神様 (中公文庫)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 3147
レビュー : 448
  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122039056

作品紹介・あらすじ

くまにさそわれて散歩に出る。川原に行くのである-四季おりおりに現れる、不思議な"生き物"たちとのふれあいと別れ。心がぽかぽかとあたたまり、なぜだか少し泣けてくる、うららでせつない九つの物語。デビュー作「神様」収録。ドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 大島弓子の漫画みたいだなぁ、と最初思った。
    夢と現実の世界の境目が曖昧になっているみたいな独特の感じ。
    何しろ“熊に誘われて散歩に出る”ところから、この短編集は始まるのだから。
    「ウテナさん」は河童に悩みを相談されるし、「わたし」は熊とハグをし、壺の中から出てくるコスミスミコと暮らす。
    と言っても純然たるファンタジーものではない。ファンタジーと言うには、日常の空気感が満ち満ちているお話たちなのです。

    頭の中で、わたし=片桐はいり、ウテナさん=小泉今日子のキャスティングで映像化して楽しんでみました。映画にしたら案外女の人には人気出そう。

    最初、どういう世界観なのかわからず、ぽかんとしたまま読み進めたのですが、案外好きな作品でした。


  • 短編9章。
    夏休み、花野、星の光は昔の光、春立つ、離さない、草上の昼食

    川上版大人のためのトトロ。
    どれも素敵だけど上記の6編がとてもよかった。特に「花野」が。
    最近涙腺がもろくなってしまい「花野」とか「草上の昼食」みたいなお話を読むと、たちまち目のお天気があやしくなってしまう。思い出の中の心の古傷が痛むというか、なんというか…。香りと夢と思い出って似ている成分で構成されているからなのかもしれない。それが佐野さんが言う無意識とも似ていて、私も春の野で会いたい人とランチしたいなぁ…とか思ってしまった。

    本の内容と季節が合ったのかもしれない。沈丁花が香って桜が咲いてお待ちかねの春爛漫。本当に夢のようで催眠術みたいでほろ酔いみたいになりました。

    佐野洋子さんの解説も楽しくて“寝ればこの世の地獄になるはずが、”あたりは、可笑しくってつい笑ってしまった。佐野さんの本も読みたくなった。

    2018年積読本消化18冊目

  • くまにさそわれて散歩にでる。くまにですか・・そのうち私はこの独特の世界に引き込まれてゆく。夢の話というひともいるが、わたしにはどちらかというと、空想の遊び。口には出さないけど、こんなことがあったら、例えば動物が話したら、話せたら、とか。壺からコスミスミコさんが出てくるんです。笑ってしまいました。たのしいだろうな、家に帰ってコスミさんが居たら(笑)。
    「花野」はなくなったおじさんが出てくる話。これはきっと夢だろう。「私」はおじさんと久しぶりの会話をしている。最近どう?というふうに。
    やがて、叔父のまわりの空気がゆらゆらしたかと思うと、かき消すように叔父はいなくなった。叔父の立っていたあたりを見おろすと、小さな草の花が群れ咲いていた。この感じがすき。なんて素敵な・・ゆらゆらして楽しいのに最後には、切ないーと気持ちをもってゆかれる。
    「離さない」が心を付いた。手放さなきゃならないものってあるじゃないですか。
    一気に一気に放り投げたんです。「私」とエノモトさんで。人魚が言うんですよ。離さない、と。怖い。でもファンたジーのようであいまいでよい。
    最後、くまは故郷へ帰ってゆくのです。くまから手紙が届きます。「私」は三回読んで泣きそうになったらしい。わたしも泣きそうになった。良いお話をありがとうと。

  • くまに誘われて散歩に出たり、バイト先で不思議な生き物に出逢ったり、五年前に亡くなった叔父が逢いに来たり、友人のウテナさんと一緒に河童の恋愛相談にのったり、ウテナさんがくれた壺の中から出てきた可愛らしい少女・コスミスミコに振り回されたり、ご近所さんから人魚を預かったり、と摩訶不思議な体験を次々にする「わたし」の連作短編。
    この「うそばなし」ワールド全開のデビュー作を書くことにより、川上さんは物語を書くことの楽しさを痛感したそうだ。
    くまや河童達と普通にやり取りする「わたし」はひょっとしたら川上さんご自身なのかもしれない。
    川上さんの夢の世界はふわふわ優しくて温かくて可愛らしい。
    私もこのくまになら誘われてピクニックに行きたい。
    くまお手製のアップルパイが食べたい。

  • ドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞受賞短編集。

    高校の国語の教科書に載っていた「離さない」に衝撃を受けて以来、折に触れ何度もあの人魚を思い出していた。どうしてもまた読みたくなって探して、行き着いた本。

    「離さない」は勿論良かった。魅せられる静かな狂気。ぞっとするんだけど、最初に読んだ日以来私の心を「離さない」物語。
    人魚が人魚姫みたいな美少女じゃないのに魅せられるっているのがいい。狂気の描写が心情描写を延々書き連ねる、という風じゃないのがいい。あっさり描かれていて、だからぞっとする。
    人魚のお話は数多くあれど、私の中でのナンバーワン人魚。

    で、今回他の収録作も初めて読んだ。知らなかった、「神様」が川上弘美のデビュー作だったんですね。
    このお話含め、どれもこれものんびりぽかぽかしてでもどこか切なさを感じる。寂しさとかも。この小説を読み終わった今も、とても寂しい。
    いいな、私もそんなくまに会いたいなあ。熊、じゃないのがいいね。

    それから「花野」はもうドストレートに泣ける。人に勧めるならまずこのお話からにすると思う。でも変に泣かせようと肩肘張ってない、あっさりとした文章なんだよね。
    そら豆嫌いなのに、食べたくなった。

    あとがきも面白かった。オチが(笑)。

  • デビュー作「神様」から始まる連作短編集。
    くまと散歩に行く話、河童に恋愛相談される話、小さな人魚に魅入られる話・・・など川上弘美さんならではの幻想的な話にほんの少し怖さをまぶしたような短編たち。

    川上弘美さんの本の感想書くのってすごく難しいんだけど、(作品と作品の差をうまく表現できない)今まで読んだ川上さんの作品の中で2番目に好きかも。

    1番は「真鶴」。

  •  「クリスマス」と「星の光は昔の光」を読むまで、(最初の作品から)続いている短編なのだということに気がつかなかった。
    正直にいって、この小説はよく分からない。最初に出てくるくまは、何かのメタファーなのかと思ってのだけれども、その後に出てくる登場人物達はそういう印象を受けることもなかった。かといって、幻想的な小説、と一言で片付けるのもどうかという気がする。

    最初の短編「神様」でも、最後の「草上の昼食」でも、くまが人間とは異質な存在であることが示されている。「神様」では、道をすれ違った子供から唐突のパンチを繰り出されたり、その親がくまに対して決して視線を向けようとしなかったりと、くまが人間とは異なる扱いを受けている。「草上の昼食」では、くまが野生の動物としての遠吠えをあげる描写が見られる。
     どちらの作品でも、くまが人間とは異質の存在であることを示している点では同じようだが、「私」との関係性については相違点があるように思う。「神様」では、「私」の語りは情景描写に終始しており、自身の心情をそれほど多くは語っていない。それに対して「草上の昼食」では、くまの帰郷する報告を受けて思わず悲しい表情を浮かべたり、くまの吠える様子を見てはっきりと「こわい」(p.187)と感情を示している。
    あまり厳密に考えた解釈ではないが、周りや世界に対して「馴染まない」(p.184)「私」は、梨を好む白い三匹の何かや、河童、コスミスミコ、えび男くんといった存在との交流を通して、自分の「ずれ」(p.32)というものから回復していったのではないだろうか。まぁ、人魚の話などはこの解釈には当てはめにくいような気もするが、概して、作品を重ねるに連れて「私」の感情が少しずつ増えていったような印象を受ける。「ずれ」から回復したのではなくとも、自分と同じように周りに馴染まない存在との交流がなんらかの作用をもたらしたのではないだろうか。




     少し、とりとめのない感想を。「夏休み」に出てくる白いやつの中で三匹目が、「「動くとぼくが減っちゃうのがだめ」(中略)「ぼくが入ってもぼくが抜けてもその場所が変わっちゃうのがだめ」(p.24)というようなことを述べている。自分がどんな動きをしても、何かが、その場所かその場所を占める何かが変わってしまうのが嫌だ、という感覚は小学生の頃に少し感じていたような気がする。昔のことだし、記憶違いかもしれないのだけれど、懐かしさを感じた。その感覚とは、自分が存在していることの不安だったのだろうか。
     あと、「草上の昼食」でくまが広げた傘が、「折りたたみ式のビーチパラソルだった」(p.185)ことに笑ってしまった。

  • 川上さんの書くストーリーもいい加減浮世離れした感じが多いかと思うのですが、不思議に一文で泣かされてしまいます。とりとめのないような話の中のちょっとした文章が胸をかきむしる。凶器です。
    もちろん神様にも泣かされました。
    これが小説家というものですね。

  • となりに熊が越してきた。
    河童と出会う。
    死んだ叔父と会う。
    人魚にまつわる話。

    一連の短編がどうやら同じ主人公だったらしいと気づいたのは、星の光は昔の光までよんでから。

    最後、熊が帰っていくのが切ない。

    淡々とした日常の一枚の中、よくよく考えてみると(よくよく考えなくとも本来は気づくはずなのだが)、なんだか紙一枚くらいのずれがある(本当は次元そのものがファンタジーとしてぶっ飛んでいるのだが)。
    手のひらに収まる愛しい日常をたんたんと綴ることで、哀切さが伝わってきた。

    不思議な一冊。
    でも、なんだか大事にしたくなるような一冊。

  • 再読ですが、この世界がとても好きです。不思議であたたかくて、ちょっと寂しくて。「夏休み」「春立つ」は今回も好きでした。再読では、くまとのひとときを描いた「神様」「草上の昼食」も好きでした。くまとの暮らしがずっと続いたらいいなぁとふわふわ思いました。くまとピクニックへ行って、穏やかな時間を過ごしたいです。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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