マンガ日本の古典 (28) (中公文庫 S 14-28)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122038615

感想・レビュー・書評

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  • 「ミス・サンシャイン」を手始めに、DVD「雨月物語」を思い出し、古典で描かれた怪奇物語が芋ずる式に蘇がえった。公民館講座で『日本霊異記(にほんりょういき)』中の鬼の説話を何篇か学んだ記憶もある。
    さて雨月物語ー手っ取り早く日本の古典シリーズ版コミックを探していると、とても懐かしい名前に出会った。少女時代によく読んだ”マーガレット”に連載されていた木原敏江さん! 本作は木原敏江さん著者となっている。
    雨月物語は9編の掌編でなっているらしいが、本作には「菊花の約(きっかのちぎり)」「浅茅が宿(あさじがやど) 「吉備津の窯」」「蛇性の婬(じゃせいのいん)が収録されていた。
    「菊花の約(きっかのちぎり)」は小学校時代に読み友情物語と思っていた。が、今回衆道(現代でいえばボーイズラブ)の説もあると知り、納得するところもある。いくら義兄弟の盃をかわした仲だとはいい、収監されていて会いに行けないのを理由に、約束の9月9日を守るために、魂となり長い道のりを駆け抜けて会おうと自決までするものだろうか。loveだったら充分わかるというもの。木原さんは作中ではかけらも匂わせてもないが、後書きで上田秋成の研究者の間でも同性愛ではと言われていると書いていた。他ので当たってみた。「菊花の約(きっかのちぎり)」は上田秋成が中国白話小説の『茫巨卿鶏黍死生交』を忠実に翻案したもの。とはいっても、主人公の左門と宗右衛門の人物造形は秋成独自のもので、原文の冒頭は原話にならい、”軽薄なる人”との交わりを戒める文言が置かれていて、末尾にも「ああ、軽薄の人と交わりは結ぶべからずとなん」という一文で締めくくられているそうだ。この”軽薄の人”の意味するところや教訓の向かう先は必ずしも明解ではないと結ばれてあり、興味津々だ。
    「浅茅が宿(あさじがやど) は「蛇性の婬」と共に、映画『雨月物語』の原本となっている。
    「蛇性の婬(じゃせいのいん)」は、なよっとした独身イケメン君が白蛇の化身である女に見初められ結婚をする。男は真名子が蛇だと知り、高僧に祈祷を頼み一命をとりとめる。夢見がちな青年の成長も描かれている。

    昔、何となく知った気になっていた御伽草子などはオブラートに包まれた子供向けであって、本当は酸いも甘いも噛分けた大人向けに書かれたものだろうと思えてくる。それなりに人生経験を経て読むともっと深く味わえるのだろう。

    雨月物語とは一線を画したような『貧福論』。現代にも通用する話で面白い。別な機会に感想を書こうと思う。

    • ポプラ並木さん
      しずくさん、
      流浪の月の感想、見つけられませんでした。
      代わりに雨月物語・上田秋成を発見、来月の感想会の課題図書(どの本でもOK)でした...
      しずくさん、
      流浪の月の感想、見つけられませんでした。
      代わりに雨月物語・上田秋成を発見、来月の感想会の課題図書(どの本でもOK)でした。漫画が一番わかりやすそうだね。
      古典は全く意味が分かりませんでした(^^♪
      2023/02/24
    • しずくさん
      雨月物語を現在の年齢で読むと違った味わいがありました。今やコミックは日本を代表する文化、幼少期や少女時代に両親や教育者が悪徳として喧伝してい...
      雨月物語を現在の年齢で読むと違った味わいがありました。今やコミックは日本を代表する文化、幼少期や少女時代に両親や教育者が悪徳として喧伝していた時代は何だったのだろうと思うこの頃です(笑)

      流浪の月はこちらです→https://booklog.jp/users/lemontea393/archives/1/4488028020 良かったらどうぞ。
      2023/02/24
  • 江戸時代のホラー「雨月物語」を、大好きな木原敏江先生がコミカライズ! 選ばれた4編は、引き裂かれた愛と情念が生んだ怪奇に戦慄がほとばしる名作ですね。

  • 脚色は最小限にして、原作に忠実に描いたそうですが、絵がいつものドジさまよりかきこみが少ない感じです。まんが日本の古典というこのシリーズ全体が「単純な絵で行こう」とういう方針なのかも。それでも十分華やかなのはさすが木原敏江です。
    ストーリーが上田秋成原作の古典に縛られているので、まるで古典落語の怪談を聞いているみたいな感じで読みました。内容結末がわかっていても聞かせてしまう手練の噺家、の漫画家バージョン。それがこの木原敏江著「雨月物語」です。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「まるで古典落語の怪談を聞いているみたい」
      恐いのは苦手なのですが、「雨月物語」は何故か好き。先日小野塚カホリの作品を読んで、やっぱり雨月物...
      「まるで古典落語の怪談を聞いているみたい」
      恐いのは苦手なのですが、「雨月物語」は何故か好き。先日小野塚カホリの作品を読んで、やっぱり雨月物語」素晴しいと思ったところです。
      此方も読んでみようかな。。。
      2013/08/26
  • 上田秋成の怪異小説を漫画にしたもの。
    単に不思議な現象が起こって怖いというだけでなく、一つ一つの話にドラマがあるのが素敵。

    人間と魔性とは結ばれないものなのか。
    二次創作が捗りそうな作品群。
    ぜひ原作も読みたい。

  • おおむね人情に厚い話。
    『菊花の約(きっかのちぎり)』…田舎に住む左門は病気に倒れた旅の赤穴(あかな)を助けて親しくなり、二人は義兄弟の盟(ちかい)を結ぶ。赤穴は再び来る日を告げて左門の家を出るが、捕らえられてしまったために約束を果たせなくなりそうになったところで、自刃して魂だけで左門に会いに行く。
    『浅茅が宿(あさぢがやど)』→夫が京に物を売りに行っている間に戦乱が起き、妻は家に留まり続けて夫の帰りを待つが病死してしまう。夫婦愛。
    『吉備津の釜(きびつのかま)』→妻を裏切って女性を駆け落ちした男が、相手の女性とともに祟られて死ぬ。男がひどいので、まあそうだろうなと納得できるオチ。
    『蛇性の淫(じゃせいのいん)』→蛇に騙されて蛇と相思相愛になった男が、蛇を封印してもらう。相手は蛇ながら、男を深く愛しているので哀れを誘う。

  • <閲覧スタッフより>

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    所在記号:文庫/918/マニ
    資料番号:10171221
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  • 木原敏江だから、うまいんだけれど、ちょっと物足りない感じ。

  • 図書館内をふらふらしていたら見つけた中央公論のマンガ日本の古典シリーズ。石ノ森章太郎や水木しげるなど、漫画家がわりと豪華だったので、読んでみたかった上田秋成の『雨月物語』を借りてみた。マンガ家は木原敏江さん。(小さいときから好きな絵柄ではなかったが、やっぱりたまに描く変な表情が苦手だった。)原作のうち、4編が抜粋されています。
    耽美なオカルトというイメージしか知らなかったから、こんなお話なんだなぁと役に立ちました。

    あとがきによると、「菊花の約(きっかのちぎり)」は究極の同性愛だそう(学者も断言しているそう)。なるほど!
    「浅茅が宿」は究極の夫婦愛。これは聞いたことのある話です。
    「吉備津の釜」は、最低のダメ男の話。妻の呪いで死んでざまーみろ!と思いました。笑
    「蛇性の婬(じゃせいのいん)」はへび(魔性)との結婚の話で、THE 日本昔話って感じで好きですね。おもしろかったです! 
    木原さんもあとがきで、「美しい日本語大好き人種であればうれしくなるような流麗な文で、りりしい漢文調もまじって展開される情景は、とても絵画的できれいです(意味がよくわからなくても、字面を眺めているだけでも、なんとなく雰囲気がわかります)」と書いていて、いつか原典も読んでみたいな〜と思いました。
    でもまずは現代語訳からかなぁ〜。。苦笑

  • 抜粋。

  • 『雨月物語』自体を読んだことないのに、木原さんで何度も接してるからすっかり馴染みな気分。
    「菊花の約」そのものよりも、コレをアレンジした木原作品「花伝ツァ」が私的に神。。。

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著者プロフィール

木原敏江

1948年(昭和23年)、東京生まれ。1969年「別冊マーガレット」に掲載された『こっち向いてママ!』でデビュー。77年、旧制高等学校に通うふたりの少年を描いた『摩利と新吾』を発表する。この作品は、その後7年間にわたって描き継がれ、明治末から大正、昭和と、三つの時代を舞台に展開する一大大河ロマンに結実した。84年『桜の森の桜の闇』『とりかえばや異聞』の発表で始まった連作「夢の碑」シリーズも、97年まで執筆が続いた大作。85年、同シリーズにより第30回小学館漫画賞を受賞。『アンジェリク』『大江山花伝』『紫子―ゆかりこ―』は宝塚歌劇団で舞台化された。そのほかの作品に『どうしたのデイジー?』『エメラルドの海賊』『銀河荘なの!』『天まであがれ!』『杖と翼』などがある。

「2021年 『ワイド版 マンガ日本の古典28 雨月物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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