロイス氏の秀吉への評価は辛辣だ。『きわめて陰鬱で下賤は家から身を起こし』『彼は身長が低く、また醜悪な容貌の持ち主で』『彼は尋常ならぬ野心家であり、その野望が諸悪の根源となって、彼をして、残酷、嫉妬深く、不誠実な人物、また欺瞞者、虚言者、横着者たらしめたのである』『彼は日々数々の不義、横暴をほしいままにし、万人を驚愕せしめた』などなど…
    私が思い浮かべる秀吉は、成り上がりの人たらしで冷酷な面もあるものの、田舎訛りの言葉を話すどこか憎めない人物であったが、フロイスが書き残した秀吉を知ると、別人のようである。

    秀吉は大阪城に300人余りの婦女を囲っていて、そのうち50名は織田信長らがかつて囲っていた者だと書かれていた。それを読んだ時、えもいわれぬ恐ろしさを感じた。私がその時ふと思い浮かべた映像は、安土城から大阪へ向かう婦女らの姿だ。大河ドラマで見られるようなきらびやかな衣装の姿ではなく、乞食とも思えるようなみすぼらしい格好の、白粉のはげた顔をした惨めな奴隷としての女たちが、行列を作ってとぼとぼ歩く姿だった。もしタイムマシーンがあったとして戦国時代に行ったとしたら、我々が思う以上に貧相で猥雑な鬱々とした世界があるように思う。フロイスのこの日本史を読んでそう思った。

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著者プロフィール

ルイス・フロイス

一五三二年(天文元年)、ポルトガルの首都リスボン生まれ。十六歳でイエズス会に入会。六三年(永禄六年)来日。八三年(天正十一年)、日本副管区長から「日本史」の編述を命ぜられる。秀吉の伴天連追放令の後、マカオに退去したが再び日本に戻り、九七年(慶長二年)、長崎で没する。長い布教活動を通し、信長との会見は十八回にわたり、多くの戦国武将との面識を得た。

「2020年 『回想の織田信長 フロイス「日本史」より』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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