東欧・旅の雑学ノート: 腹立ちてやがて哀しき社会主義 (中公文庫 た 33-18)
- 中央公論新社 (2000年8月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122037014
感想・レビュー・書評
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いまやなくなった国々の旅行記。
中学生の頃、宮脇俊三さんの「シベリア鉄道9400キロ」とか大蔵雄之助さんの「ソヴィエト見聞録」シリーズを読んで、テレビやラジオで見聞きできない国へ旅行したくなった気持ちを思い出しました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
こういう本を読むと、沢木耕太郎の『深夜特急』は単なる紀行文ではなく、もはや小説だという思いを抱く。もちろん、『深夜特急』が旅を終えてから何年かを経て、推敲の末に再構成されていたのに対して、こちらは純然たる旅のノートなのだから、そもそもそのスタンスの違いは歴然としてあるのは承知の上で。本書で、もう1点残念なことは、著者の個性が十分に発揮されていないこと。例えば、先に読んだ『パリのカフェをつくった人々』などは、玉村ならではのものであったが。1979年当時の東欧の旅の困難さに、彼も余裕が持てなかったのだろうか。
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『パリ・旅の雑学ノート』の玉村さんが1979年、当時共産圏だった東欧諸国をバックパック旅行したときの記録です。表紙のリュックがおしゃれで欲しい(笑)!イタリアから対岸のユーゴスラヴィアに渡り、ずーっと北上して…最後は東ベルリン、というコースが時系列でつづられます。東側って、気ままな1人旅は結構面倒なんじゃないのー?と思いながら読むと…案の定、ほうぼうでトラブルに遭遇(笑)。大混雑で乗り込む列車、国営旅行社の横暴な係員、「入国ビザ不要」のはずがビザを求める入管、買い物行列はお約束。いつもはしゃらっとさりげなくものを書きとめる、玉村さんの筆致にいらだちがにじみ出てきます。これはお若いころの椎名誠さんの「〜はどうなっておるのか!」という怒りに通じる(笑)。食べものや飲み物、お酒類に対する観察は『パリ―』同様、こまごまとして面白く、バルカン半島は「ソーセージ挽肉文化圏」、ハンガリーなど、ゲルマン系に近いところは「てんぷら(衣をつけたカツレツ)文化圏」という命名は的確で笑ってしまいます。おいしくないものを食べてしまったときの落胆っぷりと、その微妙なマズさ(あるいは激マズさ)の描写が本当に哀しそうで…それにしても、「ワインのコーラ割り」って、どんな味?観光地度も低い(笑)、「飲み食べ泊まり移動」記として楽しめました。『パリ―』のような濃ゆさがなくて、ちょっと散漫にも思えるので、☆ひとつ下げようか…と思いましたが、旅行記としては王道ですし、今はもうないシステムの国々の記録としても貴重だと思いますので、☆1つアップしてこの数で。
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もうずいぶん前に書かれた本だけれど
その当時、あまりサービスがよくなかった東欧で
ぷんぷん怒りながら旅をする姿が可笑しい。
何度読み返しても、飽きない一冊。
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なじみの薄い東欧諸国の日常の姿も興味深いが、中に一枚差し込まれた、作者の手書きの旅記録ノートにも感動。手書きノートの方で読んでみたかったなあ。