仏教人生読本 (中公文庫 B 2-3 BIBLIO)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122038684

感想・レビュー・書評

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  • おもしろい。仏教への興味がますます最近増しているのを感ずる。

    ●以下引用

    およそ、上手な医者ほど、自分の力では病気を治さん

    たしなみというのは、効果如何を考えず、責任として尽くす所に価値があります。誰への責任でもありません。

    人に知られず、効果に現れずとも、たしなみの深い人には、奥床しさがほのぼのと立ち上がるもの

    憂き辛い世の中も、無心で向かえば何ともないという妙諦

    月を映すのに、映そう映そうと焦って揺り動かしたら、月影は乱るるばかりである。何の気なにに置くと、いつの間にやら月は写っている

    どうも私は怒りっぽくていけないからとて、その感情の根を押しつぶし根を刈る。生きているのか死んでいるのかわからなくなる

    凡聖不二

    信念は人を鉄にす

    凡人の心は、苦難に際し、誘惑迷妄に際し、誠にぐらつきやすいものです。

    少なくとも一大事業を成し遂げようとするならば、まず何かしっかりとした信念を掴んでかからないと結局失敗します。明治維新の際から日清、日露の戦役当時にかけて、盛んに活躍した豪勇の将士たち、沈勇の大政治家たちの殆ど大部分は、あるいは禅により胆を練り、あるいは浄土宗、浄土真宗により心身を仏に委託し、あるいは日蓮宗により宇宙の生命力を唱題によって心身に亨け容れた人たちでありました。

    仏教でよく修行を積んだ人の所業を評して、「謳うも舞うも法の声」と言います。修行に修行を積み、生命の流れが過不及なしに流れている人、すなわち正念を保ち得ている人は、何事をしても決して過不及なしに、物事の本当のところにはずれることなく、ちゃんと当て嵌って行く。何をしても大丈夫だ。結果はすべて当処(本当のところ)に触れて行く。軽からず重からざる心の使い方。速過ぎず遅すぎぬ生命の流れを流して行き得る妙鏡。こここそ、仏教の修行の目指すところであります。

    「どうも考えがこんがらがってしょうがない」とか、「気持ちが流れないで鬱屈する」とか言います。これを他の言葉に言い換えれば「生命が停滞して流露しない」ということになります。すなわち、心の流れによって人間の心理が一歩一歩おし進められて行き、呼吸と血液の脈動とによって肉体が新陳代謝を行い、両々相俟って自己の生存を遂げて行くところのこの大切な生命の流れは、その原動力なる心の流れと呼吸血流の遅速によって非常に影響を受けるのです。

    あまり無頓着にやった仕事も本当でない。あまり凝り過ぎた仕事も本当の仕事でない

  • PT#38 2006.9

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著者プロフィール

おかもと・かのこ
1889年に生まれ、
1953年に没した、日本の小説家。
代表作に
『母子叙情』
『老妓抄』
『生々流転』など多数。



「2019年 『美少年 岡本かの子 アムール幻想傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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