ハネムーン (中公文庫 よ 25-3)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 207
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  • Amazon.co.jp ・本 (166ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122036765

感想・レビュー・書評

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  • 可愛い装丁とタイトルから想像していたものと違った。
    まなかと裕志のハネムーンにまつわる物語。複雑な事情があり、まなかと家族同然になった裕志。
    大切な人の悲しみに寄り添い一緒に乗り越える話、不思議な空気感でした。ぞくっと、えっ、とした描写もあるのですが、ストーリー性というより、吉本ばななさん(だからこそ)が書かれたい世界観なのだと伝わるものがありました。
    自分がこの世にいることを肯定してくれて、安心して身を任せられる存在があることの素晴らしさを感じました。
    この作品では釜揚げうどんが出てくる(無性に食べたくなった)。食べるそして生きる。
    ひとつひとつの場面を味わい、背中を押されているよう。重い荷物を降ろし、これから新しい生活が始まる、二人といつか飼う愛犬と穏やかに楽しく。ただそこに居るだけで満たされるという、そんな気持ちになりました。

    取り返しがつかないことがいくらあっても、生きていくしかないということだけを、人は言うことができる。

  • 庭に座る
    生と死
    夢をみる
    深く眠る
    宗教
    旅行

    若い二人なんだけど
    どこやら年寄りじみてて
    微笑ましい
    死と生って重たいものが
    鮮やかに透明感を持って描かれる
    イラストも素敵

    読んだことあったかどうかあやふやになって
    本棚探したけど見当たらず
    Amazonで手にいれました
    うん、やっぱり読んだことなかった

  • 「苦しみはやってきたのと同じ道のりで淡々と去っていく。 」


    ユニークな家族構成を持つ二人の男女のリリカルでふんわりとした空気の中での痛い、心が痛くなるような切ない物語。

  • 時間がすぎるということはなんてつらいこと
    少しずつゆっくりとまざりあっていく
    忘れたくないこともなにもかも すべて



  • 裕志が繊細でナイーブで痛々しかった。少し前に身近な人が死んで裕志と同じ情緒になった時、もう少ししたらまた大切な人が死んでしまうんじゃないか、怖くて恐ろしくてビクビクしながら生きていた時を思い出して辛かった。
    そんな中で、吉本ばななの表現のところどころでグッと来すぎて心がいっぱいだった、、。
    うーむ、うまく感想書けない

  • 読んでいると鼻がツンとしちゃうんだけど、でもやっぱり読み進めたくなる心地の良い物語が紡がれていてすごく好きな本でした。
    図書室で本当に何となく手に取った本だけれど、出会えて良かったです。読んだ後、思っていたよりも古い本でびっくりしました。

  • 吉本ばななさんの思いや伝えたいことが表れている一冊なのだろうか。
    イルカの壮大な景色を人間に写しているところがすごいと思った。なんだか心にぐっとくる表現があって、ああやっぱり吉本ばななが好きなんだなと思った。
    彼女にしかない言い回しだったり喩えが本当に好きだ。
    世界を高いところから自分が神様になったかのような視点で見る経験をこの本の終盤にわたし自身、した。
    壮大なスケールで物事を、この世界を見れた気がする。

    こういう気持ちを、こういう本を読んだ時にすごいとしか表現できないのが悔しい。
    自分の、自分だけの言葉で表現できるようになろう、


    涙が流れました。
    終盤のオリーブのところで、。

    「たった一匹の小さな犬なのに、今になってこの人生にオリーブが、人生の中でとても大きい存在に驚く。」

    「そんなに長くは生きない小さな犬に生きる力をもらったものもいる」




    「あんまりにも心がひまだったので」という表現がすき。

    心がひまー心が忙しい
    新しい言葉。


    心がいっぱいで、胸がいっぱいです。

  • よしもとばななさん、この人の美しいものに対する感覚はとても共感できて、泣きたくなる。
    この本読んで、やっぱりそうやと思えた。

    離婚とか不倫とかの話が小説にはよく出てくるけど、私にはそういうことはやっぱりわかんない。
    子どもやからかな。
    でもわかりたくもない気がする。

  • おそらく初めて、吉本ばななさんの本を読んだ。その名前からなぜかポップな印象で(さくらももこ的な)敬遠してきたが、それが本当に勝手な思い込みだったことに気づけて良かった。
    まず、描写がとても丁寧で優しくてあたたかい。文中の言葉を借りれば、はっとする表現や視点がたくさんあった。登場するまなかも浩志も、素直で純粋で、こんな風に物事を考えたり言葉にしたりできたらと思った。二人はずっと共に育ってきたのに、何度も相手の必要性を感じたり、愛情を受けたり、そういったことに一度きりはないのだと感じた。それはすごく幸せなことで、置き換えられることがたくさんある気がして、つまりは自分はいま幸せなのだと思った。こんなにも心をむぎゅっとされた本は初めてかも。すごく良かった。

  • 大好きな作家 吉本ばななさんの「ハネムーン」
    お昼には読み終わったのにズルズルと、気付けば今も内容を引き摺っていて身体半分蝕まれたみたいで笑いずらい、バットエンドではないのにもやもやして、苦しい。この本は柴田聡子さんの曲に似てる

  • 庭、光、暗闇、ひんやりとした床、窓辺、ワンちゃん、月夜、暗い海、波

    今いる世界とは少し違うのに今までの自分の見てきたものにあったきらめきを感じたりして悲しいこともあるのに美しいいいな憧れるいつかこんな世界に行きたいなこんな世界を毎日で見つけたいな

  • 「取り返しがつかないことがいくらあっても、生きていくしかないということだけを、人は言うことができる」「誰かがいなくなるとあんなに困る人生なんて、怖いと思った」…愛の物語と思って読んだのですが、年末に考えさせられました。

  • 親によってもたらされた孤独。
    だけど二人の孤独は少し違う。
    遠くにいる母親とも繋がっていて、過去のことも知って救いになったまなかと、知っていて知れば知るほどより諦めを深めるしかない裕志。
    だけどその孤独には本当は大きな差はないのかもしれない。
    ずっとずっと近くにいて、近くにいるのが当たり前で不在を恐れるのはそれはもう家族だと思う。
    オリーブを失って、おじいさんを失って、家族をつくることを怯えていて1度目のハネムーンでは、父親を避けるために手段として結婚したのが、二度目のハネムーンでは子供を作ることや犬を飼うことを願うくらいになったことは大きな変化だと思う。
    大きな孤独の中で静かに癒やされていく。

  • いつものじんわりとかあったかい光よりは
    ずっと深くて暗くて底の方をさまよう心地がした。
    でもきっと、そんなところから
    仰ぎ見る空や光や生きている証が
    この世界をとてつもなく美しくしている、
    そういう感じがした。

    最後まで読んだら
    急にタイトルがしっくりきた。

  • しっとり暗くて温かくてやっぱりよしもとばなな、って感じのお話だった。


    何かが治っていくのを見るのは楽しい、という表現があった。
    よしもとばななのお話には色々なものから「治っていく」ひとたちがたくさん描かれていて、それを見るのは確かにとても楽しい。

    治っていく、決して元通りになるわけではない、正常に、普通になるわけでもない。
    だけど色々なことを大丈夫だ、と思えるようになる。治っていく。



    家出をして浜辺をぶらぶらしている時のタクシーの運転手さんがよかった。

    浜辺でぶらぶらしているということは、想像の上ではやさしいが、実際はむつかしい。(p72)

    ホテルから電話をかけたときのお母さんもよかった。

    母はさすがだ、と私はその時思った。私がうっすらと感じていることを、母は容易に言葉にした。(p66)






    今、おじいさんがいなくなって、心配する日々のほうに慣れ親しんでいるから、別の生き方がこわいだけよ。(p97)

  •   よしもとさんの描写には常に優しさを感じることができて、私はそれがものすごく好きです。特に独特の美しい色の表現は、リアルな描写の中に絵本のような温かみを感じさせてくれます。

      どんなに二人が一緒にいても、家にいた時は二人の間に常に感じられた薄く見えない壁が旅先ではなくなり、はじめて夫婦らしさを感じることができた気がします。裕志の胸に抱えていた孤独がどんどんほどけていくたびに、二人の未来に新しい色が加わっていくようで嬉しくなりました。

  • 心と入れ物(体)の関係を考えた作品

    家族になること、人と人の繋がりがテーマ

  • 2024.3.6

    “虹を作りながら、泥の水たまりに映る美しい空、流れて行く雲を見ながら私は思った。こういう小さな、笑ってしまうようなことが、人生を作る細胞だと。ていねいに感じることができるコンディションでいることはむつかしい。そのためには私は、空や草花の息吹や、土の匂いがとても大 必要だ。”

  • 感性がするどくて 美しい。

  • なんだか本当、吉本ばななさんの本って私にとって特別だなあ。
    目に見えるものも、見えないものも、丁寧に見つめる気持ち。
    人の心の温かさ、しんどさ、冷たさ、けどまた温かさ。
    ふわふわした気持ちで、時折はっとさせられながら、言葉が、自然に、入ってくる。

  • 淡々と、静かに時間が流れていく中で、海の音や雑踏のざわめきが聞こえてくる。宗教に頼らない癒し、地に足をつけて生きること、よしもとばななさんの他の本にも共通するメッセージを受け取った。

  • 20230907

  • 私には未知の領域、、

  • そのことを思い出して、その時に感じていたよりもずっと楽しかったりすることで、その人の大切さがわかる時がある。

  • よしもとばななの小説の登場人物、翻訳業を生業にしがち。そして物語に死と愛がある。
    静かに愛し合い、いのちについて考えるまなかと裕志、まだ高校生?とは思えない2人の空気感が尊い。

  • よしもとばななの世界観すき。ちょっと不思議だけれど、こーゆー関係なんか良き。

  • この本を朝に読んだからだろう。お昼から台所とお風呂を丹念に掃除してぴかぴかにした。昼過ぎにすこし悲しいことがあって、一時間ほど悲しみに暮れたけれど、それからお風呂に湯をためた。湯船にはいるとからだが内側からぽかぽかになる。お風呂をでて扇風機の風に当たる。なんて涼しいのだろう!暑いと熱いとぽかぽかはやっぱりみんなちがう。そんなことをかんがえる。朝から点けていた高校野球の中継はもう四試合目。きょうの試合はどの試合も一点差か二点差の接戦だと解説者が話している。吉本ばななの小説を読むといつもちゃんと大切なところにもどってこれる。ほんとうにいい作家。

  • 不思議な世界観に引き込まれます。
    こういう恋人との関係性に憧れる。

  • ハネムーンという明るくて幸せなイメージとは違って、寂しさや、幸せだからこそ感じてしまう不安な気持ちだとかがゆったりと流れているイメージ。

    あまり晴れやかな気分にはなれないかな。

  • 何処かへ行こうその為の花束を

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著者プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第四話 ミモザ』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

「2023年 『はーばーらいと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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